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『13歳の夏に僕は生まれた』

13natsu 13歳の少年サンドロの夏。
たった数日間の体験で、大人へと変化していく少年を描いていて、苦いけれども瑞々しい。

北イタリアのブレシャに住む13歳の少年サンドロ。父親ブルーノは小さな工場の社長で、何不自由なく幸せに暮らしている。
父親とその友人とで地中海クルージングに出かけたサンドロは、真夜中の海に転落してしまい、通りがかった密航船に救出される。

映画の冒頭、壊れた電話に向かって、大声で同じ言葉を語り続ける壊れた風な黒人のおじさんを凝視するサンドロの瞳に引込まれた。大人たちが遠巻きに見守る中、そのおじさんに近づいて話しかけるサンドロ。結局は、警官たちがおじさんを取り押さえてしまったけれど、繰り返された言葉“ソキ、オボタミ、オコキ……”が、サンドロの心に刻み付けられる。学校のアフリカ系の友だちに意味を聞いてもわからない。帰宅してから、工場で働く黒人の従業員に聞いてもわからない。サンドロの周囲には、違う人種の人々が存在し、そのことを自然なこととして受け入れている素直な少年だということがわかって、微笑ましい。

そして地中海クルーズ。小さな工場だし母親も働いているのだから、それほど金持ちではないと思っていたけれど、レンタルではなく1人ずつの個室があるような立派なヨット。
転落したサンドロが助けられた密航船は、多国籍の人々で足の踏み場もないほど満載だし食糧も水も乏しいし汚いしで、立派なヨットとのギャップが凄い。

そんな地獄のような状況で、ルーマニアの少年ラドゥと、その妹アリーナに救われたサンドロ。イタリアに生還した後でも、移民収容センタに留まったり、迎えに来た両親に「彼らを養子にして」と頼んだり、と主張をするようになる彼の変化が頼もしい。
それでも、驚くほどたくさんの国から押し寄せてくる難民の全てを受け入れることは不可能だ、という現実は厳しい。たった13歳のサンドロが両親に頼るしかないということも現実なのだ。

サンドロは強烈に苦い体験をして少し大人になったけれど、逃げることなくそれを受け入れていることが素晴らしい。
これからどうするのか突き放したラストシーンには、サンドロの切なく痛々しい気持ちを共有し、行く末を考えさせられた。

冒頭のトム・ウェイツの歌声に苦い叙情を感じ、『ピアノ・レッスン』の“TO THE EDGE OF THE EARTH”に、未知の世界に分け入っていく期待と畏れを感じた。

サンドロの心に刻み付けられた言葉“ソキ、オボタミ、オコキ…”「生まれたからには逃げも隠れもできない」。これが原題。
とても印象的なフレーズだった。

Bunkamura ル・シネマにて(公式サイト

監督/脚本:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
脚本:サンドロ・ぺトラリア、ステファノ・ルッリ
原作:マリア・パーチェ・オッティエーリ
「生まれたからには逃げも隠れもできないー埋もれた民族をめぐる旅」
出演:マッテオ・ガドラ、アレッシオ・ボーニ、ミケーラ・チェスコン、エスター・ハザン、ヴラド・アレクサンドル・トーマ

QUANDO SEI NATO NON PUOI PIU NASCONDERTI  2005 イタリア

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コメント

こんにちは。
ご覧になれてよかったですー。
この監督の作品はやっぱり力強いです。
最初は彼を助けるのはルーマニア人という設定じゃなかったらしいですね。
ルーマニアの若い青年だったら、不法移民するより母国でそれなりの仕事が見つかるんじゃないかと思ってしまった私。普通陸路で入ると思うし。・・・という一点の引っ掛かりを除けば、とても気に入った映画ですー。

かえるさん、こんにちは。
最終週の木曜日で、かなり混んでいました。
最初の設定はルーマニア人ではなかったのですか。
イタリア入国の場面で、パキスタンとかインドとかモロッコとか、なぜにギリシアから?という国の人々がたくさんいたので、あまり疑問に思っていませんでした。
サンドロは密航船の上ではクルド人で納得してもらえたし、イタリアに着いてからはイタリア人だと自己申告していたし、人種ってそれほど見た目でわかるわけではないんだなー、という感想も持ちました。

いわいさん、こんにちわー。
おお!ご覧になったのですねぇ。
私も、地中海クルーズに出るより前のシーン。
“ソキ、オボタミ、オコキ……”を繰り返す黒人のオジサンとのシーンが印象的でした。
とても真っ直ぐで好奇心旺盛な少年だなぁと、ココで一気にサンドロ君の魅力に惹きこまれたとでも言いますか。
ラストはなかなかシリアスな締めでしたが、サンドロ君ならきっと強く逞しく生きていってくれるだろうなどど思いましたし。
生まれたからには逃げも隠れもできない」
とても心に強く響く言葉ですね。

隣の評論家さん、こんばんは。
黒人のおじさんとのシーンは、サンドロの性格を表していてましたよね。確かにそこで、彼の魅力に惹き込まれました。
偏見を持たない彼の性格が好ましかったです。
あの言葉は、何回か出てきましたけれど、その度にとても印象に残りました。
サンドロ君と違って、原語では覚えられませんでしたけれど。

ロビィに貼ってあった記事のなかで、ラストシーンは観客に委ねた、というようなことを監督が語っていました。
確かに、いろいろ考えさせられて、余計心に残る作品になったと思います。

子供って適応能力が著しく長けてますよね~
どんな環境下においてもたくましく生きぬいていけるし・・・
大人よりもっと本能的な部分で生きているのだとも思ってます。
ラストも突き放した様で、実は私達見る側に寄り添っていたような気持ちにさせてくれたのは、とても感慨深いです。
映像はイタリア独特の明るさがあったようにおもいました。

charlotteさん、こんにちは♪
子供がたくましく生き抜いていけるというのは、希望があって素晴らしいことですよね。
サンドロはあの兄妹に裏切られたけれど、人を信じる気持ちを失っていないし、アリーナを助けたいという気持ちで行動しているところが、素晴らしかったです。
あのラストは、感慨深いですよね。監督に委ねられたことで、わたしたちの心にとても残るものになったと思います。
映像には、イタリアの陽光が感じられて、それも救いになっていたように思いました。

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