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『恋人たちの失われた革命』

Amants_reguliers_2 モノクロームの映像は、メランコリックな陶酔感に満ちていた。

1968年5月、パリ。五月革命。二十歳の詩人フランソワは兵役を拒絶し、機動隊と闘争を繰り広げる若者たちの行動に加わる。ある日、フランソワは彫刻家を目指す美しい女性リリーと出会い、一瞬で恋に落ちる。

1968年の五月革命。機動隊とデモ隊の衝突が繰り広げられる場面の淡々とした描写には、不思議な当事者感があった。微妙に離れた場所から撮影されたようなアングルで延々と映し出される映像は、革命の熱のようなものを感じさせない。車をひっくり返し、火炎瓶を投げ、警察に追われて、知人の家に逃げ込む。その行動が静かに映し出される。それは、本当にそうだったのだろうと思えて、とてもリアルだった。

帰宅したフランソワが、母と祖父と囲む食卓。ルイ・ガレルの実母と実祖父(フィリップ・ガレル監督の実父)が使われていて、親密な空間が醸し出され、これもリアル。そして、微笑ましかった。

革命が終わり、あったかもしれない熱が失われようとしている空気の中、若者たちは麻薬やセックスに溺れ、“革命”についてでさえ、だらだらと語りあうだけになってしまう。どうにもならない時代の雰囲気を表現するには、長い上映時間(182分)が必要だったのだろう。

モノクロームの美しい映像は、退廃というほど甘くはなく、透明な美しさを感じさせた。室内でも強い光が感じられて、コントラストが凄い。
フレームが固定された画面の1シーンそれぞれが、たっぷりと映し出される。
人物が画面にゆっくりと登場し台詞が語られ、そして人物が退場した後にもしばらく映され続ける風景。そこにくすぶる思いが残されているようで、そう感じさせられる度にその余韻が心に積み重なって、息苦しいような気持ちになってしまう。

ルイ・ガレルの黒い巻き毛と瞳、ホクロの目立つ横顔も含めて、モノクロームに映えて美しい。「ママーン」と呼びかけるのには、『ジョルジュ・バタイユ ママン』 を思い出させられて、ちょっと笑ってしまったけれど。

スタンダードサイズの画面も、古風な雰囲気で素敵。

モノクロームの美しさはスクリーンで観る喜びを感じさせてくれる。
ふと、一昨年観たレオス・カラックス監督の『ボーイ・ミーツ・ガール』を思い出した。あれも、パリだったよな。

2007.2.11 東京都写真美術館ホールにて(公式サイト

監督/脚本:フィリップ・ガレル
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー
音楽:ジャン=クロード・ヴァニエ
出演:ルイ・ガレル、クロティルド・エスム、モーリス・ガレル

Les Amants Réguliers  2005 フランス

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コメント

こんばんは。
>モノクロームの美しい映像は、退廃というほど甘くはなく、透明な美しさを感じさせた
そうですよね。退廃、になってしまうと、違う世界になってしまうのですが、決して退廃ではなくて、もっとずっとビターで純なんですよね。
ビターなんだけど、パキっと割り切れない、そのちょっとダラダラした時間も含めて、時代の空気を感じました。またその空気が、現代にも通じる気がしました。
それと、この映像と空気感から、「詩人の魂」みたいなものも感じられて、それゆえに、ただのダラダラとかモラトリアム、とは一線を画していると思いました。
急に幻想に入るところなんかも、印象に残りました。
本当に、スクリーンで観るべき作品でしたね。行ってよかったです。

わかばさん、こんばんは。
退廃ではなかったですよね。退廃も好きなんですが、この映像だと退廃ではなくって、わかばさんのおっしゃるように、ビターで純ですよね。
そして、時代の空気を感じつつ、それは現代の若者たちにも通じるよなーと思ってました。どうにもならない感じ。
>急に幻想に入るところなんかも、
そうでした。とても印象的でした。特に、最後の幻想、フランソワの夢ですよね、あれが美しかったです。映画が終わって外に出ると暗くなり始めていて、一番星が見えました。
”エトワール”という言葉が聞こえた気がして、余韻に浸れました。ウフ

こんにちはー。
モノクロームの映画っていいですよねー。
昔はちょっと苦手だったんですが、クラシック作品ではなくて、90年代以降のアート作品でだんだんハマってきました。
年末年始にシネマヴェーラで観たゴダールのモノクロの街のシーンは映像の美しさにも改めて気づき・・・。
ちなみに退廃的なモノクロ映画といったら何がありますでしょか?
それと、退廃は甘いもの?

『ボーイ・ミーツ・ガール』も好きです。パリって、モノクロがハマりますよねー。
パリ、ジュテームはモノクロ作品あるのかなぁってふと思ったり。

かえるさん、こんばんは。
モノクロームの映画は、良いですよねー。わたしは、日本のクラシック映画も好きですよん。最近、ハマり気味です。
90年代以降のアート作品って、何でしょう?わたしは、あまり観ていないかもです。

退廃的なモノクロ映画ですよね、、むーん。出てこないです。すみませんー。退廃映画というと、ヴィスコンティとか『愛の嵐』とか、カラー作品が出てきちゃいました。まず素材ありきなのでしょうか。
そして、退廃は甘いものではありませんです。退廃->腐敗->腐った果実->甘い という連想になってました。使い方が甘いですね。反省。
『パリ、ジュテーム』は、もの凄くたくさんの作品が集まっているんですよね。素敵なモノクロが観られるでしょうか?

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» 恋人たちの失われた革命 [working title -annex-]
恋人たちの失われた革命  (2005) フィリップ・ガレル監督  配給:ビターズ・エンド  白と黒の激しすぎるコントラスト。  フィリップ・ガレル監督がモノクロで描く、68年パリの革命と挫折。  時は1968年、パリ。兵役を拒否した20歳の詩人フランソワは5月革命の暴動に参加する。しかし革命はあっけなく頓挫。アヘンを吸いながら、ただ夢を語る日々を過ごすフランソワの前に、彫刻家を目指す美しい女性リリーが現れる…。    上映時間を確かめずに観た(いつも確認を忘れる)。観終わって確... [続きを読む]

» 『恋人たちの失われた革命』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
刹那の美しさ。 1968年5月、パリ。兵役を拒絶した二十歳の詩人フランソワは、彫刻家を目指す美しい女性リリーと出会う。パリの五月革命という言葉には胸がときめいてしまう。それは不謹慎なことかもしれないけど。『ドリーマーズ』のラストの喧騒を思い出す。同時代を生きていない私には、それは映画の中の美しい記憶。 年末年始にシネマヴェーラにロメール作品などを観に行った時、二本立てついでにゴダール作品も観た。そんなわけで、パリ60年代感覚が心の中で俄に盛り上がっていたこともあって。五月革命という言葉は... [続きを読む]

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