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『独立少年合唱団』

シネマアンジェリカで開催中の“映画俳優・香川照之特集”に行ってきた。

美しい自然も、二人の少年による繊細な物語も、とても好みだったけれど、後半の展開に対しては、ちょっと微妙な思いを抱く。

1970年代。山奥にある全寮制男子中学“独立学院”。父親を亡くして転校してきた道夫は、美しいボーイソプラノを持つ康夫と出会う。

道夫は吃音を持つ少年。康夫を介して出会った歌。歌っている時は吃音が出ないことに気づかされ、歌うことで生きる喜びに目覚めていく道夫。
少女のように美しい少年、康夫の謎めいた雰囲気や、彼の歌う美しいボーイソプラノと、合唱団の力強いハーモニー。
もの凄く好みの映画に出会ってしまったかも、とドキドキしてしまった前半。人の声によって作り出されるハーモニーにはとても弱いので、それだけでも心揺さぶられるものがあった。

音楽は池辺晋一郎。弦楽による音楽は美しいのだけど、この映画には過剰な気がした。ピアノだけの素朴な音楽のほうが良かったように思う。感動させてくれた「ともしび」「ポーリュシカ・ポーレ」といった合唱曲の編曲にもクレジットされていた。

合唱団の顧問である清野の指導が、心に残る。「音楽は沈黙は生まれる」

清野が学生運動の活動家だったという設定は、1970年代ならでは。学生運動に挫折して学院にやってきた教師の持つ、諦めとかやるせなさとかの屈折した雰囲気を、香川照之のちょっとした動きや目線が醸し出していた。(この上映は、香川照之をフィーチャした特集なのだ)
そして、清野を頼って逃げ込んできた学生運動の闘士、里美は、革命の不穏な雰囲気や大人の女性への興味を、少年たちにもたらす。久しぶりに観た滝沢涼子。少年たちに胸騒ぎを起こさせる、ちょっとやさぐれた存在感があった。

そんな大人の挫折感や時代の空気感が、少年たちの繊細な物語へアクセントを与えていたと思う。
声変わりという現実を受け入れられずに、革命へと走る康夫と、彼が失った声の代わりになろうとする道夫。それはとても痛々しくて、美しい友情だった。
だけど、ギリギリに追いつめられたふたりに語られた、「この国で革命はできない」という清野の言葉や、あまりにも悲惨な里美の爆死。
学生運動に対する監督の否定的な思いがこめられているようで、それをどう考えて良いのかちと困った。

美しい映像が、雄弁に語っていた。
少年たちが寝起きする寮の大部屋。たくさんの机とベッドがずらりと並べられている。窓には白いカーテンが吊られ、ベッドのシーツは白く、机とか床の黒々とした板の色によく映えていた。
古い木造の校舎や、山奥の素朴な風景も、抑えた色調で美しく。

舞台設定や描かれる繊細な心情は、萩尾望都や竹宮惠子の漫画を少し思い出させた。少年二人を演じた、伊藤淳史(今や電車男)と藤間宇宙もハマリ役。。

独立学院長を演じていた俳優が、言ってる台詞がよく聞き取れないけど存在感が凄くて、誰?と思っていたら、“岡本喜八”だった。なるほど。

2007.2.7  シネマアンジェリカにて

監督:緒方明
プロデューサー:仙頭武則
原作/脚本:青木研次
撮影:猪本雅三
美術:花谷秀文
音楽:池辺晋一郎
出演:伊藤淳史、藤間宇宙、香川照之、滝沢涼子、國村隼、泉谷しげる、岡本喜八、光石研

2000 日本

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コメント

こっちはTBできましたが「エレクション」は相変わらずずっとダメです。
どういうカラクリなんだ。
さて本作は偶然にも昨年の2月11日に見ました。
ビデオで借りたものを見たということなんですが、
これかなりすごくないですか。
びっくりしました。
アンジェリカの特集、行こうかどうしようか迷って結局行きませんでしたが、
スクリーンでも見たいという衝動に駆られるくらい好きですね。
緒方明にハズレなしです個人的に。
もっといっぱい撮ってほしい…
ポーリュシカ・ポーレなんていまだに頭の中で延々ループすることがあります。
と書いていたらまたループが始まりそうで、
何ならカウリスマキも見たくなりました。

現象さん、こんばんは。
『エレクション』もトラックバックできたみたいです。
勝手に保留されていたので、公開しましたよん。
ほぉー、縁があるようで素敵ですねー。
ちょうど一年違いの記事が、トラックバックで繋がるとは。

かなり抑えた色調の、ある意味狙った映像だったので、スクリーンで観たほうが美しさが際立つと思いますー。
緒方明は、初めてでした。お好きなのですね。わたしも、覚えておきます。

ポーリュシカ・ポーレは、今わたしの頭の中でヘヴィーローテーション中です。ぼーっとしていると、始まってしまうので油断できません。

んん、カウリスマキ? 何か関係ありましたっけ?

ポーリシュカ→レニングラード・カウボーイズ→カウリスマキ
という風に頭の中でリンクしていったのですが、
そんなもん誰も分からないっつうの。
いやほんと説明不足でごめんなさい。
緒方明いいですよー。
「いつか~」の他にも「饗宴」というのを見まして、
これはピンクで60分前後の中編で映像が超荒いものの、
それを補って余りある作品だと個人的に思っております。

現象さん、なるほどー。
レニングラード・カウボーイズは、観たことないのです。
カウリスマキも、特集して欲しいなー。
ロシア的なものはとても好きなので、ロシア民謡もツボでした。

緒方明も、新文芸座あたりで上映して欲しいです。

私も観に行きましたよー。
予告を観て気になったものの、当初は観に行こうとまでは思っていなかったんですが、監督が『いつか読書する日』の人だと気づいたので行ってみました。
今まで観た中で一番カッコいい香川さんだったかもー。

かえるさん♪
ブログのサイドバーにタイトルがあったので、観に行ったのは気づいてましたわん。コメントいただいたということは、感想は書かないのでしょか。
香川さんはクセ者役が多い印象です。確かに、挫折した教師役はカッコよかったです。
歌舞伎ファンとしては、市川猿之助にドンドン似てくるので、いろいろと感慨深いのです。歌舞伎役者になってたらなー、と思ったり。
すっかり映画俳優として、なくてはならない人になってるから、それはそれで素晴らしいのですが。

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» 独立少年合唱団 [RENTAL] [ソウウツおかげでFLASHBACK現象]
四季の移ろいと少年たちと、その歌声が美しい。監督の緒方明は風景を人物描写に投影して、作品の美しさにかけては際立っていると感じる。 母親を早くに亡くし、父親も病死した道夫は山中にある全寮制の独立学院に転入するが、どもりが原因でいじめに遭う。孤独な道夫に、グ... [続きを読む]

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