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『ククーシュカ ラップランドの妖精』

Kukushkaフィンランドの最北の地ラップランドを舞台にした、寓話のような映画。

フィンランドの青年狙撃兵ヴェイッコと、ロシア軍大尉イワンは、自国の軍に見放された2人。
そんな2人の兵士をサーミ人のアンニが救った。
それぞれがフィンランド語、ロシア語、サーミ語しか話すことができないので、言葉のコミュニケーションを全くとれないまま、3人の不思議な共同生活が始まる。

序盤、軍の懲罰として岩に鎖で繋がれて置き去りにされたフィンランド兵のヴェイッコが、銃弾の火薬を集めて爆発させたり、枯れ木で火を焚いた熱を利用したりと、岩を砕いて鎖を外そうと努力する描写に手に汗握る。
後に、彼はロシア文学にも明るい大学出のインテリであることがわかる。
平和主義的思想の持ち主で戦争に嫌気のさしているヴェイッコだけど、言葉が通じないからロシア人のイワンにとっては、憎むべき敵。しかも、ヴェイッコが仲間に着せられたナチの軍服のせいでドイツ兵だと思っているのだ。

なので、ケンカばかりしている2人だけれど、アンニにとっては単なる男。
夫は4年も前にフィンランド軍に徴兵されてしまったきり戻ってきていない。2人も男が現れて、とても喜んでいる。
言葉が通じなくたって、そんなことは関係なし。

水辺の小屋で、自給自足の生活をしているアンニ。
彼女のおおらかさが気持ちよい。食欲と性欲に忠実な女性の姿は、とても自然でいやらしさがない。開けっぴろげに男を誘う姿は、微笑ましくもあった。
そして、自然を生き抜くための太古から受け継がれた知恵。
傷ついたイワンを救うために、家畜の体を傷つけて血を搾り、ミルクに混ぜて飲ます。毒キノコを食べたイワンに解毒スープを作ってあげたり。
銃弾に倒れたヴェイッコを、太鼓の音と犬の遠吠えの真似で呼び戻す儀式。
冥界を歩いていく幻想的な風景も、三途の川みたいで何となく既視感があった。

意外なオチもあって、おとぎ話のような印象が残る。
ククーシュカは、“カッコウ”という意味の他にもうひとつ。

どこまでも広がる、森と湖とが織りなす神秘的な風景にも魅了された。
この地を訪れれば、こんな素晴らしい絵のような写真を撮ることができるのではないか、と思える、美しい色と光だった。

シネ・アミューズにて(公式サイト

監督:アレクサンダー・ロゴシュキン
出演:アンニ=クリスティーナ・ユーソ、ヴィクトル・ヴィチコフ、ヴィル・ハーパサロ

KUKUSHKA  2002  ロシア

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コメント

ドモドモー♪
TB、送らさせて貰ったのですが、今回は入りませんでした・・・ううっ・・・

この映画も良かったですよねー
北欧映画は外れが無いかもです。ウフフ
ちょっと寓話的なんだけども、戦争とかはリアルだったりして、、
ラップランドの神秘的な風景もあって、不思議な雰囲気のある映画でしたね。
三人がそれぞれトンチンカンな事を言っているのが可笑しかった!!
アンニの発情?発言も全然嫌らしく無くって
サバサバしていて好感持てましたよね~♪

Puffさん、コメントありがとうございます♪
とても良い映画でした。
自然と共存して生活をしている姿は、厳しいはずなのに、何となくほのぼのとしていて、気持ちよかったです。
全くかみ合っていない会話なのに、気にしていないのも面白かったです。
すぐ前に観た「ルー・サロメ 善悪の彼岸』も、女1人に男2人で共同生活という設定なのに、全く違う印象なのでした。
文明的退廃にも惹かれるけれど、自然と共に生きてきた大らかさも魅力的だと思いました。

最初の、ヴェイッコが足かせに苦闘する場面と、
最後の、アンニが丹精に祈祷する場面に、
随分と時間をかけて丁寧に描いているように思えました。
三途の川的なものって日本だけじゃないんですね。
フィンランド、気になりますねぇ。

現象さん、こんにちは。
ヴェイッコが足かせに苦闘する場面は、とても印象に残りました。
自然崇拝的なものって、キリスト教的なものよりも理解できる気がします。もともと日本にもあったものだと思いますし。
フィンランドは、気になります。『かもめ食堂』も観なくては。

こんばんは。
トラックバック送れないみたいですー。
マンダレイは反映されたのにー。

ロシア映画も北欧の風景も大好きですー。
湖の美しさったらなかったですよねぇ。
『大統領のカウントダウン』というエンタメアクションを前に観て、これはこれでおもしろかったんですが、チェチェンのイスラム勢をすっぱり悪者にしちゃっていうところにちょっと苦笑いしてしまい・・・。
なので、ククーシュカのような、公平にバランスよく平和を願うロシア映画に出逢えたことは一際嬉しかったです♪

かえるさん、こんにちは♪
トラックバックダメでしたか。残念です。再トライでオッケーなこともあるので、気が向いたらまたお願いします。

本当に、風景の素晴らしさっていったらないですよね。
行きたくなってしまいます。
『大統領のカウントダウン』ご覧になったのですね。少し気になった作品ですけど、パスしてしまいました。
物語として必要かもしれなくても、すっぱり悪者にしてしまうのはいかがなもの?という時は確かにあります。
>公平にバランスよく平和を願うロシア映画
本当に!この願いが、声高にされていないことも素晴らしかった。
美して心に残る映画でしたー。

観客は、三人の言葉が理解できるのに、三人は互いに言葉がわからない。ときどき、話が通じ合ってるののでは、なんて、思ったりしますが、すれ違ってる。うまくできた映画でした。
ほんとうにラストは、意外でした。
ヴェイッコのサバイバル能力もすごかったですね。
ククーシュカのもうひとつの意味はわかんなかったです(-_-;)。

悠さん、こんばんは。
言葉がわからないことを全く気にしていないようなのところが、不思議な雰囲気でした。

ククーシュカのもうひとつの意味って、あれ?
多分、アンニの本名だったということだったかと、、
すっかり忘れています。メモしておかなくちゃですね。

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ラップランドの風景を、青みがかったモノトーンのような色彩で捉えて、自然の幻想と雄大さ、加えて厳しさが伝わる。その上、サーミ人のスタイルも幻想的だった。シャーマンの儀式に時間を費やす。自然に従事し、自然を崇め、戦いのむなしさや争いの醜さを説いた。 第二次世... [続きを読む]

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