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『オレステス』

ギリシア悲劇に雨が降る。
それも、激しい豪雨。その雨音にかき消されて、台詞が聞こえないくらいに。
その雨に、舞台と客席とが隔てられてしまっているような、そんなもどかしさを感じながら、観ていた。

エレクトラが叫ぶように、一族の因縁について語る幕開け。

雨の音に負けないように声を張り上げているけれども、それでも聞き取りにくい。中嶋朋子の細い体が痛々しかった。

実の母親を殺害したオレステスは、心身ともに追いつめられている。
叔父のメネラオスに頼るが拒まれ、殺した母親の父テュンダレオスからも見捨てられてしまった。
ただ、姉のエレクトラと親友のピュラデスが、子供を慈しむように彼の面倒をみている。深く繋がった3人は、人質をとって館に立て籠る。
繰り返し語られる、復讐の連鎖。その連鎖に繋がるように、更に憎しみを煽るような行為は、テロリストを連想させ、この連鎖が現代にも続いているような気持ちにさせられた。

一触即発でどうにもならない状況に嵌まってしまい、どう収拾させられるのか考えてしまった時、「これはギリシア悲劇だし、あれしかないのかー」と思い出した。
“デウス・エクス・マキナ”だ。アポロンが登場して、全てを丸く収める。
そもそも母殺しだってアポロンの神託によるものだから、理不尽な気もしてしまうのだけれど、人々はそれに従うしかないのだ。

現実はこううまくはいかないのだ、という思いに浸りそうになった時、横から出てきた黒子たちが、ビラを撒いた。アメリカ合衆国、レバノン共和国、パレスチナ自治区、イスラエル国、それぞれの国旗と国家を印刷した大量のビラ。
復讐の連鎖を今もって断ち切ることができていない現実。機械仕掛けの神が現れるてくれるわけではない世界。
あぁ蜷川幸雄は怒っているのだな、と思った。それは、いつものことではあるのだけど。

藤原竜也が出てきた瞬間、「顔が丸い」と思ってしまった。調子悪いの?
いつもの苦悶の台詞回しとはちょっと違う、太い声が新鮮だった。

北村有起哉の台詞回しは脱力系?なのか、不思議な印象。オレステスを愛しているという台詞があるけれど、冷めた風に感じられるのが残念。オレステスを挟んでエレクトラと三角関係っぽくなってくれる色っぽい雰囲気だったら良かったのにな。

シアターコクーンにて

作:エウリピデス
翻訳:山形治江
演出:蜷川幸雄
出演:藤原竜也、中嶋朋子、北村有起哉、香寿たつき、吉田鋼太郎、寺泉憲、瑳川哲朗

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コメント

「デウス・エクス・マキナ」がお約束ゴトとわかっていても、
許せるときとダメなときがありまして
今回の舞台、残念ながら私はかなり後味が悪かったです。
最後のビラまきも、露骨すぎて興ざめしちゃったし。
蜷川さん、ホント「怒って」ますよねぇ~。
でも私はもう、いいかげん、うんざりしてきちゃったかな。

ゆっこさん、こんばんは。
ダメでしたか。
わたしは、ちょっと引き気味で観ていたので、
ギリシア悲劇だよね、という納得のしかたです。
アポロンの表現には、こうきたかー、と思いました。
2階だったので、神と同じ位置から舞台を見下ろしている気持ちがしました。
確かに、うんざりする気持ちもわかります。いつものことですものね。
わたしは、あのビラがなかったら、後味が悪いとかそんなこともなく、全然印象の残らない舞台になっていたところでした。

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