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『マンダレイ』

Manderlay_3 アメリカに行ったことのないラース・フォン・トリアー監督が描くアメリカは、冷たい皮肉に満ちていた。

グレースとその父親率いるギャングたちが通りがかったマンダレイ。そこには、とっくの昔に廃絶されたはずの奴隷制度が残っていた。
正しきグレースは白人としての責任を果たすために、黒人奴隷の解放とその自立の手助けを始めた。それは、ギャングたちの暴力を背景にして強力に押し進められる。父親の権力を使うことは、前作『ドッグヴィル』で学んだこと。
グレースの強引な民主主義啓蒙の試みは、あからさまにアメリカのイラク政策を揶揄しているし、彼女のあまりにも幼稚で穴だらけなやり方には、アメリカへの悪意が満ちている。
結果として、グレースのアメリカ的民主主義は敗北する。安定した奴隷であることは、自ら苦難の道を選択しなければならない自由よりも、魅力的であるのかもしれない。

舞台の書き割りのようなセットは、黒人たちが共同生活しているマンダレイではそれほど効果的ではなかったけれど、一段高いベッドでの性行為場面は、悪趣味でなかなか。

グレース役は、『ドッグヴィル』のニコール・キッドマンから、ブライス・ダラス・ハワードに変更。同じ衣装を着て同じグレースであることをアピールしていたけれど、似合ってないのが可哀想。
グレースいぢめは、ニコール・キッドマン女王様への盛大なのとは違って、ブライス・ダラス・ハワード学級委員長的優等生は、独りで自滅していくような感じなので、少々物足りなくもあるけれど、追いつめられているかんじが良かった。
2人とも好きな女優なので、ラース・フォン・トリアー監督とは女性の好みが合うのかも。3作目が誰になるのか楽しみ。

シャンテシネにて(公式サイト

監督・脚本: ラース・フォン・トリアー
出演:ブライス・ダラス・ハワード、ダニー・グローヴァー、イザーク・ド・バンコレ、ウィレム・デフォー、ローレン・バコール、クロエ・セヴィニー

Manderlay  2005  デンマーク=スウェーデン=オランダ=フランス=ドイツ=アメリカ

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コメント

ドッグヴィルの監督さんの作品なんですね。ドッグヴィルは、舞台風の映画で、おもしろかったですって、私、ニコールのファンなもんで(^^ゞ。
でも、うちは回ってこないだろうな、この映画。ドッグウィルって、『アメリカの民主主義』を書いたトクヴィルにあてつけた題かなと思ってました(^^ゞ。私は、ファンしてる人の映画、舞台の感想は書かないので、感想書いてないのですけど。

べつのところでレスしようと思ったのですが、見るものによって、観客がちがうのもおもしろいですね。能は、謡ならってそうな方が多くって、舞台みずに本みて、聞いてるって方おおいです。

悠さん、こんばんは。
マンダレイは、ドッグヴィルの続編です。
ニコール・キッドマンは、美しくて素晴らしいですね。わたしもファンですよー。

観客層って、ありますよね。違う舞台を見るのは、その辺りも新鮮だったりします。
映画でも名画座は男性客が多い気がします。特に、古い映画の時。

ドモドモー♪
TB、コメントをありがとうございました。
ワタクシからのTBは今回は入りませんでした。ううっ・・・

トリアー監督、遠くアメリカから離れた所から盛んに挑発していますね。うふふ
これほどまでに執拗に描くのは、ある意味、アメリカが好きなのかも知れませんね。笑
>一段高いベッドでの性行為場面は、悪趣味でなかなか
うん、ワタクシも思いました・・・・・。
何だかとてもエロチックで妙な感じがしました。
トリアー監督、いろんなシーンで不穏さや嫌悪感を感じさせてくれましたデス。

Puffさん、こんばんは♪
>ある意味、アメリカが好きなのかも知れませんね。
なるほどー。執拗に挑発するのも、気になる気持ちの裏返しなのかもですね。
自意識過剰っぽいトリアー監督だから、アメリカを注目させたい気持ち満々だろうし。
作り込まれた世界観なので、案外冷静に観てしまっているワタクシなのです。
とにかく、3部作最後の『ワシントン』が楽しみです。

いわいさん、こんばんは!
この作品、というかシリーズとても気に入ってます。分かりやすいテーマを悪意たっぷりに描くサマが気持ち良いです。

>ブライス・ダラス・ハワード学級委員長的優等生
そうそう、グレース役としては特に前半違和感がありましたが、僕は彼女のまじめな感じに好感を持ちました。さらに言ってしまえばその違和感までが愛しくて(笑)。
何か屈折したこと書いてしまいました。

農園で働いていた人に授業をするときに力強さがほしい、やっぱり、ニコールでと思ってしまった、私。井戸から流れ出した水が、つーっと流れてゆく場面なんか、ほんと、舞台みたいでした。こういう重い映画をみると、しばらく映画みなくていいかな~なんですけど、すぐ、気が変わって映画見に行ってしまいますけど(笑)

Kenさん、こんにちは。
わたしも、悪趣味なところが面白いと思っています。

>何か屈折したこと書いてしまいました。
いやいや、ブライスちゃんは愛おしかったですよー。
後から考えてみたら、違和感のある前半だってハマっていると思えるほどです。
彼女だからこそ、この映画の味わいになったと思っています。ニコールだったら、展開が変わっていそうだし。
とにかく、『ワシントン』が楽しみですねー。

悠さん、こんにちは。
前作のニコールと同じ装いで登場した時には、あれれと思ってしまいましたけれど、観終わった時には、あの青臭さがハマっていると感じました。
ニコールだと印象がかなり違う映画になったことでしょう。それはそれで、とても観たい気がしますけれど。
舞台みたいな設定だけれど、やはり映画だなーと思いながら観ていました。
トリアー監督の悪意がかなり強烈に表れているので、冷静に一歩引いた気持ちになってしまうシリーズです。

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