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『クラッシュ』

crash人種のるつぼ、ロサンゼルスを舞台に、人々の人生が交錯する36時間を切り取った群像劇。
自動車事故(=クラッシュ)で始まり、人と人との衝突(=クラッシュ)が繰り返される。登場人物たちの運命が変わる瞬間を丁寧に描いて、鮮やかな印象が残る。

刑事たち、自動車強盗、地方検事とその妻、鍵屋とその娘、雑貨屋、TVディレクタとその妻。さまざまな職業、そしてさまざまな人種。
まず、強烈な人種差別意識に驚かされる。
アジア系の女性から「メキシコ女」とののしられた女性は、自分の両親はプエルトリコ人とエルサルバドル人で、メキシコ系ではないと言う。「アラブ人」とののしられた男性の娘は、アラブ人ではなくペルシア人なのにと言う。
相手の人種をはっきり認識できているわけでもないのに、ちょっとした特徴を捉えて罵倒できてしまう、その差別意識の根深さにやりきれない思いを抱いてしまう。

多様化している人種構造は、複雑に絡まりあう差別意識となって表れていて、差別する側と差別される側の関係は、一筋縄ではいかない。
そして、人種間の問題だけでなく、夫婦間や親子間の心の行き違いまで踏み込んで描いている。彼らの人生を描くリアルな断片が、少しずつ重なっていく展開がスリリングで、目が離せない。

この映画が素晴らしいのは、人間を単純に描いていないということ。
ある場面では悪人であった人間が、別の場面では感動的ともいえる献身を見せたりする。その逆もあり。善人とか悪人とかを簡単にカテゴライズできるほど人間は単純ではなく、多面的な生き物であるということを浮き上がらせる過程が見事。
そして、ちょっとしたきっかけで人生が良くも悪くも変わることがあるということも描いて、希望と悲しみと両方を感じさせてくれるラストは、胸に響いた。

俳優たちのリアルな演技が、この作品で描かれるそれぞれのドラマを素晴らしいものにしている。その代表はアカデミー賞にノミネートされたマット・ディロンだろうけれど、他の俳優たちも本当に素晴らしかった。(拍手)

シャンテシネにて(公式サイト

監督/原案/脚本:ポール・ハギス
脚本:ボビー・モレスコ
出演:ドン・チードル、マット・ディロン、
クリス“リュダクリス”ブリッジス、ブレンダン・フレイザー、サンディ・ニュートン、ライアン・フィリップ、サンドラ・ブロック、ショーン・トーブ、マイケル・ペニャ、テレンス・ハワード

Crash  2005  アメリカ

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コメント

良い映画でしたよね!!
ワタクシ、群像劇はとーっても好きなのですけど
その中でも好きな作品の一つになりました。

>人間を単純に描いていないということ
そうそう、片方から見て決め付けずに
良い面悪い面を無理なく描いているところが良かったですね。
ビターな中にも、ほんのり優しさや思いやりが
垣間見れたのでした。

ところで、最近、ココログさんはTBが入ったり
入らなかったりです。
今回は入りませんでした。涙・・・

Puffさん、こんばんは♪
群像劇って、ハマるとやられたぁって思えるけど、
ダラダラしてて登場人物が多ければいいのか?
と思ってしまうこともあって、面白くするのは案外難しいんだと思います。
この作品は、巧かったですね。
わたしも好きな作品です〜。

トラックバックできないのは、サーバ負荷の問題でしょうかね。
最近、あまり重くないと思っていたんですが。
申し訳ありませんです。

いわいさん☆こんにちは。
コメント&ご訪問ありがとうございました。

これほどの映画を観たのは久しぶりかも。と絶賛してしまいますが。
出演陣の演技も皆良かったですね。誰がかけても物語は完成しない作品だと思ってます。

人種差別や偏見による人と人のぶつかり合いをここまでみせてくれた映画も珍しいですが、何よりもラストにかけての一連の流れがとても素敵でした。

orangeさん、こんにちは♪
最初はかなり重くるしい映画だと思ってみていたんですが、
けっしてそんなことはなくて、
人間が持つ多様な面を鮮やかにみせてくれましたね。
素晴らしい映画でした〜。

いわいさん、こんんちわ。
TB&コメントありがとうございます。
>善人とか悪人とかを簡単にカテゴライズできるほど人間は単純ではなく、多面的な生き物であるということを浮き上がらせる過程が見事。
コレこそが、この作品の一番強いメッセージなのかもしれませんね。いわいさんの記事を読んで、改めて繰り返して観たくなりました。

いわいさん、こんにちは!
TBお返ししようとしたのですが、今回もうまくゆかず、です・・・。
この映画、いわいさんの仰るように、まさに、ひとりの人間には良いところも悪いところもある、という当たり前のことを描いているからこそ説得力があったような気がします。
マット・ディロンの警官なんか、悪人だと思っていたのにあんな良いことしてしまうものだから、より感動してしまいました。
言ってみれば、雨に濡れる子猫を抱き上げる不良を目撃してしまったような感じでしょうか。・・・ちょっと違うか(笑)。

こんにちは!TBありがとうございました。あつかましく二つつけさせていただいちゃいました!
ところで、天使の街ロサンゼルスの寓話を堪能いたしました。
エピソードのひとつ、天使がくれた贈り物が人を救いました。でもこれ、空砲を選んだのは結局は自分の娘。父を救ったのは鍵屋もペルシャ人も自分の娘です。人は結局人によってしか救われませんわね・・・
家族とのクラッシュした繋がりが良くも悪くも変化するあたり脚本のセンスの良さが光ってました

こんにちはー。
群像劇は大好きなんですが、とてもよかったです。
カエルは降ってこなくても。

>ある場面では悪人であった人間が、別の場面では感動的ともいえる献身を見せたりする。その逆もあり。

そうなんですよー。そこがよかった。
心に残った箇所はいわいさんとかなりかぶるかも♪

こんにちは~。
TB&コメントありがとうございました。
喜怒哀楽すべての感情がつまった群像劇でしたね。いいところもわるいところもあって、それが人間というものだよ、と言われているような気がしました。

脚本賞もノミネートされているんでしたっけ?オスカー獲るといいなぁ…。

隣の評論家さん、こんにちは♪
繰り返し観ることに耐える素晴らしい作品でしたよね。
観るたびに、いろいろと考えることができそうです。

Kenさん、こんにちは♪
なるほど、当たり前のことをきっちり描いているからこその説得力ですね。
説教臭くなくて、自然に受け入れることができました。(説教臭いのは大嫌いなのです。)
>雨に濡れる子猫を抱き上げる不良を目撃してしまったような感じ
爆笑です〜。違うような、同じようなですね。
意外性は、ドラマを作りますね!

トラックバックの件、一回Niftyに問い合わせてみたんですが、特に何もないらしいんですよ。ご面倒でも、思い出した時にトライしていただけるとうれしいです〜。

charlotteさん、こんにちは♪
トラックバック二つもありがとうございます〜!
>人は結局人によってしか救われませんわね
そうですよね。人を傷つけるのも救うのも人ですよね。
良いだけではなく、悪いことも描く脚本センスは本当に素晴らしかったですね。

かえるさん、こんにちは♪
群像劇って、良いですよね。
ロサンジェルスのある36時間を切り取って、いろいろなドラマを見せてくれて、素晴らしかったです〜。
全てを帳消しにするようなことが起こらなくても、ちょっとしたきっかけで変わることがあるんですよね。
>カエルは降ってこなくても。
そうですね。(にっこり)
心に残る場面が多い映画でしたね♪

chatelaineさん、こんばんは♪
>喜怒哀楽すべての感情がつまった群像劇
本当にそうでしたね。
心に残る場面が多くて、いろいろと考えました。

脚本賞にもノミネートされてました。
候補作で観ているのはこれだけなんですが、獲ると良いなと思います。

こんにちわ!『カリスマ映画論』管理人の睦月です、TB&コメントありがとうございました!
お返事遅くなってすみません・・・。おちらにもお返ししておりますので、お暇なときのぞいてみてくださいな。
この作品に出ている全ての役者さんたちに賞をあげたいくらい、みんな素晴らしい存在感と演技を見せてくれました。
心が温かくなる素敵な作品だったと思います。

睦月さん、こんにちは♪
脚本が素晴らしくても、結局は役者にかかっているんですよね。
確かに、誰もに賞をあげたいくらいです。
ハッピィエンドなわけではないのに、心が温かいのは何故なんでしょうね?
監督の視線が優しいからなのでしょうか。

こんにちは。コメントをありがとうございます。
正直、辛い映画でした。自分は、どちらかというと、融通が利かないタイプだと自覚しているところがありまして。どんな理由、事情があっても、「権力や立場、職権をもって行う言動には責任があるだろう」と思いました。なので、自分があの事故車にいたら「絶対、助けて貰わない(=死んでも良い)」というような気分でした。でも、そんなんじゃだめだよ…という内なる声も聞こえています。(汗)

あかん隊さん、こんにちは。
あの巡査は、明らかに職権濫用でしたよね。
事故車にいた彼女も、最初は「助けてもらいたくない、さわらないで」という姿勢だったけど、彼の助けようとする行為に嘘がないことが伝わって、助けてもらう気になったように思いました。(とにかく、命が危ないというのもありますが。)
この事故によって、彼の心持ちが少しは変わるかもしれない、という希望を感じました。

こんばんは。コメントをありがとうございました。「いわいさん」、大人ですね。落ち着いてらっしゃるなぁ、と思います。
自分は、たぶん「玉砕」して、相手に一生後悔させてやる…というくらい、腹が立ってました。すみません。短絡的ですね。きっと。

あかん隊さん、こんにちは。
いやいや、大人ではないと思いますよー。
わたしも、同じように腹が立ってイライラしながらみることもあるんですが、今回は違っていました。
展開を予想しながらみることが多いのです。
この映画は、予告編で想像して警戒していたメランコリックさ(好きではないのです)をそれほど感じず、人物からちょっと引いた視線を感じました。
で、それなりに冷静にみていたのかもしれません。
あかん隊さんは、熱い感性をお持ちなのですね。

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