« 『ディセント』 | トップページ | 『星野道夫展「星のような物語」』 »

『悲情城市』ーBOW30映画祭ー

Sadness政治に翻弄される台湾の人々。その様が静かに淡々と描かれて、人々の悲しみが胸に響いてくる、素晴らしい映画。

1945年8月15日、日本統治から解放された日から、1949年12月に国民政府が台北を臨時首都に定めるまでの台湾の激動の歴史を、林家の人々を中心に描いている。

映し出される風景や建物が美しく、何となく懐かしさすら感じてしまった。日本に統治されていた51年という年月が、そう思わせるものを残したのだろうか。
会話の中に突然現れる日本語にハッとさせられてしまう。

国民政府と共にやってきた外省人と本省人を分ける言語の違い、特に日本語を話すかどうかという区別には、痛々しい思いを抱くしかない。

美しい映像が、人々の暮らしを静かに淡々と語る。その美しさの中に悲しみを感じつつ、その物語に最後まで引き込まれた。

林家の四人の息子たち。聾唖の四男、文清を演じる梁朝偉(トニー・レオン)の悲しみを湛えた佇まいが素晴らしい。最後の「家族写真」の表情が忘れられない。
親友の妹寛美と交わされる筆談によるやり取りが、無声映画のようでしみじみとさせられた。静かで清らかな愛が、叙情的で心に残る。

一族の父親が一人だけ残った息子と、いつもと同じように食事をするラストシーンが心に沁みた。この父親役の、李天祿の存在感がもの凄く印象的。
どんな悲劇が起ころうとも、それでも人々は暮らしていく。いろいろな思いを抱えながらも、生きていかなければならない。そんな切ない思いに心が震えた。

叙情的な音楽とともに、余韻に浸ることができる素晴らしいラストシーンだった。

見逃していた作品にスクリーンで出会えた喜びを感じることができて、本当に幸せだった。(BOW30映画祭では、そればっかり)

大学の時に、1年だけ習った台湾語。ほとんど忘れてしまったその響きが、少しだけ懐かしかった。
映画の舞台となった美しいロケ地は、観光地になっているらしい。いつか訪ねてみたいと思った。

シャンテシネにて BOW30映画祭

監督:侯孝賢(ホウ・シャオシエン)
脚本:呉念眞(ウー・ニェンツェン)、朱天文(チュー・ティエンウェン)
撮影:陳懐恩(チェン・ホァイエン)
出演:梁朝偉(トニー・レオン)、辛樹芬(シン・シューフェン)、李天祿(リー・ティエンルー)、陳松勇(チェン・ソンヨン)、高捷(カオ・ジエ)

悲情城市/A CITY OF SADNESS  1989 台湾

« 『ディセント』 | トップページ | 『星野道夫展「星のような物語」』 »

コメント

こんにちは♪
TBとコメント有難うございました!
終わった後しみじみといい映画だったなぁ~と思える素晴らしい作品でしたよね。
そうそう、何度か出てくる大家族の食事風景が同じように見えて、実は人数がだんだん減っていくのが切なかったです。 4人もいた息子達なのに、残されたのは・・。
当時の台湾の風景は日本とそっくりだったのかもしれませんね~ この映画鑑賞後に何本かホウ監督作品鑑賞したのですが、色んな時代の台湾を見る事が出来ました。 
九分へ行ってみたいですよね♪

マダムSさん、コメントありがとうございますー。
場内が明るくなってからも、ボーッと余韻に浸ってしまいました。素晴らしかったです。
大家族の食事風景を、同じアングルで映し出してました。
時間の経過とともに、変わっていくのが悲しみを深めていましたよね。
台湾は、台北にしか行ったことがないのです。映画のロケ地にも足をのばしたいでですー。

こんばんは。
そうですね、食卓は変わらないのに、取り巻く人が変わっていく。その描き方に監督の美学と言うか、そういうものを感じました。
ただ島の遠景を写しているだけなのに、その島の上で人間は日々懸命に生きていくしかないのだなあ、と思わせてくれました。
本当に、余韻にひたる、という感覚を呼び起こしてくれる作品でしたね。
これもスクリーンで観れて本当によかったです。

台湾は、繁体字なんですよね。繁体字の方が、個人的に好きです。どうしても簡体字にはなじめない…(って言うほど中国語自体できてないけど…)

わかばさん、こんばんは♪
本の整理をしていたら、侯孝賢監督のインタビュー記事を偶然見つけました。
もともとは、アンディ・ラウを使うつもりだったみたいです。香港での興行収入を考えて、香港のスターが欲しかったらしいのですが、眼付きが良いということで、トニー・レオンになったらしいです。
そう、何度も出てくる山上の俯瞰ショットも良かったですよね。美しくて、懐かしくて。
余韻に浸ってジーンと席に座っていたら、何か落とし物をしたらしいオネーサマたちがワイワイと騒ぎだしたので、慌てて外に出ました。じっくり余韻に浸らせて欲しかったです。

簡体字も慣れると良いですよ。あちらの本を読むと、漢字だらけで、とても圧迫感があるのです。ひらがなはどこ?って思ってしまいます。
画数が少ない方が、少しはみっしり感が薄れて良いのでした。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137003/11736905

この記事へのトラックバック一覧です: 『悲情城市』ーBOW30映画祭ー:

» トニー・レオン『悲情城市』~BOW30映画祭 [Brilliant Days ]
トニー・レオンの出世作と言う事で、 以前からずーっと気になっていた本作。 先日終了したBOW映画祭で念願の鑑賞が出来ました。 サントラ音楽を担当した「 S.E.N.S. 」が好きだった事もあり、 随分前にレンタルを探したのですが、見つからず。。 ようやく、こんな形で出会..... [続きを読む]

» 悲情城市 [working title -annex-]
悲情城市  BOW30映画祭にて鑑賞  初めて観ました。  歴史にあまり興味がなかった公開当時より、今観てよかったかもしれない。  約60年前という、遠すぎず、でももう近くはない過去に思いを馳せながら観ました。    物語は1945年、日本が連合国に無条件降伏を宣言する昭和天皇の玉音放送から始まります。  ちなみにこのナレーション(字幕)で、「日本の50年にわたる支配が終わった」と出ます。  その50年前までは、台湾は清が統治していました。さらにさかのぼると、オランダ時代があった... [続きを読む]

« 『ディセント』 | トップページ | 『星野道夫展「星のような物語」』 »

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

最近のトラックバック

つぶやき


2015年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

天気ブログパーツ