« チェコアニメ映画祭2006 Bプログラム | トップページ | 4月のまとめ »

『怪談 お岩の亡霊』

シネマヴェーラ渋谷の“激情とロマン 加藤泰 映画華”にて鑑賞。
先日観たコクーン歌舞伎北番での記憶も生々しい四谷怪談。

あの長い芝居を94分に収めているのは、裏忠臣蔵という設定をすっぱりとなくして、人物関係を整理した脚本による。

民谷伊右衛門は、若山富三郎。ちょっと太り気味の、無精髭でむさくるしい風体は、色悪からは程遠い。一応、仕官する野望を持ってはいるけれど、辻斬りなどしてその日暮らし。
お岩に執着し、疎み、暴力をふるう伊右衛門。
金持ち商人の娘お梅との縁談にのりたいけれど、お岩と別れることも簡単にはできないらしく、お岩に八つ当たりしたり優しくしてみたり。虚無的な雰囲気の漂う伊右衛門は、何がやりたいのかわからない男。

お梅の家から渡された薬を飲んで顔が崩れてしまい、深い恨みを抱きながら死ぬお岩が、伊右衛門の前に亡霊となって現れ、彼を追いつめるという流れは、通常の四谷怪談と同じ。

直助の扱いが面白い。直助は、町人の小悪党。伊右衛門の悪行に加担していたり、後から聞いたりして、伊右衛門の非道さを熟知しているけれど、同じ穴の狢として適度な距離感で付き合っている。
お岩の妹であるお袖に惚れてしまったために、お袖の許嫁である与茂七を殺したり(殺したのが別人であったことは後で知れる)と、ひどいことはしているものの、普段の暮らしぶりなど飄々としていて、憎めない存在。一緒に暮らしていても体を許してくれないお袖(これが滅法気が強い)に対しても、惚れた弱みで誠実に尽くしている風なのにも、好感が持ててしまうほど。
生きていた与茂七と偶然出会ってしまい、伊右衛門が仇だということがお袖に知られた時、恋敵である与茂七と共に敵討ちを実行することになってしまう直助。
お袖、与茂七、直助の3人で伊右衛門の所へ敵討ちに出かけ、伊右衛門と対峙することになる。直助は、伊右衛門に重傷を負わせはするが自分も傷つき、お袖に看取られて死んでいく。「お前に惚れたばっかりに」という直助は、世渡りのうまい小悪党が自滅した哀愁があって、主役の伊右衛門を食ってしまうほど目立つ存在だった。

この目立つ直助は、近衛十四郎。誰かに似ていると思っていたら、松方弘樹、目黒祐樹兄弟の父親だった。
与茂七役の沢村訥升というのは、九代目澤村宗十郎だと思われる。若かった。

怪談と銘打っている割にはそれほど怖くなく、伊右衛門という浪人が破滅していく姿を描いている映画だった。
殺陣の時、今みたいな効果音もなく、切れなさそうな刀で何度も何度も斬りつけるところが恐ろしかった。

この日の同時上映作『車夫遊侠伝 喧嘩辰』は、時間を勘違いしていて観られなかったのが残念。

シネマヴェーラ渋谷にて

監督/脚本:加藤泰
原作:鶴屋南北
撮影:古谷伸
美術:桂長四郎
音楽:高橋半
出演:若山富三郎、桜町弘子、藤代佳子、近衛十四郎

1961 日本

« チェコアニメ映画祭2006 Bプログラム | トップページ | 4月のまとめ »

コメント

若い頃ってあの兄弟、そっくりじゃありません?
ちょっと前に文芸坐で映画を見たとき、
富三郎が虚無僧みたいな格好していたんですが、
「あれこの映画って勝新でてたっけ」と、
おかしな勘違いをしました。
加藤泰おもしろかったです。
もっと見たかった…
シネマヴェーラは良い特集を組みますねぇ。
あ、桜町弘子。
僕が見た作品にも出てたんですが、
特別美人とは言えなくても上品なかわいさがあって惚れました。

現象さん、こちらにもコメントありがとうございます。
あの兄弟は確かにそっくりですね。わたしも、途中まで勘違いしていたことがあります。市川雷蔵と共演の『新選組始末記』だったかな。
初めての加藤泰体験は、2年前の『江戸川乱歩の陰獣』でした。新文芸座でしたけど、あまりの淫美さにびっくりしました。わたしももっと観たかったです。
桜町弘子は、気が強そうでとても良かった。
旧作も観たいし、新作も観たいし、時間がもっと欲しいー。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137003/10045548

この記事へのトラックバック一覧です: 『怪談 お岩の亡霊』:

« チェコアニメ映画祭2006 Bプログラム | トップページ | 4月のまとめ »

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

最近のトラックバック

つぶやき


2015年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

天気ブログパーツ