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『ジャーヘッド』

湾岸戦争といえば、リアルタイムで届けられたニュース映像を思い出す。テレビゲームのように現実味のない映像。
ハイテク兵器を駆使した“現代戦”の現実を、若き兵士の手記を原作に描いた映画。

jarhead海兵隊に入隊したアンソニー・スオフォードは、厳しい訓練に耐え、斥候狙撃兵としてサウジアラビアに派遣される。
しかし、当面の任務は油田警備。長い待機の日々に、エネルギィをもてあます彼らの鬱屈した思いは、次第に狂気をおびていく…

米軍の中でもエリート集団で、過酷な訓練が予想できる、海兵隊に志願したスオフォード。カミュの“異邦人”を読む文学青年の彼が、軍隊の現実にうんざりしながらも、過酷な訓練に耐え、戦地での活躍を考えるようになっていく様がリアルに伝わってくる。『地獄の黙示録』のヘリ編隊が殺戮を行う場面を見ながら、ワーグナーを一緒に歌い歓声をあげる兵士たち。この場面で気分が高揚するのはわかるけれど、殺すことを厭わぬ方向へ洗脳されていることに怖さを感じる。

しかし、高揚しつつ砂漠へ乗り込んだ彼らの任務は、ただひたすら指令を待つことだった。敵のいない砂丘に手榴弾を投げ、想像の地雷原を進む訓練の毎日。
兵士たちの単調な日常が、ラップなど、軽快で激しい音楽とともにテンポよく描かれる。

この映画には、全体を覆う微妙な緊張感がある。戦争映画でありながら、戦闘シーンはほとんどない。戦地にいる兵士たちの日常から伝わってくるのは、彼らが確実に蝕まれているということだ。

スオフォードとその相棒トロイにやっと下された命令。その命令を待ち望んでいた彼らの気持ちが、わかるような気がしてしまう。   
そして、その顛末には同情も覚えるが、それは彼らが確実に壊れていることを感じて哀しかったからだ。

アメリカに帰って「自分はジャーヘッドであり、まだ砂漠にいる。」というスオフォードは、何かが確実に変わってしまったのだ。

“ジャーヘッド”とは、お湯をいれるジャー(びん)のような高く刈り上げた髪型からついた、海兵隊員の呼び名のこと。

ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズにて(公式サイト

監督:サム・メンデス
出演:ジェイク・ギレンホール、ピーター・サースガード、クリス・クーパー、ジェイミー・フォックス

JARHEAD  2005  アメリカ

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コメント

戦闘シーンがないのに何か怖さを感じます。
戦争はやはり無意味にしか思えない私です。
結構ノリのよい音楽と映像の融合には魅せられましたけど。
男子校のノリはイマイチわかりませんが(笑)、根底は戦争って何もかも変えてしまう怖さも持ち合わせる・・・という作品でした

ううっ、またしてもTB出来ませんでした。
また後から再チャレンジしてみますね。

でで、映画ですけれど、、
ワタシもこの映画を観て、いろいろ思うことがあったけれど、
何より自然に洗脳されて行くところが恐ろしかったです。
あの「地獄の黙示録」で興奮する姿にはもう・・・ですよね。
戦争映画でありながら、青春映画でもあり。
あの体験で、自分と如何に向合って精神を保つか、
そして、どのように壊れて行ったのか、
そんなことを訴えているようでした。

charlotteさん、こんにちは♪
どんどん投入されていく兵士の数、そして半年近い待機時間。というのに、リアリティを感じました。
海兵隊には女性がいないんですよね。過酷な訓練だし、男子校のノリになってしまうんでしょう。(にっこり)
戦争の虚しさを感じました。

Puffさん、こんにちは♪
兵士は、訓練によって洗脳されてしまうんですよね。本当に恐ろしいことです。
確かに、「青春映画」でもあるんですよね。
現代の若者が、自ら志願して戦場に赴き、そして壊れてしまう。
虚しいですね。

>スオフォード。カミュの“異邦人”を読む文学青年
後半の髪を伸ばした彼の方が、最初より、知性的にみえましたね。「ぼくのこことは、いまも、サバクにある」。って、なかなか、文学的ですもんね。

悠さん、こんばんは♪
確かに、後半のほうが知性的に見えました。
何かを乗り越えたからでしょうか。
でも、その変化が悲しかったりもします。

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