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『O侯爵夫人』『ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)』

シネマヴェーラ渋谷の特集“ヌーヴェルヴァーグはもうすぐ50歳になる”で2本。
上映スケジュールから予定を立てた時に、これらが2006年最後の映画になることは決まっていた。

サッシャ・ヴィエルニが撮影監督の『ヒロシマ・モナムール』(アラン・レネ監督)がお目当てだったのだけど、『O侯爵夫人』(エリック・ロメール監督)の素晴らしさにノックアウト。とてもとても気に入りました。
これが、2本立ての醍醐味! 

『O侯爵夫人』
町の食堂で、新聞の告知広告が話題になっている。それは、身に覚えのない妊娠をしたO侯爵夫人が、生まれてくる子供の父親に名乗り出るように呼びかけ、その男と結婚する、というものだった。

父親は誰なのか?という興味を抱かせて、回想場面に続く。
未亡人であるO侯爵夫人は、両親から貞淑を疑われ勘当されてしまうというのに、誇りを失わず、冷静に身を処していて、その姿が気高くも美しい。

映画を観ているこちら側からは、父親が誰なのかは明らか。なのに、宗教的な考え方とか、貴族のメンタリティとか、時代の雰囲気が、謎解きを阻む。
物語が進む道筋がわからない面白さがあった。

カメラに向かって語りかけるような目線や、格調高い台詞回しが、演劇っぽい雰囲気。そのせいか、ゆったりとしたユーモアが漂っているように感じられた。
O侯爵夫人に探りをいれにくる母親のウソとか、誤解を解いて許しを請う父親の涙とか、微笑ましい場面も多かった。吹き出しそうになることも。

そして、映像の素晴らしさにうっとり!!!
冒頭のクレジットで、ネストール・アルメンドロスが撮影だと知った時から期待はしていたのだけれど、降参。
奥行きが感じられる暗闇の黒。その中で、焚き火や蝋燭などの、灯りがひそやかに輝いている。光の在処を意識させられる繊細な画面は、撮影の秘密を知りたいと思わされるほどに、魅惑的。
ドアが開閉して現れる室内の全て、その隅々までが美しくて、ため息が出るほどだった。

デジタル素材による上映の予定が、35mm上映に変更になったとのこと。うれしー。

監督/脚本:エリック・ロメール
原作:ハインリッヒ・フォン・クライスト
撮影:ネストール・アルメンドロス
出演:エディット・クレヴァー、ブルーノ・ガンツ、ペーター・リューア、オットー・ザンダー

DIE MARQUISE VON O  1975  西ドイツ=フランス

『ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)』
久しぶりに前衛的な映画を観た気がする。

登場人物は、ほぼ二人。フランス人の女と日本人の男。
戦争が終わって14年。撮影のため広島を訪れた女優が、日本人の建築家と一日限りの情事に耽る。

モノクロの画面。ベッドで抱き合う男女が映し出される。女は「私、ヒロシマで何もかも見たわ」と囁き、男は「君は何も見ちゃいない」と答える。

ヒロシマが体験した原爆の記憶。
女が戦時中に故郷ヌヴェールで体験した記憶。
広島の太田川と、ヌヴェールを流れるロワール河の風景を重ね合わせ、14年経って忘却されようとしている記憶を蘇えらせる。

女は愛の記憶を語り、恋人だったドイツ人兵士を日本人建築家に重ね合わせる。愛と記憶と忘却を浮き上がらせるモノローグは、難解なのだけれど、何か気になる余韻を残す。
広島が体験した原爆の記憶と、日本人建築家との関わりがよくわからないので、彼の存在が意味するところは曖昧な気もした。彼は、ヒロシマそのものだったのか。

1959年の広島が、モダンな雰囲気で映されていて素敵。マルグリット・デュラスによる脚本が格好良い。

監督:アラン・レネ
原作/脚本:マルグリット・デュラス
撮影:サッシャ・ヴィエルニ、高橋通夫
音楽:ジョヴァンニ・フスコ、ジョルジュ・ドルリュー
出演:エマニュエル・リヴァ、岡田英次、ベルナール・フレッソン、アナトール・ドーマン

HIROSHIMA,MON AMOUR  1959  フランス=日本

2006.12.31 シネマヴェーラ渋谷にて

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コメント

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
昨年は後半あまり被らなかったですね。
旅行に行かれた後、なかなか忙しそうだなぁと思っていました。
ヴェーラのヌーベルバーグ特集は2回行きました。
シャブロルとロメールが良かったです。
んー、いい映画を見た、と満足顔でした。
あまりにアバンギャルドでついていけない作品もありましたが。
結構混んでませんでした?
いつもの特集より人が入っている印象を受けました。
ヌーベルバーグ強し。

現象さん、ご無沙汰していますー。
今年もよろしくお願いします。
昨年後半は、すっかりサボってしまいました。
現象さんと被った作品も、感想書いていなかったり。

このヌーヴェルヴァーグ特集には、もっと通いたかったのですが、
結局、これだけになりそうな気がします。
ロメールの映画は、苦手だという記憶があったのですが、
これは意外なくらい引き込まれてしまいました。
シネマヴェーラの特集としては、珍しい気がしますよね。フランス映画。待っている人も多かったのでしょうか。
大晦日だからと高を括って行ったら、混んでいました。

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