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『ドッグ・デイズ』

Dogdays 人間というものの醜さを、これでもかというくらいに赤裸々に描いて、衝撃的。

過激な群像劇から、目を離すことができなかった。

同じ形の家々が並ぶウィーン郊外の新興住宅地に暮らす人々の、1年中で最も暑い日々。

映倫もここまで許すようになったのか、と驚いてしまうほどの強烈な映像は、ここまで生々しいと、エロティックから離れてしまって、おぞましさだけが残る。
秘密のクラブでの過激なプレイは、退廃とか享楽を越えて、即物的な処理のように思えた。性行為に快感を見出せない、乾いた心。

年下の恋人を持つ女教師。恋人ヴィケールは男友だちのラッキーを連れてきて、乱暴で執拗な嫌がらせをする。しかし、その行為を反省したラッキーが、ヴィケールを銃で脅して、女教師に謝らせようとする行為も異常なほどに執拗。女教師の「それでも愛している」という言葉に傷ついて泣きじゃくるラッキー。
ラッキーの正義感に基づいたような行為にも、正当性を与えないところが徹底的。

ヒッチハイクを繰り返して、車中で「かかりやすい病気」や「人気のある体位」などのベストテンをひたすらしゃべる続け、人々に不快感を与えるアナには、残酷なお仕置きが待っている。この行為にも、正当性は全くない。

愛犬と暮らす偏屈な老人ヴァルターの、50回目の結婚記念日に、亡き妻の代わりに中年家政婦に妻のドレスを着させて、ストリップをさせる場面は、意外にも微笑ましかった。そのストリップの観客でもあった愛犬が殺されてしまった時のヴァルターの言葉は、印象的だ。
「人間が一番恐ろしい」のは、確かなこと。

シアター・イメージフォーラムは、なぜか年配の客が多かった。近くに座った年配の男性の飴をなめる音と咳払い、そして足をトントンと踏む音が、とても気になった。とても暑い日だったこともあり、映画の世界が現実に繋がって感じられて、恐ろしかった。

おまけ)
“ドッグ・デイズ”というのは、おおいぬ座の“シリウス”が天頂に輝く1年中で最も暑い日々のこと。
と、説明があるけれど、おおいぬ座は冬の星座なので、ちょっと不思議になって調べてみた。
おおいぬ座(the Dog)の1等星“シリウス(the Dog Star)”は、恒星のなかでは最も明るい星。おおいぬ座は冬の星座で、夏は太陽と一緒に昼の空に輝いている。(当然、見ることはできない。)“シリウス”=“ドッグ・スター”が太陽と共にあるので、更に暑さを増すと、考えられていたことから、“ドッグ・デイズ”と呼ぶようになったということらしい。

シアター・イメージフォーラムにて(公式サイト

監督/脚本:ウルリヒ・ザイドル
出演:マリア・ホーフステッター、アルフレート・ムルヴァ、エーリヒ・フィンシェス、ゲルティ・レーナー

Hundstage/Dog Days  2001 オーストリア

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コメント

いわいさん、こんにちは!
いやー、これは何とも不快な作品でしたね。
>秘密のクラブでの過激なプレイ
あのシーンを観ていて、何だかヘビの大群が一箇所でニョロニョロとのたくっているのを見せられてるような嫌さを感じてしまいました。
人間の裸って結構気持ち悪いものなんですね(笑)。
印象度では今年1、2を争う怪作であります。

あ、今回もTBがうまくゆかず・・・です。
スンマセン・・・。

Kenさん、こんにちは♪
>何だかヘビの大群が一箇所でニョロニョロとのたくっているのを見せられてるような
生理的な嫌悪感ですよね。それも感じつつ、「映倫は?」とか「この人たちは何者?」という思いの方が強かったです。
裸って、グロテスクですね。裸を美しく、色っぽく撮るのは、難しいんだと思いました。それに、彼らの裸を美しく撮影するのは至難の技だとも。
かなり不快だけれど、現実なんてそんなものかも、と思わせられてしまいました。おそろしやー。

トラックバックの件は、もう気になさらないでくださいね。
システムのせいだと思いますけど、どうなっているのでしょう。

こんにちはー。
もー本当に、いまだかつてないくらいの強烈なショットでした。
私は、「人間が一番恐ろしい」ということに、自分の愛犬が殺されて初めて気づくってことがシニカルに感じました。ああ、恐ろしいー。
おおいぬ座って、見えないんですね。なるほど!

かえるさん、こんにちはー。
R-18作品はそれなりにいろいろ観ているけれど、これほど強烈なのは本当に凄いですよね。
ヴァルターは、人間を嫌いではあったけれど、恐ろしいとは思っていなかったのでしょう。愛犬を殺されてしまって、更に嫌な老人にならないと良いのですけれど。恐ろしやー。

天体好きなので、天頂に輝くって違うだろー、と思っていたのです。オーストリアは、日本よりも緯度は高いはずだし。
映画ではこの言葉は出てきませんでしたけれど、“暑い日々”だということを連想させるタイトルなのですよね。日本で言えば、何なのでしょう。
気候についての言葉って文化だと思うので、“Dog Days"という言葉を覚えられてよかったです。

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神経を逆撫でする強烈な映像とエピソード。 安らぎを与えない張りつめた空気感とそこにかいま見えるリアリティが秀逸。 ウィーン郊外の住宅地に住む人々の1年中で最も熱い数日間を描く。強烈な映像があると、すごいことになっていると、先に観た人たちが言葉にしていたのだけど、ああ本当に、ボカシなしでこういうのアリなんだーとのけぞってしまうショットが登場。R-18指定なのは当然のことながら、こういう禁断ショットにはそうそうお目にかかれない。官能を追求してのセクシャルなシーンというのではもちろんなく、おぞまし... [続きを読む]

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