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ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団『カフェ・ミュラー』『春の祭典』

Pinabausch来日する度に気にはなっていたけれど、観ることがなかった、ピナ・バウシュ。
今回の来日は、ペドロ・アルモドバル監督『トーク・トゥ・ハー』の冒頭でとても印象的に使われていた『カフェ・ミュラー』と、イーゴリ・ストラヴィンスキィの名曲『春の祭典』という魅力的な組み合わせ。

取れた席は前から3列目のほぼ中央。国立劇場大劇場は前方の席に段差がないので、みにくいのだけれど、舞台の生々しさを感じることができるのでラッキーとしておこう。
普段見慣れた国立劇場とは、かなり違う客層が新鮮。ダンサーなのかスタイルの良い方々とか、アーティスト風の方々とか、おしゃれな方々が多数。

「カフェ・ミュラー」
三方に出入口のある透明な壁に囲まれた室内。奥に回転扉。舞台一面に、黒い椅子とテーブル。

カフェで繰り広げられるさまざまな人間模様。椅子やテーブルがあることを気にせずによろめき進む女性。その行く先にある椅子やテーブルを次々と倒して取り除く男性。
彼女は別の男性と固く抱き合う。その2人を導き、男性に女性を手で抱きかかえさせる、黒いスーツの男。黒いスーツの男が去り、男性が女性を床に落とす。そして、固く抱き合う。黒いスーツの男が戻ってきて、再び、男性に女性を持たせる。3人の行為が時間を短くしながら繰り返され、最後には黒いスーツの男が戻ってこなくなっても、2人だけで、抱擁して抱きかかえては落とすという行為が反復される。笑えてしまうくらいに滑稽だけれども、哀しい反復。
そんな哀しい反復が次々と繰り広げられる。

そのような人々のなかにあって、終始、誰にも顧みられることなく、ひとりだけで踊り続けるピナ・バウシュ。観ている間、このカフェに漂っている幽霊のような存在なのだと思っていた。

人々の間を心配そうにちょこちょことコミカルな動きで歩き回っていた女性が、着ていた黒いコートとつけていた赤毛のカツラをピナに身につけさせるラストシーン。それまで誰にも顧みられなかった彼女が、現実の世界に戻ってきたのだろうか。
彼女が歩き出した先には、椅子やテーブルを取り除いてくれる人はいない。彼女が椅子やテーブルにぶつかる音が、暗転した後にも響いていた。

ヘンリー・パーセルの哀愁に満ちた音楽が、哀しみを盛り上げていた。途中で英語の歌詞だということに気づいたけれど(ドイツ語の時もあった?)、踊りに集中していたのでそれほど聞き取れず。
「Remember me.」とか「He's gone.」とかの繰り返しが、耳に残った。

危惧していた通り、前方の席では全体を見ることができなかった。特に、奥で静かに踊り続けている(らしい)ピナ・バウシュが見えなかったことが残念。

休憩時間にセットが片付けられ、床に赤い土が敷きつめられた。幕がないので、その一部始終が公開される。湿った土の匂いが漂い、期待が高まった。

「春の祭典」
肌色の薄い衣裳を纏った女性たちが、黒いセットにくっきりと浮き上がる。
土にまみれ、土を蹴り上げながら踊るダンサーたち。
足でかき回された土の匂いが強くなってきて、更にダンサーたちの汗の匂いも加わる。荒い息遣いをわざと聞かせるようにしているのも、緊張感を高めていた。

生け贄を表す赤い布が、女性の手から手へと次々と渡され、最後に残った女性の衣裳となる。恐怖にかられる乙女と、責め立てる人々の踊り。
そして、男女の交歓が、生命力溢れる凄まじい迫力で展開される。
手で体を打付ける音が生々しく聞こえた。

カーテンコールでも実感したけれど、ダンサーたちの背格好は意外なほどにバラバラだった。それだからこそ感じられる生命力だったのかもしれない。

こちらは、前の席で観る臨場感を存分に楽しむことができた。
カーテンコールで目の前にピナ・バウシュが登場した時にも、そのオーラを感じることができたようで嬉しかった。

国立劇場大劇場にて(公演情報

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コメント

舞台みたことないんですよ(T_T)。今日DVDで見た「トーク・ツゥー・ハー」を見たら始まりがビナバウシュのダンスだったんでびっくりでした。
あれ、「all about my mather」(「欲望という名の電車」の舞台が映画の中にすこしでてきます)に似てるな~と思ったら、同じ監督さんでした。
なにも、考えずにみて、この偶然にびっくりしてます(笑)。
いわいさん、ビール片手に、映画ってあるんですね(^^ゞ

悠さん、こんばんは。
映画で引用されている踊りはとても印象的ですよね。
いろいろと解釈の余地があって、考えさせられる作品でしたよ。
あぁ、『オール・アバウト・マイ・マザー』は、「欲望という名の電車」を使っていましたね。思い出しました。

アサヒアートスクエアは、アサヒビールの施設なのでした。普段はビール片手の鑑賞はやりませんけれど、チケットにビール付きだったので。結構楽しかったけれど、映画を選ぶかもしれませんね。

「オール、、、」と「トーク、、、」を見た感想ですが、「男の本質はマザーシップだぜ」って気がしてきました。ビナバウシュ見ながら涙を流す男性==もみ上げがありましたが(^^ゞ=男性性の裏に「めめしさ」があるのよねって気がします。歌舞伎でいうと「つっころばし」。おいら、男ですけど(^^ゞ

悠さん、こんばんは。
「マザーシップ」ですか。う〜ん。
『オール・アバウト・マイ・マザー』も、そういう印象でしたか?

「つっころばし」って、関西風味ですよね。
めめしいだけではなく、色気があって可愛らしくないと、観ていてイライラしてしまいます。
仁左衛門サマの「つっころばし」以外は、観たくないかも、と思っているワタクシです。

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