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『鰐 〜ワニ〜』

GWは私的ギドク祭りを開催するつもりだったので、気合いをいれて初日に行ってきた。わたしとしては、かなり珍しいこと。

キム・ギドク監督のデビュー作。
デビュー作には作家の全てがあるというのは、よく言われることだ。確かにその通り。荒っぽいけれど、ギドク印が随所に感じられる作品だった。

漢江の橋の下に住む浮浪者の話。

ワニと呼ばれる浮浪者が主人公。これが、本当にどうしようもない最悪な男。
河に身投げした死体を引き上げ、金目のものを奪う。同じ場所で暮らしている老人と少年には、容赦ない暴力を振るう。
身投げした女を助けると、その女を手込めにして、虐待を繰り返す。
老人と少年はワニの虐待から彼女を守ろうするが、ワニの暴力には太刀打ちできない。

そんなどうしようもないワニを演じるのは、『悪い男』のチョ・ジェヒョン。今回は、セリフが多くて、しゃべるしゃべる。そして、想像しているよりも一瞬早く暴力を振るう、その動きに目が釘付け。あまりにもひどいその所行の数々に、ひどいと思う気持ちすら奪われてしまって、ひたすら見続けさせられた。
ワニが女にチラリと見せる優しさ、それに応える女の微笑みにとまどう表情には、ドキッとした。
もしかしたら、ギドク監督よりもチョ・ジェヒョンのほうに、より惹かれてしまっているのかも。

ワニにコナかけてくる警察の似顔絵描きとか、突然出てくる殺し屋とか、余計かと思えるエピソードも、デビュー作と思えばほほえましい。
そんなこんなでかなり荒削りな出来の映画なんだと思う。だけど、やっぱり面白いの。(チョ・ジェヒョンに魅せられてしまったので、評価は多分2割増しだけど。)

水に関わるショットは、全て美しい。月の光に照らされる漢江の水面。水たまりに映される風景。水に浮かぶ紙の船。

そして、ラストシーンの美しさには、息を呑んだ。
このために全てが用意されていたのだ。ソファも絵画も、甲羅を青く塗られた亀さえも。
青く塗った手錠が、2人を繋ぐ。
ワニが一瞬、生きようと足掻くところが、素晴らしい。最後のツーショットの壮絶な美しさに比べて、生々しくて心に残る。こういうところがギドク的なんだと思う。好き。

2007.4.28 ユーロスペースにて ☆☆☆

監督/脚本:キム・ギドク
撮影:イ・ドンサム
出演:チョ・ジェヒョン、ウ・ユンギョン、チョン・ムソン、アン・ジェフン

CROCODILE 1996  韓国 デジタルβカム上映(オリジナルは35mm)

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コメント

あにょん。
ギドク制覇しましたかー。
短期間で全部というのはすごい。
私はリアル・フィクションが観られませんでした。
ワイルド・アニマルと鰐はちょっとダメでした。
音楽のダサダサ感や劇的すぎるエピソードの連続がどうも・・・。
だけど、鰐のラストシークエンスにはやはりやられましたわ。
すんばらしいですー。
初期2作は作品としては苦手ながら、若かりし頃のチョ・ジェヒョンの素晴らしさを感じました。
彼はその後はどういう俳優なんでしょう。
この頃のよさをうまく伸ばしていたら、ソン・ガンホクラスになれた気がしたのですが・・。

かえるさん、こんにちは♪
ギドク制覇しましたよー!
GWに特集してくれたのが良かったです。GWに6本。
初期の作品は、なんだかなーではありました。一気に観て良かったです。
『リアル・フィクション』は、実験映画という趣でした。単体の作品として観たら、あまり面白くない作品だったかな。
音楽はダサダサでしたよねー。『ワイルド・アニマル』は、あまりのベタさに笑いをこらえるのが大変でしたわ。そういう映画じゃないのに。
『鰐』は、あのラストでゆるせちゃう感じです。そして、チョ・ジェヒョンの存在で、オッケーってかんじ。
わたしは『悪い男』にやられちゃったので、全てそこに繋げて観てしまった気もします。鰐を観てて、昔はたくさんしゃべってたのねー、とか思ってしまったり。ワイルド・アニマルも、鰐と同じかんじのチンピラでしたね。
彼はドラマかなんかで人気が出て、彼目当てに『悪い男』を観に来た客がぶっ飛んだという話を読みました。今はどうなんでしょう。
ニンがチンピラ役だからなー。

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粗削りなデビュー作だけど、キム・ギドクの水使いはやっぱりお見事。 漢江に架かる橋の下に住む浮浪者の青年ヨンペの物語。字幕に「ワニ兄」と出てましたが、これはどう読むの? ワニニイ? 語呂わるー ワニアニでも語呂わるいけど。いっそのことワニキでも・・・ 鰐っていうタイトルはどういう比喩なんだろうと思っていたら、主人公の呼び名そのまんまだった。いえ、鰐のような男だから、そう呼ばれているということなのかもしれないけれど、厳ついどう猛な鰐のイメージとはちょっと違う短絡的なちんぴら鰐男の物語。私... [続きを読む]

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