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『ぼくを葬(おく)る』

Letempsquiresteフランソワ・オゾン監督が描く、“自分自身の死”。
余命わずかと宣告されたロマンが死を受け入れていく姿を静かに繊細に映し出していく。

主人公のロマンは、才能を認められた若き写真家。美しく魅力的な容姿とその自信に満ちた仕事ぶりとからは、ぎらぎらと生命力が輝いて眩しいほど。そんな彼が、突然、余命3ヶ月だと宣告される。
あまり折り合いのよくない両親と姉には病気のことを秘密にし、嫌な態度を取ってしまう。同居している同性の恋人には一方的に別れを告げる。自分勝手かもしれないけれど、それも1人で死を迎えようとする彼の選択。
孤独な彼が心を許しているのは、自分とよく似ている祖母だけ。彼女の家にいき、秘密を打ち明けるロマン。
祖母とロマンとの会話は全てが心に刻みつけたい素晴らしさ。時には家族を犠牲にして、自分自身を大切に生きてきた女性の凛とした佇まい。そんな彼女がロマンに向ける愛情は、包み込むように静かなもの。
「今夜、あなたと死にたい」その言葉には、胸を鋭く衝かれた。

偶然出会った女性からの、唐突な願い事。その願いを叶えるための行為は、厳粛な儀式のようだった。
ゲイである彼がこの世に残すことがないはずだったもの。その存在を考えることは、彼に希望を与えたのだろうか。

あれほど生命力に満ちて輝いていたロマンが、どんどん衰弱していく姿を痛々しくも見事にみせてくれた、メルヴィル・プポーが素晴らしくも素敵。
そして、祖母ローラを演じるジャンヌ・モローは、もう魂を揺さぶられるような素晴らしさ。

死をみつめることによって、生きることの意味が浮き彫りになっていく。
写真家だった彼が、デジカメなどで愛するものたちをカメラに収めるロマンの姿が印象的。シャッタを切ることは、心に刻みつける行為なのだろう。
ラストでは、生に対する愛おしさがあふれるロマンの表情がいつまでも心に残った。

“死についての3部作”第2章。
第1章の『まぼろし』は、5月20日(土)21日(日)に、東京日仏学院の“ジャンークロード・ギゲとともに”特集で上映される。実は未見なので、観に行くつもり。

追記)
5/21(日)に無事鑑賞。感想はこちら

シャンテシネにて(公式サイト

監督/脚本:フランソワ・オゾン
撮影監督:ジャンヌ・ラポワリー
音楽:フィリップ・ロンビ
出演:メルビル・プポー、ジャンヌ・モロー、バレリア・ブルーニ・テデスキ、ダニエル・デュヴァル、マリー・リヴィエール、クリスチャン・センゲワルト、ルイーズ=アン・ヒッポー、アンリ・ド・ロルム、ウォルター・パガノ、ウゴ・スーザン・トラベルシ

Le temps qui reste/TIME TO LEAVE  2005  フランス

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コメント

ううっ、、またしてもTBが入りませんでした。涙・・・

心に静かに伝わるものがありましたねー・・・
ロマン、最初はちと高慢な感じもするカメラマンでしたけど、徐々に死を受け止めて行く姿が堪らなく切なく哀しかったです。
哀しい映画だけれど、でも、不思議と穏やかに感じましたね。

いわいさん、「まぼろし」は未見ですかー
ワタクシは激混みのシネマライズで観ました。苦笑
オゾン監督の中では、何よりもこの映画が一番好きかもです。
いわいさんの感想が楽しみですーー

この映画、とっても興味はあるのですが
今の私には切実すぎて、見るのが辛いかなぁと
ためらっています。(^^ゞ
でも、いわいさんの感想を読むと、素敵な映画みたいですね。
ジャンヌ・モローも出てるしなぁ、うーん、どうしよう。

わたし的にはひょっとして本作がオゾン作品のmyベストかも。
「まぼろし」も素晴らしいのですが、彼女の境遇が私には遠いので実感しにくかったのかも。
ランプリングも最高です。

Puffさん、こんにちはー♪
>哀しい映画だけれど、でも、不思議と穏やかに感じましたね。
そうでしたよね。どんどん穏やかに変わっていくロマンの表情や雰囲気に包み込まれるように感じました。

そうなんですよー。『まぼろし』未見です。ダメじゃん。
ワタクシ的、オゾン作品ベスト1は、今のところ『クリミナル・ラヴァーズ』なんです。妖しい森の雰囲気がお気に入りです。

ゆっこさん、こんにちは♪
心に残る素晴らしい映画でしたけれど。どうでしょう。
この映画で描いているのは、“自分自身の死”なので、ひたすら1人称です。
「死」についてのあからさまな描写はないと思います。オゾンなので。
でもなー、映像は、ささいなことでも感情を刺激することがあるので危険なんですよね。(経験あり)
気になる方には、是非とお勧めしたい映画ですけど。

かえるさん、こんにちは♪
おぉ、かえるさんのオゾン作品myベストかもなのですね。
静かに静かに心に沁みてくる映画でした。
オゾンって、作品毎に作風が違っていて、なのにオゾン節でひねりがきいているところが素晴らしいですよね。
わたしは、今のところ『クリミナル・ラヴァーズ』が好きなのでした。

いわいさん、こんにちわ。
ジャンヌ・モロー、素晴らしかったですね。この作品は、『死』を取り上げながらも、その先に希望の光を見出すして希望の光が差し込んでいた気がしました。かなりの高評価です。

隣の評論家さん、こんにちは。
コメントとトラックバックをありがとうございます。
ジャンヌ・モローは本当に素晴らしかったです。
『死』を描くことは、「生」を描くことでもありますよね。
希望の光ですか。わたしは、希望というよりは、肯定だと感じました。
世界を優しく受け入れることができるようになったロマンが、美しくも哀しかったです。

この作品へもTB&コメント有難う♪
ほんとに素晴らしい作品。俳優も良かったですね。
彼が撮った写真を残された家族は観る事が出来たんだろうかとか・・色々考えてしまいました。
ゲイである監督が、子供に妙にこだわるあたり、映画の主人公に反映させているのかな?とも思えますよね・・
その後、「まぼろし」はご覧になれましたか?(^^)b


マダムSさん、こんにちは♪
>彼が撮った写真を残された家族は観る事が出来たんだろうか
心に刻みつけるためにシャッタを押していると思った(ロマンに感情移入してますね)ので、撮られた写真のことをあまり考えていませんでした。
家族は写真をみることができたら、ロマンの思いを少しでも理解することができるかもしれませんよね。
あれだけ優しい表情で撮っていた写真だから、伝わるものはあるはずだと思います。
主人公がゲイという設定だから、反映させていると思ってしまいますよねー。
「まぼろし」は、観ることができました。この映画とはかなり趣が異なっていて、面白かったです。
記事に感想リンクを追記しました。

こんにちは♪
TBありがとうございました。
「まぼろし」よりもこちらの方が個人的には好きでした。
シャーロットといいジャンヌといい、フランス人女優は年をとってもなお輝いているし、また、それを生かすのがオゾン監督は上手ですよね。
確執のあったお姉さん(と子供)を撮った時の表情なんてやさしかったですね~。
海へ向かうシークエンスは心に残ります。

ミチさん、こんばんはー。
『まぼろし』は、感情移入を拒否しているように思えました。悲しみを想像するしかなくて、それが深い余韻に繋がりました。
こちらは、一人称だからロマンに気持ちが寄り添い易かった気がします。
>確執のあったお姉さん(と子供)を撮った時の表情
公園でこっそり後ろにいた場面ですね。
あれは、ジーンときました。
ラストのシークエンスも沁みました。波の音が静かで余韻もありましたね。

はじまりが海で、海で終わる。
ってな映画(どんな映画や!)でした。
同棲相手のベッドシーンに、あれがうつってて、びっくりしましたけど。
お祖母さん、よかったですね(^^ゞ。

悠さん、コメントありがとうございますー。
海から始まってましたか。そこは、すっかり忘れてます。
最近は、何をぼかしているのか基準がわからないです。
ぼかされると、逆にそこに目がいってしまうので、止めて欲しいのですが。

お祖母さん役のジャンヌ・モローと誕生日が一緒なのが自慢なわたしです。
素敵でしたよね!

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