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『スキャナー・ダークリー』

Ascannerdarkly リチャード・リンクレイター監督は、初体験だった。気にはなっていたけど、機会がなく。

実際の俳優が演じた映像をデジタル・ペイントしてアニメーション化する“ロトスコープ”という技術で作られたアニメーション。この“ロトスコープ”の絵が今ひとつかなと思って、『ウェイキング・ライフ』は観なかった。俳優が演じているのなら、そのまま使えばいいじゃーん、と思ってた。
でも、この映画を観たら、”ロトスコープ”で作られた独特な世界が物語にハマっていた。なるほど、この技術でないと表現できないものがあるのだ。

今から7年後のアメリカ。“物質D”と呼ばれる強力なドラッグが蔓延していた。覆面麻薬捜査官のボブ・アークターは、物質Dの供給源を探るおとり捜査を行っていた。

アニメーションとしてトレースされた街並。今とそれほど変わらないけれど、でも何かが違う近未来。ユラユラと安定しない人物の輪郭は、既に別世界にトリップしているようでもあり、生身の俳優が演じているのとは違う、パラレルワールドな趣があった。これが、アニメーション化した意味を最も感じさせてくれたところ。

覆面麻薬捜査官が着用する“スクランブル・スーツ”の視覚化が素敵。正体がバレないように、性別も年齢も容姿も判別不可能なスーツ。上司や同僚ですら、お互いの素性を知ることがない職場。
ボブは、自分の行動を自分で監視するはめに陥ってしまう。自ら”物質D”を服用してドラッグに蝕まれながら、自分の行動を監視する自分という存在に、混乱が深まる。人格が分裂していき、悪夢によって現実を浸食されていく感覚を、映像が効果的に表現していて、クラクラさせられる。

体中から湧いてくる無数の虫など、ドラッグによる幻覚症状の表現も、素晴らしくオゾマしい。

ダークで鬱々とした世界にシュールなユーモアが重なって、不思議な映画になっていた。
アニメーションという手法と、トリップした人たちが語る膨大な台詞。情報量がとても多いので、ちょっと疲れ気味の頭では、消化しきれなかったみたいなのが残念。かといって、もう1回観るほどは浸れなかったかな。

いつもは字幕派だけど、この映画は吹替えで観ても面白いかもと思った。オリジナルの俳優はそのままの姿なのだけれど、それでもやっぱりアニメーションだし。

ウィノナ・ライダーを観たのは、久しぶりだったような。

原作は、ディックの自伝的小説で、彼がドラッグに溺れた日々が反映されているそうだ。
ディックの作品はかなり映画化されているけれど、その中でもとてもディックらしい映画になっているという評判も納得。

2007.1.9 シネセゾン渋谷にて(公式サイト

監督/脚本:リチャード・リンクレイター
製作総指揮:ジョージ・クルーニー、スティーブン・ソダーバーグ
原作:フィリップ・K・ディック
撮影:シェーン・F・ケリー
編集:サンドラ・アデア
プロダクション・デザイン:ブルーム・カーティス
出演:キアヌ・リーブス、ウィノナ・ライダー、ロバート・ダウニー・Jr.、ウッディ・ハレルソン、ロニー・コクレイン

A Scanner Darkly 2006 アメリカ

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コメント

こんばんは♪
このトリップ感は、貴重でしたよね。でも確かに情報量が多くて、ちょっと頭から溢れ気味には感じました。それこそが近未来のスピードなのかもしれませんが。
ウィノナ・ライダー、久々ですよね。その存在感がまた、近未来だけれど既視感みたいなものになっていたような気もしました。

わかばさん、こんばんはー♪
トリップした感覚が、今までの映画で一番感じられたかもしれません。
なるほど、情報量の多さも近未来なのかもですね。
英語が理解できれば、もっと楽しめたのだと思いました。

ウィノナ・ライダーって、好きだったのです。

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» スキャナー・ダークリー [working title -annex-]
スキャナー・ダークリー (2006) リチャード・リンクレイター監督  フィリップ・K・ディックが描いた近未来の悪夢を、リンクレーターが「実写アニメ」で映像化。  悪夢の近未来。ドラッグに侵されていく心と体。管理社会の闇。  この映画では、「ロトスコープ」と呼ばれる、特殊なアニメ手法が使われています。  まず実写で撮影、その後その映像をトレースし、色を加えるなどの加工をして、アニメ化する(詳しいプロセスは、パンフレットを読んでも実はよくわかっていませんが)。とにかく、途方もなく手間のかか... [続きを読む]

» 『スキャナー・ダークリー』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
リンクレーター作品としては好み系じゃないけれど、おもしろいSF世界。 今からほんの7年先の近未来、ロサンジェルス郊外のオレンジ郡アナハイム。覆面麻薬捜査官のボブ・アークターは、ドラッグ“物質D”の供給源を突きとめようと、自ら“物質D”を服用し、常習者たちと自宅で共同生活をおくる“おとり捜査”を開始していた。フィリップ・K・ディックのSF小説「暗闇のスキャナー」(77)が原作。実写映像にデジタル・ペインティングを施してアニメーションに変換するデジタルロトスコープアニメーションという技法によって映... [続きを読む]

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