« 2008年 | トップページ | 『二月大歌舞伎』夜の部 »

『レンブラントの夜警』

ピーター・グリーナウェイ監督8年ぶりの新作『レンブラントの夜警』。
何回も書いてしまうけど、わたしにとってグリーナウェイ監督は特別な存在。旧ユーロスペース(現在のシアターN渋谷。狭い方のスクリーンしかなかった頃)で『ZOO』を観てもの凄い衝撃を受けたことが、映画にハマり込むきっかけになったのだ。
シンメトリィにこだわった画面作り。生き物が腐っていく早回し映像のブラックなユーモア。グロテスクで美しい、それぞれの場面がうるさいほど主張してくる映画。作家主義ってこういうものだと納得した。
そして、もうひとつの主役というべき、マイケル・ナイマンの音楽にもハマり、撮影監督サッシャ・ヴィエルニという名前も覚えた。

それ以来ずっと追いかけている。前々作『ピーター・グリーナウェイの枕草子』と前作『8 1/2の女たち』には正直がっかりしたものだけど、やはり追いかけずにはいられない。
今回は17世紀のオランダが舞台のコスプレものということで、(少しだけ)期待していた。で、映画の感想は、、

1642年。肖像画家として成功を収めた36歳のレンブラントは、アムステルダムの市警団から集団肖像画を描くことを依頼され、「夜警」を完成させた。しかし、その後から彼の人生は転落していく。

レンブラントのマネジメントを担当している妻サスキアは長男を出産し、その後の体調不良により亡くなってしまう。
その死とほぼ同時に完成した「夜警」は、スキャンダラスな秘密を告発するものだったため市警団の怒りを買った。
レンブラントとサスキアとの関係と、絵を描くためにモデルたちを取材する過程が絡みあいつつ話は進む。何しろモデルたちがたくさんいるので、誰が誰やら分かりにくい。そして、秘密を告発するっていっても、探偵ものみたいに構築していく謎解きの面白さは無いので、スッキリ感なし。なんというか消化不良。
孤児院売春とか、殺人疑惑とか、同性愛とか、秘密は刺激的なんだけどな。絵画を読み解くのは面白いけれど、監督の解釈を展開しただけのようにも思えてしまうので、講義を聞いているような気にもなる。

確かにどこを切ってもグリーナウェイ監督印の映画ではある。スポットライトのようにギンギンのライティング。もの凄く拘った構図。あんまりエロくない裸とそのからみ合い。でも、だから?ってかんじ。グロさは控えめだったか。
冒頭の悪夢。寝室に馬やら人やらが入り乱れるシーケンスにはドキドキしたんだけど、残念。

寝室やアトリエなどが舞台装置のようだし芝居がかった大げさなセリフまわしと演技は、演劇をみているようだった。
いっそのこと、全編舞台劇調にしたほうが面白かったんじゃないだろうか。外の場面が全く美しく感じられなかったから余計にそう思ってしまう。(主役のマーティン・フリーマンは、舞台のキャリアもある。昨年のPARCO劇場、三谷幸喜の2人芝居「笑の大学」のイギリス版「ラスト・ラフ」の作家役を演じている。)
最後に「「夜警」は絵ではなくて、演劇だ。」って言わせてたことだし。
あまりにもナイマンっぽい音楽(でもナイマンじゃない)を使用していたのもちと気になる。

画家が主人公ということで、グリーナウェイ監督長編第一作『英国式庭園殺人事件』を思い出してしまった。17世紀のイギリスが舞台のコスプレもの。グリーナウェイ監督ブーム(?)だった時に、シャンテシネが上映してくれたのだが、最初に観たのがこれだったらハマらなかったと思う(あまり面白くなかったということ)作品。

監督へのリスペクトの気持ちから、初日の初回に観に行った。(一ヶ月も経ってしまったけど、それほど好意的には書けそうもなかったのでためらっていたのです。)
凄い行列にびっくり。皆さま、グリーナウェイ目当て?それとも、レンブラントだから?心なしか年配の方たちが多いような気が、、『レディ・チャタレー』も混んでて驚いた記憶があるし、皆さま文芸系エロがお好きなのでしょうか?

この映画に少しでも引っかかった方、そうでない方も、グリーナウェイ監督の他の作品を観ていただきたい。この映画がヒットして、過去作品を上映してくれると凄くうれしいのだけど。
わたしが一番好きなのは、『ベイビー・オブ・マコン』。その次は『プロスペローの本』か『コックと泥棒、その妻と愛人』。是非是非。

2008.1.12 テアトルタイムズスクエアにて(公式サイト)☆☆☆

監督/脚本:ピーター・グリーナウェイ
撮影:レイニエ・ファン・ブルメーレン
音楽:ジョバンニ・ソリーマ、ブウォテック・パブリク
美術:マーティン・ピエスルマ
出演:マーティン・フリーマン、エバ・バーシッスル、ジョディ・メイ、エミリー・ホームズ、ナタリー・プレス、トビー・ジョーンズ

Nightwatching  2007 カナダ/フランス/ドイツ/ポーランド/オランダ/イギリス

« 2008年 | トップページ | 『二月大歌舞伎』夜の部 »

コメント

こんばんは。
大変ご無沙汰していますがお元気でしょうか?
わたしもグリーナウェイは大好きでした。
今回はようやくハイビジョン映像どっぷりの世界に飽きてくれたのかしら、ほっと思ったり。
でもいわいさんと同じように、もっと演劇風に持ってきてくれてもよかったのになとやっぱり思いました。
つかみは『マコン』みたいな感じでぐぐぐーと引き込まれるものはあったので、全体的にはちょっと惜しかった印象です。
はしごの2本目だったのでこちらの息切れもありましたのですが。。
そうそう音楽がナイマン“風”だったのはアレレ?と思いました。もろもろ完全復調を待ちたいものです。
『ZOO』『建築家の腹』『コック~』『プロスペロー』『マコン』らへんの作品がわたしも大きなスクリーンで観たいです。

こんばんは。
いわいさんの感想がききたかったんですよー。
なるほどー、モウヒトコエな感じですかね??
私は時々眠気に襲われつつも、トータル的にはかなり気に入りました。
もう一度観たいくらいなんだけど、長いからなぁ・・・。
ラスト、コーションのベッドシーンみたいなのよりか、こういうエロさがいいなぁと。(笑)
いや、ホント、他の作品がスクリーンで観たいー!
で、コレ、すごーく混んでましたよね。300席もあるのに。レディ・チャタレーなんかは、初老男性が多かったりはしたけど、激混みではなかったです。でも、これにはビックリ。みんなレンブラントが好きなのかなぁ?って謎でした。ラスト、コーションは年配男性の集客を得ているらしく、そちらの目当ては完全に・・・。

makoさん、こんばんは。
こちらこそご無沙汰しています。
キャー、makoさんもグリーナウェイのことお好きだったのですね。ある時期流行りましたよね。

そうなんです。わたしも、つかみにはググッと引き込まれてドキドキしたのです。残念ですわ。
好きだから求め過ぎなのかもしれないとは思いつつ、なんか自己模倣のようにも感じられて、ちょっと哀しかったです。
ヴィエルニが亡くなったのも痛い。
復調、っていうかわたしが求めている方向にはいかないんじゃないかと思ったり。
最近のインタビューを読むと、ハイビジョンとか新しい方法に目が向いている気がしてしまうのです。
といっても新しい作品が公開されたら観るんですが、、

あまり期待しないことにしたので、それよりも昔の作品(『ZOO』から『マコン』までの)をスクリーンで上映して欲しいです。

かえるさん、こんばんは。
この感想だけは書かなければって思ってました。特別な人ですもの。
でもでも、モウヒトコエというかモウミコエかモウヨコエでってかんじです。
特別な存在なので、求めるものがとっても大きいんです、多分。
makoさんへのコメントにも書いたんですが、自己模倣にも感じられ。だったら、過去作品でイイヤーと思ってしまいました。
でも、ここのスクリーンには不信感があるので、別のスクリーンで上映してくれたら、確認のためまた観に行くかもしれないです。

『ラスト、コーション』まだ観てないんですが、こちらのほうがエロでしたか。
グリーナウェイって、人間を物みたいに扱っている気がして、そのせいかエロを感じたことはないのです。そういうところが好きなんですけどね。

かえるさんが観たときも混んでましたか。初日だからかなー、と思ったりもしてたのですが。レンブラントってそんなに人気あり?謎ですよね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137003/40127210

この記事へのトラックバック一覧です: 『レンブラントの夜警』:

» 『レンブラントの夜警』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
芸術は爆発しない。ただ静かに目を光らせる。グリーナウェイ健在。 1642年、アムステルダム、画家として成功していたレンブラントは市警団から集団肖像画を依頼される。『スウィーニー・トッド』を鑑賞した時に、一抹の物足りなさを感じた理由がわかったような気がした。私の求めていたのは、こういう猥雑さであり、光と影のニュアンス。血しぶきそのものではなく、内に蠢くグロテスクなもの、優雅さと醜悪が入り交じった混沌。 鬼才グリーナウェイが作り上げた光と闇があまりにも美しい映像を、テアトルタカシマヤの大きな... [続きを読む]

« 2008年 | トップページ | 『二月大歌舞伎』夜の部 »

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

最近のトラックバック

つぶやき


2015年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

天気ブログパーツ