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『ブロークバック・マウンテン』

Brokebackmountainブロークバック・マウンテンの風景は、非現実的なほどに美しかった。
キラキラと透明な空気の中で生まれた2人のカウボーイの秘められなければならなかった愛の物語。

観終わった後でジワジワ〜と沁みてきた。

1960年代初頭、ワイオミング州のブロークバック・マウンテン。カウボーイのイニスとジャックは、山でキャンプをしながら羊の放牧管理をする仕事をまかせられた。過酷なキャンプ生活の中で愛し合うようになったふたり。

寡黙なイニスと明るいジャックという対照的な若者ふたりが、酔った勢いで関係を結んでしまう。その愛の始まり方はあっさりと衝動的で、ちょっと唐突に感じられてしまうほどだ。
そして、山を下りてふたりは別れ、別々の人生を歩む。それぞれが結婚し子供を設けた後、ジャックからきた突然の手紙によって再開してしまった愛の交流。その描写も、やはり静かで淡々としたものだった。

たまの逢瀬に浮き浮きしている夫たちの気持ちよりも、妻たちの気持ちのほうはわかりやすい。特にイニスの妻アルマの衝撃と嫉妬。あんな場面を見せられて、それで普通に生活できるわけないもの。

はっきりと愛情を示すジャックに対して、古い考え方にどっぷりと浸っているイニスは、気持ちや行動を制御し、ジャックに対する感情を恋愛だと認めることに抵抗する。けれども、イニスのほうがより深く激しくジャックを愛していることが次第にわかってくる。彼が幼い頃に、彼の父親が同性愛者のカウボーイに対して行った制裁の残像も、彼の心に傷を残していたのだろう。

ジャックとイニスにとって、ブロークバック・マウンテンは、自分たちの最も幸せだった時間を過ごした聖地。ふたりの思いを共有することはできなかったけれど、そこに戻ることができない哀しさとか、諦めとか、寂しさとか、悔恨の思いとか、そういった複雑な思いを抱きつつ生きてきたのだとしたら、悲しい。

同性愛に厳しい時代、しかもカウボーイという男の世界で展開する男たちの愛だからこそ、この物語は切ない。

ジャックに心の全て打ち明けることのないイニスの切なさを繊細に演じたヒース・レジャーが素晴らしかった。

ラストでイニスが絞り出すように語る台詞の字幕は説明し過ぎかと。

山々を臨む風景と、切なさが滲むギター音とが、あまりにも美し過ぎて観ることを躊躇してしまっていたけれど、なるほどアカデミー賞三部門ですね、という作品だった。

ギンレイホールにて(公式サイト

監督:アン・リー
脚本:テリー・マクマートリー、ダイアナ・オサナ
原作:E・アニー・プルー
撮影:ロドリゴ・プリエト
出演:ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール、ミシェル・ウィリアムズ、アン・ハサウェイ

BROKEBACK MOUNTAIN  2005  アメリカ

 


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コメント

いわいさん、こんばんわ。
またまた、お邪魔しちゃいます。
この作品、私はアルマの気持ちばかり考えてしまったので。とても辛かったです。
ヒース・レジャー、素晴らしかったですよね。音なの男。『カサノバ』のヒース君よりも、本作のヒース君の方が、役者としては魅力を感じました。『チョコレート』のビリーボブの息子役も、出番は少ないながらに良かったんだよな~

隣の評論家さん、こんばんはー。
コメントとトラックバックありがとうございます。
目撃してしまったアルマの動揺した様子をよそに、ルンルンと外出してしまうイニスにはあきれちゃいました。
まぁ、「恋しているのだね」とは思いましたけど。
ヒース・レジャーは、本当に素晴らしいと思いました。最初のうちは違和感を持っていたのですが、時々みせる抑えきれないような情熱に納得させられてしまいました。

こんばんは、ちょっぴりごぶさたです。
これは初日に行ってしまったのですが、私には微妙な作品になってしまいました。
というのも、直前に原作を読んでしまったんです。軽い気持ちで読んだのに、びっくりするくらい感動してしまって。それで映画を全く冷静に観れませんでした。時間を置いてから行けばよかったです。
今なら少し違う気持ちで観られるかな、原作と映画の関係って、難しいなと思わされた作品でした。
いわいさんの感想に沿ってないコメントですみません。ちょっと語りたくなりました。

わかばさん、こんばんは。コメントありがとうございますー。

原作を先にお読みになったのですね。
原作と映画の関係については、確かに難しいですよね。映画になることがわかっている場合、わたしは原作を後にする派です。
映画は長めのものが増えたとはいえ、せいぜい3時間が限度で、原作の情報量を全て詰め込むことは無理だから、映画化というのは、監督がその物語をどのように読んだかを表現するものなのでは、と思っています。
後から原作を読んで、映画と違うと感じることがあっても、あの人はそういう風に解釈したんだな、と思えます。でも、原作を先に読んでいる場合、エピソードや台詞の選択が気になってしまうことが多いです。
実は、この映画を観終わった直後の感想は、わたしも微妙でした。後からイニスの気持ちをいろいろと考えていたら、ジワジワと切なくなった感じです。
でも、原作を読んだ、わかばさんの微妙さとは違うのでしょうね。原作は短編だそうなので、付け加えられたエピソードもあったのでしょうか?
感動した作品であればあるほど、監督の感覚と合うかどうかが、楽しめるかどうかの分かれ目だと思います。

話題ひっぱってすみません。ちょっとだけ。
私も観ようと思っている映画の原作は、基本的に読まない派です。おっしゃるとおり、映画が原作そのものであるわけはないし、監督の解釈を楽しむものであると私も思います。
が、原作の評判がよかったのと短編で薄かったので、ついふらふらと読んでしまったのですよね~。
私の失敗?は、原作にひどく思い入れてしまったこと、それなのに時間を置かずに映画を観てしまったことだと思います。
時間を置けば、もう少し、監督の解釈としてのアレンジを冷静に観れたかな、と。
多分、思い入れすぎているのだと思います。見返しても同じかな、それとも違うかな、といまだに考えてしまう作品です。
ちなみに、基本的にはかなり原作に忠実です。いい映画だと思います。だからこそ微妙なのです(笑)花火のシーンとか、キレイすぎた気もしました。全体的にもっと汚くても?よかったかも、とは思いました。監督候補としてガス・ヴァン・サントの名前もあったそうで、ちょっとこっちで観てみたかった気もしました。

わかばさん、コメントありがとうございます。
ついふらふらと読んでしまったって、わかりますー。
原作に思い入れがあったら、冷静に観られませんよね。
幸いなことに(不幸かも?)、今までそれほど思い入れた本ってないのです。

あっ、わたしもキレイ過ぎると思いました。
あまり批判的には書いていないですが、“非現実的なほど美しい”って、ちょっと微妙な気持ちをこめています。
ちょっとヤオイっぽい雰囲気に落ちそうな危険がありましたよね。
良い映画だと思いますけど。
ガス・ヴァン・サントですか。確かに観てみたいかも。

ご旅行前に何度も恐縮です。これで打ち止めにします(笑)
そうなんです、批判的になるほどではないのですが、キレイ過ぎるんですよね。でも「よい映画」だし…と同じところをグルグル(笑)。
なんかその、エグさを隠しつつ、でも女性好みのヤオイまでは行かない、そのバランスが巧いような、どっちつかずなような。
アン・リーもそういえば台湾なのですよね。台湾時代の作品、観てみようかな。
ではでは、また。

わかばさん、コメント歓迎です。
ヤオイっぽくなりそうなところを、巧くバランスをとって美しくまとめているなー、と思ってました。どっちつかずって、厳しいですね。フフ
そうでした。アン・リー監督も台湾ですね。
台湾時代の作品、大好きです。
ぜひぜひご覧ください。

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