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『うつせみ』

美しく静かな時間がひたひたと過ぎていく。
リアルでもあり、ファンタジィでもあるという表現が可能であることを知った。

Utsusemi 青年テソクは、バイクで街を走りながら留守宅を探す。そして、その家に侵入して、住人が戻るまでのひと時をその家の主であるかのようにくつろぐ。
そんなある日、豪邸に侵入した彼が出会ったのは、孤独な美しい人妻ソナ。そして、テソクはソナを連れて家を出る。

テソクの行動はいつでもほとんど同じ。デリバリィサービスなどのチラシを戸口に張って留守宅を物色し、鍵を開けて侵入する。料理を作ったり、テレビを見たり、洗濯板を使って洗濯をする。同じCDを聴く。壊れているものを修理する。そして、デジカメで部屋の物と一緒に記念撮影する。
パートナとなったソナも、同じように行動するようになる。チラシを張ったり、料理を作ったり、洗濯板で洗濯したり、記念撮影したり。
そんなふうにして、全く言葉を交わすことなく心が通い合っていくふたり。微笑みを取り戻したソナの顔が美しい。

あまりにも刹那的な生活なのに、幸せそうなふたりが切ない。
ずっと言葉を発しなかったソナの口にした言葉が美しくも衝撃的だった。
美しいふたりが迎える結末は、ハッピィエンディングだったのか。

テソクが侵入する家はさまざま。韓国のいろいろなタイプの生活を見ることができて、面白かった。
そして、現代的な生活スタイルの家庭よりも、伝統的な生活スタイルの家庭のほうがゆったりと幸せそうにみえたことは皮肉。

びしっとピントがあっている美しい映像は、物語をリアルに表現しながらも、あまりにも美しいので幻想的な印象も与えてくれていて、素晴らしかった。
まさに、「私たちは現実と幻想の際で生きている」ことを実感させてくれる美しい映画だった。

英語タイトルは、"3-Iron"。確かに、恐ろしく印象的な使われ方をしていたけど。。公式サイトにある"Worldwide Poster Gallery"で、各国のタイトルがわかって面白い。

幻の衝撃デビュー作『ワニ』を、ポレポレ東中野ほかで、晩夏ロードショー決定!だそうだ。(劇場に置いてあったチラシよりの情報)
上映期間中にキム・ギドク監督特集も開催するらしいとのこと。
見逃していた作品を観ることができそうで、うれしい。

恵比寿ガーデンシネマにて(公式サイト

監督/脚本:キム・ギドク
撮影監督:チャン・ソンベク
出演:イ・スンヨン、ジェヒ、クォン・ヒョゴ、チュ・ジンモ

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コメント

切ない刹那!
韻を踏んでるっぽい感じですねw
韓屋っていうんでしたっけ?
あそこの家庭が最も満ち足りているように思えましたね。
ああいう風情のある家を見るとほっこりします。
「ワニ」の公開も楽しみです。
特集上映も待ち遠しい!

現象さん、コメントありがとうございます。
実は、予想していなかった展開と、結末に圧倒されてしまいました。
最後に出てきた監督のコメントに、「なるほどぉ」とやられてしまった感じです。
風情のある家、素敵でしたね。「韓屋」っていうんですか?韓国に行ってみたくなります。

特集上映、楽しみにしています!

こちらにも、TB、コメントをありがとうです~♪

美しく、独特の雰囲気がありましたねー・・・
そうそう、韓国の様々な家屋が観れたのも嬉しかったです。
モダンなマンションから伝統的な「韓屋」まで。
・・・韓屋って言うのですね、、ワタシもこの映画を観て初めて知りました。エヘ
韓屋のお家、しっとりしていて良い感じでしたねー
あの夫婦も「阿吽の呼吸」で繋がっていて素敵でした。

Puffさん、こちらにもコメントありがとうございます。

韓国の家庭では、家族写真を飾るのが普通みたいでしたね。日本の風景に似ている部分も多いけれど、違う部分もやはりあったりして、そういうところも興味深かったです。
韓屋の家は、とても印象に残っております。
美しく、夢のような余韻が残った映画です。

とっても心地よい映画体験でした。
今月、DVDで『コースト・ガード』と『受取人不明』を観たのですが、やっぱり昔のものは痛さが強烈なんですよねぇ。
洗練されてきたのでしょうか?
ワニやら弓やらも楽しみですー。

かえるさん、こんにちは♪
『コースト・ガード』は、チャン・ドンゴンの映画だったくせに、韓国映画特集でちらりと上映されただけでしたね。あらすじを読む限り、かなり刺激的。
東中野で上映してくれることを心から願っています。
痛さが強烈でしたか。楽しみー。
「うつせみ」は、映画館で鑑賞できる幸せをかみしめることができた作品です。
『弓』の予告編は、美しいいですよねー。期待が高まります。

 もー、いわいさんのレビューを読んで、思い出し泣きしてしまいましたよ。何も言わなかったソナのたった一言が、あの言葉だったのを思い出して・・・。あのたった一言の重み、深さ・・・もう、キム・ギドク監督にハートをぶち抜かれました。
>リアルでもあり、ファンタジィでもあるという表現が可能であることを知った。
 言い得て妙な表現だと思いました!私は思いつかず、表現出来なかった言葉ですが、まさしくそうだ、と思いました。「マクダル、パイナップルパン王子」も、そうだな、と思いました。

とみさん、こんばんは。
思い出し泣きさせてしまったなんて、感激ですわ。
頭の片隅で、言葉を発する瞬間を待っていたのです。そしたら、あの言葉!衝撃的でした。
ソナと夫とテソクとの、あり得ない3ショットにも、心を打ち抜かれたわたしです。

確かに、リアルでファンタジィなのは、マクダルもですね。全然違う方向性の作品なのに。。
ファンタジィという言葉の持つ意味にもいろいろな種類があるということですかね。

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» 映画「うつせみ」を観て [とみのひとりごと]
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