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『七月大歌舞伎』昼の部

泉鏡花特集の歌舞伎座へ。
昼の部最初の「夜叉ケ池」は、ワタクシ的には一番不安を感じていた演目だったのだけれど、今月の4本中では一番気に入ったかも。

一、「夜叉ケ池(やしゃがいけ)」
田舎に住んでいたので、坂東玉三郎初体験はこの映画だったように記憶している。
子供心にも玉三郎の百合が妖しくも美しく感じられて、もの凄く印象に残った。

この作品を上演すると知った時には、春猿が苦手なのと、この作品がどう歌舞伎になるのかということで、少々不安だった。

越前の夜叉ヶ池には龍神がすみ、里の人々は日に三度鐘をつく約束を交わした。それを一度でも怠れば、龍神によってこの里は水没してしまうという。
その伝説を信じて、鐘を撞き続けている萩原晃と百合の夫婦。
夜叉ケ池の主である白雪姫は自らの恋のために、里を水底に沈めようとする。

冒頭、老人姿の萩原夫妻が美しかった。春猿の百合は、銀髪がとても似合っていて、晃を里に引き止めてしまったのも納得できる美しさ。
晃の旧友である山沢が訪ねてきて、老人の変装を解いたのが残念だったほど。(「カツラだよ」と言ってカツラを取る場面は、ちょっと笑えた。)

妖怪パートが、とても楽しい。蟹の精霊と鯉の精霊。扮装も面白くて、雰囲気がよい。
夜叉ケ池の主である白雪姫とその眷属の登場も派手で素敵。白雪姫となった春猿は、恋に身を焦がす激しさもなかなかの迫力。
人間と交わした約束を守るように諌める万年姥役の吉弥が、素晴らしい。「人間ですら守っている約束を我々から破ることはできない」と妖怪の矜持を表す言葉の説得力でもって、舞台を魔の雰囲気で満たしていた。

鐘楼伝説を信じない村人たちの俗っぽさが醜い。対する萩原夫妻と山沢の理に適った清々しい様が、際立つ。
争いの中で百合が命を絶ち、晃が鐘木の綱を切ってしまうという悲劇には知ってはいても、引込まれた。
そして、大団円のラストは気持ちよい。満足の一幕だった。

百合/白雪姫:春猿、萩原晃:段治郎、湯尾峠の万年姥:吉弥、文学士山沢学円:右近

二、「海神別荘(かいじんべっそう)」
日生劇場で観た時の海老蔵(当時は新之助だったけど)は、美しかった。
今回は、歌舞伎座になってどう変わるのかと思っていたら、天野喜孝の美術といい、ほとんど変わっていないような印象。こうきましたかー、とちょっと驚く。
ハープ奏者が袖にいて、演奏しているし。
背景に、映像を使用しているのは「天守物語」と同じ。

海底にある琅カン殿の主人である公子が、陸から輿入れしてくる美女を待っている。女房に先導されてやってきた美女は、公子と対面する。

人間の欲や見栄などを蔑み、哀れむ海の住人たち。
まっすぐで凛々しい公子の心と、それにふさわしく美しい姿形。
美しい言葉の数々と、幻想的な風景にうっとりする舞台。
極楽なんかと一緒にしてはいけない、美しい海の底なのだ。

玉三郎の美女、海老蔵の公子という配役は、もうこれしかないでしょー。
キラキラの衣裳も美しく。

「人は自分で活きればいい、生命を保てばいい。」
なんて、清々しく心に響く言葉なんだろう。

三階から観ていて、黒潮騎士たちの動きが美しかった。

美女:玉三郎、公子:海老蔵、女房:笑三郎、沖の僧都:猿弥、博士:門之助

歌舞伎座にて

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