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『夜よ、こんにちは』

Buongiornonotteモロ元首相誘拐暗殺事件という重い素材を扱っているのに、何なのだろう、この軽やかさは。

1978年のローマ。「赤い旅団」は、アルド・モロ元首相を誘拐した。

旅団のメンバーが、監禁したモロと生活するアパートが大半の舞台。紅一点のメンバーであるキアラの視点で、物語は描かれる。

キアラは言葉ではあまり語らないけれど、その輝く黒い瞳を通して感じられるリアリティは、アパートで一緒に暮らしているような気持ちにさせた。

カーテン越しに見る外の風景。鳥かごで飼っている鳥。本棚を改造した小さな戸から出入りする隠し小部屋。交代で見張りを続ける3人の男。
外の音や、訪問者に対して緊張を強いられる生活。

キアラは、テレビのニュースでモロ誘拐の成功を知り、喜んだ。
しかし、テレビは、モロ誘拐に際して殉死した護衛官5人も映す。その後、彼らの葬式も映す。
新聞やニュースで世間から支持されていないことを知り、苛立つ男たち。
キアラは、モロと直接話すことはなく、覗き穴からモロの姿を見つめる。モロの態度は、落ち着いて静かだ。

親族との昼食会の時に歌われた“パルチザンの歌”が印象的だった。出席者全員での合唱、通りがかった結婚式のパーティも唱和する。
キアラは、旅団をパルチザンと重ねていたのだろうけれど、現実は違うことに気づき、悩み始める。

キアラの夢想する切ないラストシーンは、選択できたかもしれない希望を描いて、心に残った。

PINK FLOYDの"Shine On You Crazy Diamond"が、細切れで挿入されて緊張感が高まった。
そして、キアラが夢を見ている時には、シューベルトの“楽興の時”が軽やかに流れ、ホッとさせる。

ベルトルッチと並ぶというイタリア映画界の巨匠マルコ・ベロッキオ監督の瑞々しい作品だった。

ユーロスペースにて(公式サイト

監督/脚本:マルコ・ベロッキオ
出演:マヤ・サンサ、ルイジ・ロ・カーショ、ロベルト・ヘルリツカ、ピエル・ジョルジョ・ベロッキオ、パオロ・ブリグリア、ジョヴァンニ・カルカーニョ

Buongiorno, notte/ Good Morning, Night  2003  イタリア

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コメント

左よりであるマルコ・ベロッキオが描いたからこそ、
リアリティがあると感じました。
(後付けの理由ですがw)
実際にあったこととして覆せない現実がそこにあり、
あのラストシーンははかない夢として非常に弱いのですが、
だからこそ余計に沁み、希望が切なかったです。

現象さん、こんにちは。
マルコ・ベロッキオ監督は左よりなのですか。ふ〜ん。
思想を背景にしたこういう事件を描くことは、ある程度の時間が経過して、整理しないとできないことなのだと思います。
キアラの夢想する希望は、とても切なかったですよね。

こんにちは。ちょっとご無沙汰ですね。
この作品、おっしゃるように重いようでどことなく清々しくもありました。
キアラの願望が事実であればよかったのにと願ったりもし、またこういう女性の存在自体が希望と感じます。
音楽の使われ方がとても上手くて印象的でしたね♪

TBがどうも入りません(T_T)
また出直しますね♪

charlotteさん、こんばんは♪
>こういう女性の存在自体が希望と感じます。
そうですよね。
キアラの視点で描いたからこそ、こんな奥深い感慨を持つことができたのだと思います。
キアラの美しい瞳が印象的です。
音楽の使い方は、本当に上手いと思います。
特に、シューベルト!
この曲、軽やかでとても好きなのです。明るくて、希望を感じさせてくれました。

トラックバックの件は、お気になさらずにー。
gooさんのところと相性が悪いみたいです。
ご迷惑をおかけします。

こんにちは、のって。
マルコ・ベロッキオという監督の名前は初めて知ったのですが、ベルトルッチと並ぶというのも納得です。
イタリア映画祭で観た作品アレコレよりもこちらの方が心に残る秀作でした。
イタリアものは、『心の鍵』もよかったし。
やはり監督で選ぶのが手堅いのでしょうか。
『13歳の夏に~』の上映回数が減ってしまうから早く見に行かなくては。
『輝ける青春』、『ベッピーノの百歩』もよかったですよー。

心の鍵×→家の鍵○

秋のヴィスコンティ特集も楽しみですー。
その前に、ドイツ映画祭やらBOWやらロシアやら・・

かえるさん、ぼんじょるのー。
マルコ・ベロッキオ監督の名前は、わたしも初めて知りました。『輝ける青春』も観たいです。
巨匠の作品と言われて想像していたものよりも、軽やかで瑞々しかったことに驚きました。それも、監督の力あればこそなのですよね。プロット的には起伏が少ないし、場所もほとんどアパートの中なのに、集中して観ることができました。

最近、イタリア映画は観ていなかった気がします。
『家の鍵』は、見逃してしまったしー。岩波ホールって、上映期間が長いと思って安心して見逃すことが多いのです。
ヴィスコンティ特集は楽しみですねー。
ドイツ映画祭はパスするつもりですが、BOWとロシア(ソヴィエト映画回顧展ですよね)は、スケジューリングして、待ち望んでおります。大変だー。

ヴォナセ~ラ!
先ほどは拙ブログにご訪問有難う御座いました♪
TBもコメントも感謝です。 こちらからもと思いましたが上手く乗らないようですので、コメントのみで失礼しますね(^^*)
ヒロインが自分が信じているものがぐらついてきた時の心の揺れ、とても共感出来ましたよね。
監督は大御所と言われているわりには、日本ではあまり知られていませんでしたよねー私も初めてですよ。 イタリア映画、掘り出し物も多いので少しずつ探して観て行こうと思ってますので、これからも情報交換致しましょう!どうぞよろしく♪

マダムSさん、いらっしゃいませ、こんにちは!
キアラの黒く美しい瞳に引き込まれました。
共感しながら、一緒に夢をみたような気がします。
大御所と紹介されて、知らなかったよー、と思いました。
この作品を観て、とても感銘をうけました。
久しぶりのイタリア映画で、大当たりでした。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

こんばんは、初めまして。
今年に入ってから実話を基にした社会派映画を見る機会が多いのですが、本作はそれらとはかなり毛色の異なる作品だったと思います。ラストのカットはビックリしてしまいました。
パルチザンと旅団を重ねた描写、私も興味深く観ておりました。老人たちが唱和するあのような光景は日本だと考えられないものだと思われ、なんだか新鮮な気分でした。

*TBが送信できなかったようなので記事のURLを入れておきました。

朱雀門さん、初めまして。こんばんは♪
今年は、社会派ドラマが多い年ですね。そして、本作は、確かに毛色が違うと思います。
ラストのカットで何かあることは、なんとなく知っていたのですが、それでもビックリさせられました。
老人たちが誇りを持って歌い、そこに若者たちも唱和するという光景は、日本では考えられませんよね。
後味が悪くない映画でしたけれど、いろいろと考えさせられました。

記事のURLを入れてくださってありがとうございます。
これからお邪魔しますね。

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1978年、ローマ・・・偽りの夫婦同士であるキアラとそのフィアンセ。極左武装集団「赤い旅団」の一員である二人は見せ掛けはごく普通の夫婦であるが、裏ではモロ元首相を匿っている。 イタリアの最大な歴史的事件を、女性メンバーの視点からも描く大胆さも併せ持って描いていた。 史実の裏には一人の女性として、一人の人間としての葛藤があり、自由への渇望と理想への想いがあった。 残酷な悲劇を史実から離れて、独自の解釈で暴力のむなしさ... [続きを読む]

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