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コクーン歌舞伎『東海道四谷怪談』北番

Cocoon_minami 串田和美の新演出ということと、通常の「四谷怪談」では上演されない“三角屋敷の場”の上演があるということで、とても楽しみにしていた北番。
想像以上に新鮮な舞台をみせてくれたことに、感謝感激!

序幕の第一場「浅草観音額堂の場」から、違う匂いが濃厚に漂う。
そもそも、配役からして新鮮だ。直助が勘三郎、与茂七が扇雀というのは、歌舞伎座ではできないのではないだろうか。
そして、塩冶浪人の娘であるお袖が高師直の家来である伊藤喜兵衛に対する憎しみの感情を露にみせることによって、この芝居が忠臣蔵と関わりがあることを明らかにしていた。

二幕目は、南番とそれほど違いはないけれど、それでも微妙に違っていた。
伊右衛門がそれほどひどくない。いや、そりゃあひどいんだけれども、お岩への執着が感じられるのだ。弱さゆえのひどさというのか。とにかく色悪には見えない。なので、お岩とのやり取りもそれほどしつこさがない。だからこそ、感じられるリアリティ。
伊右衛門とお岩は、南番と同じ配役なので、演じ分けるのが大変だろう。

四幕目は、通常上演されない。
「三角屋敷の場」は、お袖と直助をめぐる因果にお袖の夫与茂七が絡む。南北ものにありがちな「実は兄妹」とい う設定にも、人の世の無常を感じられた。お袖の七之助の儚さが哀れを誘う。七之助は、北番のお梅がそれほどよいと思えなかったので、残念だったけれど、北 番のお袖を演じることに引っ張られていたのかも。与茂七が最後の場で登場する流れにも納得。
「小仏小平住居の場」では、戸板に打付けられるだけの役回りだと思っていた小平の主への思いや、仇討ちへと向かう塩谷浪人の気持ちが浮き彫りになっていた。
人物関係と物語が複雑な割に幕として独立しているので、省略されるのも理解できたけれど、観られて本当に良かった。

大詰は、「夢の場」の妖しくも美しい情景から、一転、地獄に変わる。
地獄へ堕ちていく人々の姿をみせて、圧倒的な迫力に目を見張る。

そこには、人間の業や底のない欲望があって、ざらりと残る後味の悪さが、カタルシス!幕が閉じられた後にも、ざわざわとした余韻が残った。

南番と同じ背景絵が、照明によって様々な情景を見せてくれて、効果的に使われていた。なるほど、こう使いたかったのね。最後の、地獄絵は圧巻だった。

いわゆる歌舞伎の長唄や鳴り物をつかっていないのも、北番の特徴。
音楽は朝比奈尚行のちょっとひっかかりのある現代の音楽。
はじめのうちは違和感があったけれど、だんだんと慣れていった。伊右衛門がお岩に邪険な振る舞いをする時の馬頭琴(?)を使った 哀愁ある音楽に、場内は息を飲んでいた。髪すきの悲鳴のようなトランペットも印象的。ホーミー風の歌(なのか?)も、太い声が禍々しく場を盛り上げて いた。

残念なのは、二役の見せ方。
弥十郎が、四谷左門と仏孫兵衛。扇雀が、佐藤与茂七と小仏小平。橋之助が、民谷伊右衛門と小汐田又之丞。
それぞれが、似たような役の二役なので、見分けがつきにくい。混乱している人もチラホラいたようだった。
扇雀の佐藤与茂七は、適度な色気もあって良かっただけに残念。よく観ていれば、セリフ回しとかの違いがわかるんだけれど、着物や髷が似ているのが混乱の元だった。

この芝居は、今まで観た「四谷怪談」(南番も含む)に対する謎や不満を解消してくれた。仕掛け物の工夫も楽しいけれど、お化け屋敷のようで飽きるときもある。これは、歌舞伎的なけれんをほとんど使用しないで、鶴屋南北に真っ向から勝負している北番だった。
串田さん、面白い芝居をありがとうございますー。

シアターコクーンにて(公演情報

南番の感想は、こちら。

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コメント

いわいさん、感想UPありがとうございます!
素晴らしい舞台だったようですね。
見られて、いいなぁ、ほんとに。
ケレンのない、鶴屋南北に真っ向から勝負している芝居、ぜひ見たかったです。
勘三郎の直助、扇雀の与茂七というのは、確かに歌舞伎座じゃあありえないですよね。
それもまた見たかった。
>ざらりと残る後味の悪さが、カタルシス!
キャ~!! 
あの背景絵は、南番を見るかぎり、あまり効果的だとは思えなかったのですけど、
なるほど、北番では、とてもドラマチックに使われていたのですね。
凝りに凝った音楽も聴いてみたかったなぁ。
うーん。とにかく北を見逃したことは、いつまでも悔いが残りそうです(涙)。

いわいさん こんばんは(^^)

三角屋敷など普段出ない幕が演じられるということで、私は北番だけ見ました。
見る前は、期待していなかったのですが、なかなか見ごたえがありました。
いわゆる四谷怪談的なもの(提灯抜け等)を期待すると、確かに物足りない感は
ありましたが、その分、ストーリーがしっかり分かるというか、
南北が四谷怪談にこめたテーマがくっきりと表現されていた気がしました。
普段は気になる役者達のおふざけも、そんなにあくどくなく、それも気に入った要因ですが(^_^;)

ゆっこさん、こんばんは♪
北番のほうが上演回数が少ないのですよね。チケット入手困難という話を耳にします。
知り合いの話しでは、初日から比べて演出がかなり変更されているらしく、串田さんの情熱を感じます。
背景絵は、照明が違うからだと思いますけれど南番の印象と本当に違っていました。
これも、是非是非再演していただきたいです。

pokeさん、こんばんは♪
南番→北番の順番に観たので、ケレンのなさをより実感することができた気がします。
これからは、通常の四谷怪談を物足りなく思うのではないかと思ってしまうくらいに気に入りました。

>南北が四谷怪談にこめたテーマがくっきりと表現されていた気がしました。
そうですよね。南北に観てもらいたいと思いました。
南番もですけど、勘三郎の丁寧な演じ方に好感を持ちました。

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