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『ナイロビの蜂』

Theconstantgardenerこれはまぎれもないラヴストーリィ。同時に、骨太なサスペンスでもあった。

英国外務省一等書記官ジャスティンの妻テッサが何者かに殺された。

突然の訃報を聞いたジャスティンが回想するテッサとの出会い。
外交官のジャスティンが上司の代理で講演した際、激しく攻撃してきたのが女性活動家テッサだった。貴族的に洗練されたジャスティンと、野性的な生命力に溢れるテッサ。立場や性格などが対極にある2人ゆえに、恋に落ちるのは必然のように思える。ジャスティンの回想だからなのか、テッサはまぶしく輝いていて本当に美しい。

テッサの死に疑問を感じ、その死の真相を調査していくジャスティン。彼は、テッサが巻き込まれていた陰謀について知っていく。アフリカで横行する薬物実験、官僚と大手製薬会社との癒着など、国際的な陰謀はあまりにも巨大で、命の危険を伴うものだった。
ジャスティンに知らせないことによって、彼を守っていたテッサの愛。こういう形の愛もあるということに感銘を受ける。

テッサの行動をたどっていくうちに、彼女への愛を再発見し、彼女の魂が乗り移ったかのように変わっていくジャスティンの姿も感動的。ジャスティンとともにテッサに恋をしてしまうほどだ。
「目の前の1人を助けても、他の何万もの人々を助けることはできない」と正論を吐いていたジャスティンが、必死に少年を助けようとする情熱的な姿には、その後の少年の行動も含めて、心を打たれずにはいられなかった。

ケニアには1992年と2001年と、2回行ったことがある。
1992年の時には、ナイロビに泊まって、街も歩いたけれど、テッサが行ったスラムの光景は体験したことはない。あの路地の向こうにあの景色が広がっているのだと思って、感慨深かった。2001年に行った時のほうが、治安は悪化していたので、まだまだ問題が多い国なのだろう。
埃っぽい街並や、人々の表情を生き生きと捉えた映像が素晴らしかったし、トゥルカナ湖の風景をはじめ、大自然の映像も美しかった。それに比べて、ヨーロッパの寒々しさは対照的。

レイフ・ファインズの貴族的な佇まいのジャスティンと、レイチェル・ワイズの情熱的なテッサは、見事としか言いようがない。静と動、洗練と野生、冷と暖。正反対な雰囲気が自然に画面から滲み出ていた。
レイチェル・ワイズの(多分本物の)妊婦姿にも、生命力を感じた。

音楽もとても印象的で、耳に残る。

丸の内プラゼールにて(公式サイト

監督:フェルナンド・メイレレス
脚本:ジェフリー・ケイン
原作:ジョン・ル・カレ
撮影:セザール・シャローン
音楽:アルベルト・イグレシアス
出演:レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ビル・ナイ、ユベール・クンデ、ダニー・ヒューストン、ピート・ポスルスウェイト

The Constant Gardener  2005  アメリカ

 

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コメント

こんばんは。
なんでも胸の内をさらけ出すのが愛ではないとも思います。
実際のテッサという人物像は、もっと心の中で葛藤があるはずなんだと思うのです。
映画でもその辺を見たかった為に、少し期待したものとは違いました。
見せない愛というものの奥には、意思の強さであったりとか、自分を出せない一見弱さであるような強さが見え隠れします。だからこそ死産を乗り越えて人の為に尽くしたくもなる強さが顕在するはずなんです。
こういうところのテッサという人物像を明確に見せて欲しかったわけで。
女性にとって死産とはあまりにも残酷な仕打ちのはずで。・・・と経験者は語る。
また読ませてくださいね~♪

charlotteさん、こんばんは♪
ジャスティンの回想という形式で、しかも、彼はテッサが生存中には彼女が行っていたことをほとんど知らされていなかったのだから、葛藤までを描くのは難しいのだと思います。
だからこそ、ジャスティンが追いかけた過去のテッサは美しかったのだろうけれど。
確かに、死産を乗り越えて、というのは感じられませんでした。アフリカの子供たちに囲まれて、幸せそうなテッサのほうが印象的です。
経験者の視点は、ひと味違いますね。
ありがとうございました♪

ドモドモー♪
TB、コメントをありがとうございました。

いわいさん、2回も訪れたことがあるのですねー
なかなかあそこまで行く人は居ないと思うので、羨ましいです、良い体験ですね。
この映画、ラブ・ストーリーと社会派ドラマ、二つの側面でずしん・・・と来ますよね。
特に、製薬会社云々の話は実際にも起こりうる(いや起こっている?)ことなので、何だか背筋がぞっとしますよね。
素晴しい映画だと思いました。

Puffさん、こんばんはー♪
ケニアは、素晴らしいところですよ。
遠くないなら、毎年でも行きたいくらいです。
とにかく遠いんですよね。
で、映画は素晴らしかったですねー。
製薬会社絡みの件は、多分起こっていることなのだろうと思って、暗い気持ちになりましたけれど。
そういう社会派の部分を、ラヴとがっちり組み合わせてしまったことが凄いと思いました。

こんにちは。
いくつもの死が描かれているのに、生命力に満ちた映画でしたね。

ナイロビの治安は悪化したのですねぇ・・・。
街に行っていない私のナイロビの思い出といったら、帰る前のランチで立ち寄った日本食料理屋とか行く前にトイレ休憩で寄ったガソリンスタンドだったかのトイレのトレスポ並の汚さとかです。
まずはケニアの汚職がなくなるとよいのですが・・・。
アフリカはまた行きたいっす。

かえるさん、じゃんぼー。
本当に、素晴らしい映画でしたね。

かえるさんのナイロビの思い出は、あまり良くないんですね。
ナイロビは本当に都会だけれど、それでも治安が悪くて外歩きが気ままにできない、というのは悲しいことです。
わたしの思い出も、緊張して歩いたということなので、それほど良くないです。国立公園と違ってナイロビは蒸し暑くて、それでも人々の多くがきちんとしたスーツを着ていたことが印象的でした。
本当に、世界中から汚職が無くなってほしいです。
アフリカには、また行きますよー。
今度は、タンザニアかナミビアをねらってます。

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