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『ニーチェの馬』 

タル・ベーラ監督『ニーチェの馬』の感想書くなんて無理だって思うけど、でもやっぱり、気持ちが熱いうちに書いておきたいので。

荒れ狂う風の中を荷馬車を引く馬、鞭打つ老人。それだけなのに、不穏でとても惹き付けられる冒頭から凄い予感の154分。

1889年トリノ。ニーチェは鞭打たれ疲弊した馬車馬を見つけると、駆け寄り卒倒した。そのまま精神は崩壊し、二度と正気に戻ることはなかった。
どこかの田舎の古い家。
疲れ果てた馬と、飼い主の農夫と、その娘。暴風が吹き荒れる6日間の物語。

荒野に建つ一軒家。石の壁と木の扉。薄暗い室内のその質素な様が美しくて、ため息。
毎朝、バケツ2つ提げて娘は、家の外にある井戸へ水を汲みにいく。右半身が不自由な父親の着替えを手伝う。
茹でたじゃがいも(巨大)1個だけの食事風景も繰り返されるんだが、じゃがいも食べるだけなのに、なんでこんなに凄いのか。

老父と娘、そして馬。繰り返される日常が徐々に壊れていく。世界が壊れていく。

1日目。荷馬車に乗って、父親は帰ってくる。
2日目。馬は荷馬車を引かない。パーリンカ(蒸留酒)を分けてもらいに男が訪ねてくる。男は、世界の終わりについて語る。
3日目。馬車に乗った一団がやってきて、井戸の水を飲んで去る。
4日目。井戸が涸れる。父娘と馬は家を出て行くが、途中で引き返して、家に戻る。
5日目。火が消える。
6日目。それでも、父と娘はジャガイモを食べる。

はっきりと何も語られないのに、終末世界を体験した。

映像の強さが凄過ぎて、それだけでずっと観続けられるって思う。この階調表現の美しさがデジタルで可能になったら、フィルムが無くなっても良いです。できないんだったら、まだまだフィルム上映は残しておいて欲しい。

ずっとエンドレスで流れ続ける音楽も、外に吹き荒れる風と合わさって凄かった。

監督:タル・ベーラ
脚本:タル・ベーラ、クラスナホルカイ・ラースロー
撮影:フレッド・ケレメン
音楽:ヴィーグ・ミハーイ

エリカ・ボーク、ヤーノシュ・デルジ

A Torinoi lo 2011

2012.3.24 シアター・イメージフォーラム 公式サイト

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