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『七月大歌舞伎』夜の部

七月の歌舞伎座は、坂東玉三郎を中心に、昼夜にわたって泉鏡花の作品を上演するというのが話題。
平日だというのに、三階席まで満席っぽい。いつもと客層が違うような気も。

一、「山吹(やまぶき)」
子爵夫人縫子は、嫁ぎ先の仕打ちに耐えられず、死ぬ覚悟で家を出てきて、追われる身。同じ宿に滞在中の洋画家島津正は、結婚前に縫子が密かに恋い焦がれていた相手。年老いたみすぼらしい人形使の辺栗藤次は、若い頃に美しい女性を苦しめ死なせた経験がある男。
縫子は、島津に対する恋がかなえられないことに絶望し、せめて藤次の望みをかなえてやろうと持ちかける。
藤次は、若き日の罪滅ぼしのために、自分を折檻してほしいと頼んだ。

山吹の花が咲く山の中、美しい女が人形使の老人を打擲する凄惨さ。島津が見ている前で、2人は魔の領域に踏み込んでいく。

みすぼらしい老人が打たれながらみせる歓喜は、罪が浄化される喜びと美しい人から打たれる喜びがないまぜになって、倒錯的。人形使の歌六と縫子の笑三郎から、感情の高ぶりが伝わってきた。

もう少し小さな劇場で上演したら満足できたと思う。歌舞伎座の空間は大き過ぎて、濃厚な雰囲気が薄まってしまって、ちょっと冷静に観てしまった。

縫子と藤次が腐った鯉を肴に杯を交わす時、通りかかる稚児たちが魔界への先導者のように思えて、ハッとさせられた。
藤次が連れていた静御前の人形は等身大で、その崇拝ぶりも不気味で、とても良かった。

それにしても、咳払いする人が多かったのはなぜ?妖しい雰囲気が気まずかったのだろうか。

辺栗藤次:歌六/島津正:段治郎/縫子:笑三郎

二、「天守物語(てんしゅものがたり)」
白鷺城の天守閣に住まう妖怪たちの長である富姫のもとに、妹分の亀姫が訪れて遊ぶ。そして、亀姫への土産に与えた鷹を探索するため天守に登ってきた姫川図書之助に、富姫は心を奪われてしまう。

背景のスクリーンに映し出される空模様が美しかった。刻々と変化する夕暮れなど。富姫や亀姫の到着を表す光の玉は、楽しかった。
そして、着物が眩しいほどキラキラしていたし、亀姫の簪が変わった形で綺麗で、とても豪華な気持ちになれた。

7年ぶりに観る富姫の玉三郎は、さすがの貫禄で素晴らしい。気高く誇り高く、鏡花の美しくも伝法な言葉使いが耳に心地よく、うっとりしてしまう。
亀姫は春猿で、やっぱり苦手だった。台詞を言う時に抑揚をつけ過ぎで、聞き取りにくいのだった。
富姫と亀姫が2人でいちゃいちゃするところも、それほど楽しめなかった。
海老蔵は、とても美しかった。これなら、富姫が一目惚れしてしまうのも納得。
真面目で悩ましい貴公子といった風情には、見惚れてしまった。
7年前と同じ薄役の吉弥はやはり素晴らしく、天守の世界を支えていれている。でも、笑三郎とニンが被るかも、とチラリと思った。

美しくも妖しい鏡花の世界に魅せられて、とても満足できた。

でもでも、客席は笑い過ぎ。「山吹」で溜め込んだ鬱憤を晴らしているかのようだった。
7年前にも笑いは出ていたと記憶しているけれど、これほどではなかったように思う。明らかに、笑うつもりになっている人がいた。きちんと世界に浸ろうよー。

こんなに笑われながらも、きっちり芝居している役者たちは素晴らしいと思えてしまった。

天守夫人富姫:玉三郎/姫川図書之助:海老蔵/近江之丞桃六:猿弥/奥女中薄:吉弥/亀姫:春猿/十文字ヶ原朱の盤坊:右近/茅野ヶ原舌長姥:門之助

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コメント

いわいさん、お久しぶりです!
「山吹」は確かにもっと小さい劇場の方が
ヨカッタと思います。
歌舞伎座だと大きすぎて、どうしても間延びした感じを受けました。
「天守物語」で観客が笑いすぎというのも全く同感!!
前半の亀姫とのイチャイチャならまだしも、
後半以降の急展開で、ドッと爆笑が起きたのはすごい違和感でしたもの。
玉三郎が「あなたを帰したくない」と言うたびに
なぜか客席がゲラゲラ笑うのには、ええっ!
って、かなり戸惑いました。

ゆっこさん、お久しぶり〜♪
「山吹」役者陣は、好演していたと思うのです。
もっと小さな劇場だったら、こってりと見せられた気がします。結構好きな世界なんですよね。魔に踏み込む瞬間って。
「天守物語」コントなのか?!と言いたくなるくらいに、大爆笑の連続でした。ワタクシ的には、玉さまの台詞回しに大感動だったので、なぜなのよーという気持ちで一杯でした。笑っていない人もたくさんいるとは思うんですけれどね。
これも、劇場が大きいからかもしれません。
銀座セゾン劇場(現ル テアトル銀座)で上演した時は、そんなに笑いが出ていなかったような。

こんばんは、何年も歌舞伎観ていないんですが、こちらのコメント拝見して、久々に観たくなりました。海老蔵をナマで観てみたいのです。最近ずっと気になってまして。絶対ナマの方がいいんだろうな、と。真剣にスケジュール帳と相談しようと思います。

わかばさん、こんばんはー♪
おぉ、歌舞伎に興味がおありですかっ!
歌舞伎ファンとしては、歌舞伎を紹介するのは使命のようなものです。(大げさですが)
海老蔵の舞台姿は、格別ですよー。わたしは、それほどファンではないのですが、それでも見惚れますもの。
ナマですよ、ナマ!舞台はナマではないと!
しばらく、歌舞伎座への出演はないと思うので、出演決定時には、お知らせしますねー。

どうもです。
はい、歌舞伎は基本的に好きなのですが、最近はどうしても優先順位が落ちてしまって。NHKの舞台中継とかをダラダラ観るくらいです。
海老蔵は、襲名披露の番組をTVで見て、ただならぬオーラが出ていると感じました。この人は観ておきたいなーと心を揺さぶられました。しかし行動を起こさず今日に至る(苦笑)
そのうちそのうちと思ってもきっかけがないので、ここで宣言してみました(笑)
歌舞伎ファンの方と対等に話せるほどの知識はないのですが、よかったらまたお話してくださいね。

わかばさん、こんばんはー。
舞台を観るのは、勢いが必要ですものね。
わたしは、TVの前に集中して座っていられない質なので、舞台中継は録画して終わりってかんじです。
海老蔵襲名番組アーカイブは、かなりあるかも。
TVでもオーラを感じたのだったら、是非劇場でも!
歌舞伎ファンといっても、わたしもそれほど知識がなくて恥ずかしいんですが。
それでは、またー。

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