« 『カフカの「城」』 | トップページ | 『團菊祭五月大歌舞伎』夜の部 »

『まぼろし』

Souslesableフランソワ・オゾン監督が描く“死についての3部作”第1章。
観ている人の安易な同情を拒否する深さで、“愛する者の死”をとりあげている。

マリーとジャンは結婚して25年になる50代の夫婦。毎年恒例のヴァカンス中、海に泳ぎに行ったジャンが、忽然と姿を消してしまう。

事故なのか、失踪なのか、自死なのか。ジャンが生きているのかどうかさえわからないまま、パリに戻るマリー。

長い時間を共に過ごした、かけがえのない愛するものを突然失った時、襲ってくるだろう耐え難い哀しみ。
しかし、マリーの日常は変わらない。ジャンは今も彼女と共に暮らしているから。
マリーはジャンの不在を認めない。それは徹底的で、狂気を帯びているほど。
結婚後初めての不倫ですら、彼の存在を実感するため。

現実逃避としか言いようのない行為から浮かび上がってくる喪失感。
痛いほどの悲しみは、彼女だけのものだった。観ているわたしが安易に同情することを拒絶するような激しい悲しみに、ただただ圧倒された。

彼を失った海岸で迎えるラストシーン。
マリーはジャンの死を受け入れ、それでも彼と生きていくことを決意したように微笑んだ。突然走り出す彼女の姿が美しくも悲しい。

とにかく、シャーロット・ランプリングが素晴らしい。
彼女の三白眼が、素敵だ。妖艶な美しさは、凄惨さを感じるほど。時に、老いを感じさせる疲れた表情もまた、美しかった。

東京日仏学院の“ジャン=クロード・ギゲとともに”という企画での鑑賞。

『ぼくを葬(おく)る』が上映されているし、混んでいるかと思ったら10人足らずの観客だった。もったいないこと。
ここのスクリーンは、好き。一番前に座って観ていて、波にのみこまれそうな気持ちになった。

東京日仏学院にて(公式サイト

監督・脚本:フランソワ・オゾン
共同脚本:エマニュエル・バーンヘイム、マリナ・ド・ヴァン、マルシア・ロマーノ
撮影:ジャンヌ・ラポワリー(第二幕)、アントワーヌ・エベルル(第一幕)
美術:ピエール・ヴァロン、パトリス・アラ
音楽:フィリップ・ロンビ
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
出演:シャーロット・ランプリング、ブリュノ・クレメール、ジャック・ノロ、アレクサンドラ・スチュワルト、ピエール・ヴェルニエ、アンドレ・タンジー

Sous le Sable/UNDER THE SAND  2001  フランス

« 『カフカの「城」』 | トップページ | 『團菊祭五月大歌舞伎』夜の部 »

コメント

これ「8人の女たち」の前の作ですよね。私は、「8人」みてからDVDでみました。
シャーロット・ランプリング、よかったです。
>彼を失った海岸で迎えるラストシーン。
DVDでみたので、早送りしてみてしまってます、私(T_T)。

悠さん、こんばんは。お返事遅くなりました。
フランソワ・オゾン監督って、作品ごとにかなり印象が違いますよね。
『8人の女たち』と同じ監督と思えない映画でした。
えーっ、早送りですか!!
それは、残念です。
いろいろと考えさせられるラストシーンだったと思いました。エンディングの音楽も、弦楽の美しい曲で素晴らしかったです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137003/10412186

この記事へのトラックバック一覧です: 『まぼろし』:

« 『カフカの「城」』 | トップページ | 『團菊祭五月大歌舞伎』夜の部 »

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

最近のトラックバック

つぶやき


2015年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

天気ブログパーツ