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“中国映画の全貌2006”のまとめ

“中国映画の全貌2006”を上映中の三百人劇場に通いました。
映画上映はこれが最後ということで、長い間の感謝をこめて。
なんとか6回通うことができたので、感想をまとめました。

『子供たちの王様』
文化大革命時代を背景にした作品。7年間を生産隊で過ごした“やせっぽち”というあだ名の青年は、突然、農村の学校に教師として赴任することになった。紙不足から生徒が教科書すら持っていない状況で、教師としての経験がない青年と生徒たちの交流を描いている。

“やせっぽち”というあだ名の青年が持つ素朴な正義感が美しかった。普段着はボロボロのTシャツ、教師の時はボロボロの人民服(?)。そのボロボロさ加減が素晴らしく良かった。真っすぐに生徒に対峙する姿と、それを素直に受け入れる生徒たちの清々しさも気持ちよい。
体制的な教科書を黒板に書き写し、それを生徒たちがノートに写す単調な授業を止め、作文によって自分の言葉で語ることを教えるようになる“やせっぽち”は生徒たちとともに成長する。表現する自由を享受する子供たちも輝く笑顔も微笑ましかった。
体制に従わないことで、学校から異動させられる“やせっぽち”は、生徒に挨拶することなくひっそりと学校を去る。
ラストシーンは、とても幻想的で象徴的。文革への批判が隠されているようだった。
辞書をめぐるエピソードはとても興味深いものがあった。
小高い丘の上にある学校を映す遠景のショットはとても美しく、板書の音や鉛筆を走らせる音など、音も印象的だった。(8/30鑑賞)

監督/脚本:陳凱歌
脚本:万之
原作:阿城
撮影:顧長衛
出演:謝園、楊学文、陳紹華、張彩梅、徐国慶
孩子王 1987

『北京ヴァイオリン』
息子のヴァイオリン上達のために、田舎から大都会北京へ住むことにした父と息子の絆。

息子のために必死で働く父親の姿が泣かせる。そんな父親を思いやりながらも、少年らしい好奇心を持つ息子の姿が瑞々しい。
厭世的なヴァイオリン教師とやり取りや、浪費して刹那的に生きている女性への初恋などから、北京に生きている人々の生活も垣間見ることが出来て面白かった。

父親が故郷へ帰る姿に、息子にまつわる秘密が重なる回想が重なる瞬間にはグッときたのだ。なのに、その場面から続く、コンクールへの出場と父親を天秤にかけることになるラストシーンがいただけない。駅でのコンサートとコンクールをオーバラップさせるのも、曲が派手なせいで冷めてしまった。
そんなに盛り上げないで、しみじみと終わって欲しかったな。残念。(8/31鑑賞)

監督/脚本:陳凱歌
脚本:シュエ・シャオルー
撮影:キム・ヒョング
出演:
唐韻、劉佩琦、王志文、陳紅、陳凱歌、程前
和你在一起 2002

『盗馬賊』
馬泥棒ロールプの物語。

チベットを舞台にしていて、伝統的な儀式や風習がとても興味深い。
ロールプとその妻と息子3人の生活を淡々と描写する。彼は強盗を生業としながらも、仏への祈りは真剣で信仰との間に矛盾はなかった。しかし、業に従うように悲劇に見舞われてしまう。
『ココシリ』(感想はこちら)で目にしたよりも、更に荒涼とした風景が寒々しくて、ロールプ一家の悲劇の救いようのなさが迫ってきた。
ナレーションはなくて、台詞もほとんどない、ちょっと哲学的な趣すら感じてしまうような静かな映画だった。ちとツラかった。
わたしは『青い凧』で田荘荘監督を知ったので、作風の違いにびっくり。(9/2鑑賞)

監督:田荘荘
脚本:張鋭
撮影:侯咏、趙非
出演:才項仁増、旦技姫
盗馬賊 1985


『小さな中国のお針子』
フランスのベストセラー小説を、その著者が自ら映画化。文化大革命の時代、都会から「下放」された2人の若者とそこに住むお針子の切ない恋を描いている。

都会の青年2人が田舎の美しい少女を恋してしまうという構図は、それほど珍しいものではない。でも、西洋の本が禁書だった時代に、西洋の本を文盲の美少女に読み聞かせる、という構図にはそそられた。西洋の本によって喚起される自由への渇望や野心。髪の毛を切った少女の眼差しは強かった。
舞台となった山奥の村。切り立った崖が美しくて、フランス資本だと思うせいか、とてもロマンティックな雰囲気に感じられた。

時間を間違えて『山の郵便配達』の替わりに鑑賞した。お目当ての劉燁は、この作品にも出演していたのだった。お針子役の周迅は好みではなかったので、それほどハマれず。(9/8鑑賞)

監督/脚本/原作:ダイ・シージエ
撮影:ジャン=マリー・ドルージュ
出演:撮影:周迅、劉燁
BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE 2002 フランス

『駱駝の祥子』
老舎の名作を映画化。旧時代の北京を舞台に人力車夫・祥子が必死に生きる様子を描いている。

誰にでも好かれ、酒も煙草もやらないで、真面目に働く祥子なのに、ちっとも幸せになれないのだ。それでも、前半の描写はユーモラスな風味もあったのだけれど、ラストの救いのなさには呆然としてしまう。人生って辛いわ。

多分、撮影当時(1982)の北京を映しているだろう風景は、近代的に変わろうとしている現在の北京と比べてとても面白い。

実は、大学で中国語を専攻したのだけれど、新歓イヴェントで上映してくれた思い出の映画。かなり前に観たのですっかり忘れていたけれど、当時よりは面白く観ることができたという自信がある。幕切れのあまりの暗さに絶望的な気持ちになってしまった記憶があるのだ。初心だったものよ、、(9/9鑑賞)

監督/脚本:凌子風
原作:老舎
出演:張豊毅、斯琴高娃、殷新、顔彼徳
駱駝祥子 1982

『春の惑い』
1946年の蘇州が舞台。由緒ある戴家の若妻玉紋は、穏やかに暮らしていた。ある日、夫の旧友志忱が屋敷を訪ねてくる。彼は、玉紋の初恋の相手だった。

戴家には、玉紋とその夫礼言、礼言の妹と老いた使用人の4人のみが生活している。その静かではあるが、単調で退屈な生活は、突然現れた志忱によって、かき乱されていく。
ほとんど3人だけで展開する濃密な映画。微妙に揺れ動く人びとの気持ちが絡まり合うのを感じさせながら、誰の本心も明らかにされることはなかった。
蘇州の景色や、由緒ある旧家の家具調度、それぞれの衣装が、その濃密な空間を引き立てていたハズだと思う。
凝った構図やカメラワークが感じられるのに、フィルムの状態が悪いのか、映写状態が悪いのか、ピントが合っていないような、ボケた色合いに違和感を感じてしまって、とても残念だった。
エンド・クレジットで確認したところ、撮影は李屏賓。こんな映像ではないハズだと思いたい。
名作とされる費穆監督の『小城之春』(1948)のリメイク。オリジナルも観てみたいな。(9/9鑑賞)

監督:田壮壮
脚本:阿城
撮影:李屏賓
衣装:葉錦添
出演:胡靖釩、呉軍、辛柏青、葉小鏗、芦思思
小城之春 2002

最も感銘を受けたのは、『子供たちの王様』。そして、久々の『駱駝の祥子』にも。
2002年というのはあまり映画を観られなかった頃だったので、まとめて観ることができてうれしいです。
といっても、『古井戸』とか『五人少女天国行』とか『追憶の上海』とか、見逃したもの多数。フゥ。

それにしても、三百人劇場が閉館してしまうことが残念です。
今後、このような素晴らしい企画はどこで特集されるのでしょうか?

この劇場で1度も芝居を観たことがないので、1回くらいは行ってみたいと考えています。

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コメント

こんにちはー。
ああ、『子供たちの王様』はそんなによかったですかー。観ればよかったなぁ。初めは予定に入っていたのに、他の作品と入れ替わっちゃいました。無念。
『北京ヴァイオリン』はわたし的には、その年のベスト2だったほどに感動した作品です。ラストもヴァイオリンの高鳴りに合わせて号泣でした。いわいさんはそうでもなかったんですね。『お針子』もなかなか好きでした。『盗馬賊』というのもなんか興味深いですね。

かえるさん、こんにちはー♪
わたしの陳凱歌監督体験は、『覇王別姫』からで、『花の影』は良かったけど、その後はそれほどでもなかったのでした。
『黄色い大地』すら未見なわたしなのでしたが、『子供たちの王様』には感銘を受けました。
『北京ヴァイオリン』のラストには、わたしも泣きかけたのですよ。でも、ちょっとハマれずに残念でした。
『盗馬賊』は、面白いかどうかは別にして、興味深い映画でした。あまりにも説明がないところが潔よかったです。

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中国映画の全貌2006 で5作品を鑑賞しました。■『紅いコーリャン』(87) 監督:チャン・イーモウ(張藝謀)/出演:鞏俐、姜文 --20年代末、中国の山東省。18才になる九児は、ハンセン病を煩う造り酒屋の李大頭のもとに嫁ぐことになった。 コーリャン畑にうっとり。真っ赤なコーリャン酒に酔い心地。 ■『古井戸』 (87) 監督:ウー・ティエンミン(呉天明)/出演:張藝謀 --250年間も井戸を掘りつづけているが水の出ない村「老井」。井戸掘りをする青年・旺泉は、恋人がいながら、貧し... [続きを読む]

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