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『アメリカ、家族のいる風景』

Dontcomeknocking_1西部劇スターとして有名な俳優ハワード・スペンスが、新作の撮影現場からカウボーイ姿のまま突然逃亡する。
そして、ハワードは“心の空白を埋める旅”に出た。

ハワードは、本当にどうしようもない男。酒とクスリと女に溺れる日々を送っていた。撮影現場のトレーラ内には、女たちと、酒とクスリが散乱する惨状が残されていた。
と りあえず故郷へと向かうハワード。30年も音信不通だったハワードを、母親は暖かく迎えてくれる。この母親が、とっても素敵な人だ。30年ぶりにあった息 子に、説教するでもなく、愚痴を言うわけでもなく、ベタベタするわけでもない、適度な距離感。地域の人々とも上手につきあい、生活を楽しんでいる。

母親から、二十数年前に産まれたらしい子供の存在を知らされて、ハワードは、モンタナ州ビュートへと向かう。その街でハワードは、かつての恋人ドリーンと再会し、息子アールのことを知る。
この恋人も、格好良い。彼女を捨てたことをなじるわけでもなく、息子と会わせようとするわけでもなく、クールにハワードの甘えた臆病な気持ちを見透かしている。

いい大人の年齢になっているはずのアールが、父親の出現にあまりにも過激な反応を示すのは、彼の心にも穴が開いているからなのだろう。現実を受け入れられない男たちは、けっこう情けない。

男たちの心を癒すのは、存在を気づかれていなかったハワードの娘スカイ。母親の骨壺を抱えているスカイ。遺灰を撒く場面が、とても美しい。ずっと語られなかった彼女の気持ちが明かされ、男たちは現実を受け入れることができた。

どうしようもない男の心が埋まり、帰る場所がある幸せをかみしめる。
血のつながりって良いかも、と素直に思える暖かさがあった。

エドワード・ホッパーを思わせる宣伝ヴィジュアルをはじめ、アメリカの美しい風景をとらえた映像の美しさは印象的。

『パリ、テキサス』との共通点も多いから、どうしても思い出してしまうけれど、まったく違った感動を与えてくれた。

シネスイッチ銀座にて(公式サイト

監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:サム・シェパード
撮影:フランツ・ラスティグ
音楽:T・ボーン・バーネット
出演:サム・シェパード、ジェシカ・ラング、ティム・ロス、ガブリエル・マン、サラ・ポーリー、フェアルーザ・バーク、エヴァ・マリー・セイント

DON'T COME KNOCKING  2005  ドイツ=アメリカ

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コメント

最近つくづく思うんですけれども、
男というものは得てして情けないものなのではないでしょうかね。
基本がどうしようもない、みたいな。
そうやって自分はダサいと自覚している分、
僕はまだマシなほうだと甘い採点をしていることこそ、
まあ、みっともないとも言えるかなぁ、みたいな。
甘えと臆病は否めないですw

現象さん、こんにちは♪
男というものは、というように性別でカテゴライズするのは苦手なのです。
でも、そういう感情を刺激してくる映画というのは、心に残るものですよね。
ラストシーンには、しみじみと浸ってしまいました。

ドモドモー♪
TB、コメントをありがとうございました。

いやー、良い映画でしたねー・・・
主人公を始め、行く先々で出会うキャラがとても魅力的でした。
一番印象的だったのは、最後のサラ・ポーリーとの会話です。
あれにはじーーんと来ちゃいましたね。
そして、映像の一つ一つがとても美しかったですねー
人気の無いビュートの町に行って歩いてみたくなりましたよ。

いわいさん、三度どうも!
これは良かったですよね。
ひとけのないアメリカの街のたたずまいだけでしみじみなのに、あの音楽と、そしてラストのスカイの父親への思いの告白。ツボにはまりまくりでありました。
これ、サントラをレコ屋で探したのですが見つからなかったです。出てないのかな??
"Don't Come Knockin'"とかすごく良い曲だったなあ。

Puffさん、こんにちはー。
わたしも、最後のサラ・ポーリーとの会話にジーーンときました。そして、楽しそうに笑い合う車上の3人の姿に涙がこぼれてしまいました。
ビュートは本当に何もなさそうな町だったけど、行ってみたくなりますよね。
ダイナーの雰囲気がとても素敵でした。

Kenさん、こんにちはー。
本当に良い映画でしたよね。
T・ボーン・バーネットの音楽も良かった。
ちょっと甘ったるいようなギターの音にしびれるー。
"Don't Come Knockin'"は、この歌詞の部分(しかわからないので)が頭のなかでグルグルとリピートしてます。

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