« “ソビエト映画回顧展06”のまとめ | トップページ | 『嫌われ松子の一生』 »

『カレンダー』ーアルメニア・フィルム・セレクションー

Calendar アルメニアの亡命者だった両親を持つアトム・エゴヤン監督が、アルメニアを取り上げた作品。

“国”という概念について、考えさせられた。

アルメニアの古い教会を写真に収めたカレンダーをつくるため、アルメニアに赴いた写真家と、通訳として同行した彼の妻。

写真家と妻の夫婦として出演しているのは、アトム・エゴヤン本人、彼の妻であり女優のアルシネ・カーンジャン。

外国で生まれ育ったアルメニア人である写真家は、アルメニア語を知らない。
ディアスポラという亡命アルメニア人移住の地で生まれ育ったアルメニア人である妻は、アルメニアの地を初めて踏んだ。
そして、アルメニアで生まれ育ったアルメニア人であるガイドを雇う。
写真家の知らないアルメニア語で語り合う妻とガイドが、次第に親密になっていく様子が、写真家が持つビデオカメラのファインダ越しに映し出される。

彼が理解できないアルメニアの言葉で会話する2人との距離感は、そのままアルメニアに対する距離感のように思える。
カレンダーの写真になった教会は、全く関係ない日本人のわたしですら心を動かされるほど、古くて美しくて、歴史を感じさせられる素晴らしい建築物。
自分がアルメニア人だと知っている写真家にとっても、“祖国”を強く意識させられる風景だったはずで、だからこそより“祖国”への距離を感じたのではないだろうか。

映画は、カレンダーをめくりながら進む。その写真を撮影した時にアルメニアで記録されたビデオカメラの映像と、現在の写真家の自宅での食事風景が交互に展開する。

写真家の自宅では、毎回違う女性が招かれて食事をする。食事が終わり、ワインがなくなると、女性は電話を借りたいと写真家に告げ、異国の言葉(ロシア語、ドイツ語、etc.)で話し始める。

その繰り返しの3回目位までは、毎回同じシークエンスに笑えるのだけれど、次第にそれが意図的に繰り返されていることに気づいて、どうして?という問いがふくらんだ。
自分が理解できない言葉で話す女性の会話に、聞き耳を立てる写真家は、妻への思いを確認しているのだろうか。それとも、アルメニアへの思いなのか。
生まれた国でもなく、言語も理解できない、アルメニアという国への思い。

不思議な感慨に浸らされた映画だった。

先週観た『ざくろの色』もそうだったけれど、アルメニアの風景が素晴らしく魅力的だった。
アルメニアはキリスト教を世界で最初に国教とした国なので、登場する教会は全て古い。そして、とても美しくて魅力的だった。
イコンのイメージも好きなので、いつか訪れてみたいと思わせられる、アルメニア。

狭い劇場は、満杯だった。大盛況の“アルメニア・フィルム・セレクション”。
是非是非、もう少し大きい劇場で企画して欲しい。

アップリンク・ファクトリーにて アルメニア・フィルム・セレクション

監督/脚本/撮影/編集:アトム・エゴヤン
撮影:ノライル・カスパー
出演:アルシネ・カーンジャン(ハンジャン)、アショット・アダミャン、アトム・エゴヤン

Calendar  1993  カナダ=アルメニア=ドイツ

« “ソビエト映画回顧展06”のまとめ | トップページ | 『嫌われ松子の一生』 »

コメント

こばはー。
あの教会のある風景はすばらしかったですよね。
ホントに私も行ってみたいですー。

かえるさん、こんばんはー♪
「ざくろの色」の教会も素晴らしかったです。
15年前に観た時にも、かなりハマりました。アルメニアの音楽にも。
アルメニアとか、グルジアとか、とても魅力を感じます。
キリスト教なんだけど、知っているものとは違っているようなところに、心惹かれます。
行きたいですよねー。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137003/11856229

この記事へのトラックバック一覧です: 『カレンダー』ーアルメニア・フィルム・セレクションー:

» アトム・エゴヤンの『カレンダー』(アルメニア・フィルム・セレクション) [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
好きな監督の1人であるアトム・エゴヤンの93年の作品を観ました。エゴヤンは、アルメニアの亡命者だった両親の長男としてエジプトのカイロに生まれ、のちにカナダへ移住しています。自らのルーツであるアルメニアを取り上げた2002年の『アララトの聖母』はすばらしい作品でした。トルコ政府がその事実を認めようとしないアルメニア人大量虐殺にスポットをあてたドラマで、物語中の映画撮影によってその場面が映像化されるという構成も感慨深く。 そして、本作でもそんなアルメニアにおもしろいアプローチをしていました。主人公... [続きを読む]

« “ソビエト映画回顧展06”のまとめ | トップページ | 『嫌われ松子の一生』 »

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

最近のトラックバック

つぶやき


2015年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

天気ブログパーツ