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“アラブ映画祭2007”に行ってきた

ドイツ文化会館内にある赤坂・OAGホールで開催されていた、第3回国際交流基金“アラブ映画祭2007”に行ってきた。この会場は初めて。チラシの地図を見ながら歩いて、ちょっと不安になってきたところで到着。

今回の目玉は、“アラブのハリウッド”と呼ばれるエジプト映画の大回顧展!だそう。
新作上映の『バーブ・アジーズ』『古きサナアの新しき日』『長い旅』の3本を観るつもりで、前売りを3枚購入。余裕があれば“目玉”に手を出そうと思っていたのだけど、ダウンしてしまったので、予定変更。
結局、観ることができたのは、『長い旅』『ズズーにご用心』『カイロ中央駅』の3本だった。
前売り券が作品指定ではなく全作品共通だったので、振替えることができて助かった。

『長い旅』
在仏モロッコ人の老人が、息子に車を運転させてメッカ巡礼の旅に出る。「アラブ映画祭2006」の人気No.1作品のアンコール上映だそう。

父親は車の運転ができないので、嫌がる高校生(?)の息子レダに運転手として同行することを強要する。レダはいわゆる普通の若者で、気になるのは恋人リザのことばかり。
半泣き状態で嫌々ながら出発したレダは、ヤケみたいにスピードを出したり、目を血走らせての無謀運転。「休め」というのを聞かず休憩しない息子に対して、サイドブレーキを引くという無茶な行為で答える父親。会話はないしいつも怒っているみたいな表情なので、父親の行動は予想できない過激さで、びっくりドキドキだった。恋人への思いに気もそぞろな息子の携帯電話をこっそりゴミ箱へ捨ててしまったりしちゃう。

フランスから始まるメッカへの旅は、ヨーロッパを横断するもの。その風景の移り変わりはやはりワクワクと楽しい。黄色い平原を通っていた一本道が、一面の銀世界に変わり、モスクが林立するイスラム教圏トルコに入国する。コーラン詠唱の響きに、イスラム教圏であることを強く感じさせられる。

ちと暴君的で頑固一徹、無口な父親と反抗的な息子が、長い旅を通して少しずつ理解し合う物語なのだと思っていた。風景の移り変わりとともに、少しずつだけれど心が通じ合っていく。

でも、メッカに近づき、巡礼の人々が増えるにつれ、表情が和らぎ口数も多くなった父親は、息子が理解できないアラビア語を話し、息子の知らない顔をみせる。
そして、メッカに到着してからの予測不可能な展開には、激しく衝撃を受けた。父親の魂を受け継ぐ旅だったとは。

イスラム教五行のひとつ、メッカ巡礼の光景を大画面で観ることができたのも素晴らしい収穫だった。夥しい人、人、人。

「デリチ」という言葉だけを口にする謎めいた黒衣の男は、何の象徴だったのかしら。(3/13)

監督:イスマエル・フェルーキ
Le Grand Voyage 2004  モロッコ=フランス 35mm

『ズズーにご用心』
ベリーダンサーの娘と上流階級出身の男との恋を描くミュージカル。
“アラブ映画のシンデレラ”と称されるスアド・ホスニーの代表作だそう。

ヒロインのズーズー(こう聞こえたし、字幕もそうなってた)が大学の体育祭(?)の徒競走で一位になるところから始まる。日本のアイドルとは違って、ムチムチでかなり色っぽいズーズー。さすがエジプト!(なのか?)
ズーズーを中心にしたオープニングのミュージカルシーンは、なるほどアイドル映画って雰囲気で、楽しい学園ミュージカルなのかぁ、と思ってたら、これも意外な展開に。

恋した相手は、上流階級出身の演出家。これがまた絵に描いたような色男なのが笑える。目が青くて、スポーツカーに乗り、上着を肩にヒラリとかけ、サングラスを口にくわえる姿もキメキメ。
すぐにふたりは、ラブラブになるのだけれど、恋には障害がつきもの。

ズーズーの母親は往年のベリー・ダンサーで、ズーズーもベリー・ダンスを踊る。
ベリー・ダンサーは差別されていて、彼女たちが住んでいるモハメド・アリ通りも偏見の対象になるらしく、ズーズーは住所や母親の職業を恥じていて、大学ではそれを隠しているのだ。

その差別の描写はちょっとシビアで、悲劇で終わってしまうのかと思ったけれど、誇り高く前向きなヒロインは、しっかりと幸せをつかむので、ホッと一息。

ベリー・ダンスのエロさにメロメロでした。(3/15)

監督:ハサン・アル=イマーム
Watch out for Zuzu  1971 エジプト

『カイロ中央駅』
ユーセフ・シャヒーン監督本人が主演したサスペンス。

地方から出てきた片足が不自由な青年は、キオスクの男に新聞売りとして雇われる。女性に対する鬱屈した欲望を溜め込んでいた青年は、構内でソーダを売る妖艶な女に恋焦がれたが、、

主人公をめぐる事件以外にも、駅で働く人間模様が描かれる。過酷な職場環境に組合を作ろうとするポーター。ソーダ売りの女たちとブッフェで働く男との諍い。
列車が走る線路に入り込んで、走り回るソーダ売りの女たちがパワフル。

主人公が恋い焦がれる女性がとても色っぽく、その魅惑的な仕草には主人公でなくてもメロメロになりそう。この女性には婚約者(駅で働くポーター)がいるのに、主人公の気持ちを弄んでいるのだけれど、アッケラカンとしているので、あまりひどさは感じられない。

主人公が勝手に追いつめられていく姿が恐ろしく、事件がジワジワと進行していく、そのサスペンスがたまらなかった。

1958年の作品とは思えないほど、モノクロの映像がキレイだった。強烈なコントラストや、近づいてくる列車のカットバックなど、ノワールな雰囲気に満ちていた。(3/15)

監督:ユーセフ・シャヒーン
Cairo Station  1958  エジプト

==
予定とは違ったけれど、年代も作風も異なる3作品を鑑賞することができて楽しかった。

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コメント

こんにちはー。
結局、『ズズーにご用心』をご覧になったんですねー。
学園ドラマ仕立てなのが楽しかったです。
『長い旅』は素晴らしかったですよねー。
そして、私はちゃっかりイエメン映画の方も観に行きました。
期待以上にちゃんとした(笑)楽しい映画でしたよー。
『パリ、ジュテーム』を観た時に「パリに行きたーい」って思った以上に、このたびは強く、イスラエルに行きたーいとかイエメンに行きたーいとか思ってしまいました。

かえるさん、こんばんはー。
スケジュール的に都合が良かったので、『ズズーにご用心』も観ちゃいました。チラシではモノクロとあったのに、いきなりカラフルなカラー映画だったから ビックリ。エジプトの女子大生は、おしゃれでキュートな服を着ていましたね。

観た3本は、それぞれ年代も違うし作風も違っていて、映画祭を楽しみました。
イエメン映画ご覧になったのですねー。良いなー。楽しい映画でしたか。
行きたいと強く思うほどに、素敵な風景だったということですね。イスラム圏はほとんど未知の世界なので、こうして映画で出会うことができてうれしい体験でした。
そんなこんなで、行きたい国が増えていくのはわたしも同じです。

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「アラブ映画祭2007」で観たもの。今回の目玉は"アラブのハリウッド"と呼ばれるエジプト映画の大回顧展! 『アラビアのロレンス』のオマー・シャリフの若き日の活劇などがウリだったらしいのだけど、私の興味はアラブ新作パノラマの方。砂漠を旅するロードムービーや世界遺産登録されているイエメンのサナアの街を舞台にしためったに観られないアラブ映画に出逢えたことが歓びでした。 砂漠と路地が大好きなんだものー。 ・『ズズーにご用心』 Watch out for Zuzu 1971 エジプト 監督... [続きを読む]

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