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『死者の書』

日本を代表する人形アニメーション作家、川本喜八郎監督が、折口信夫の「死者の書」を映像化した、人形でなければ表現できない世界に陶然とする。

thebookofthedead8世紀半ばの奈良・平城京を舞台に、当時の日本人の信仰や世界観をふまえて、非業の死を遂げた大津皇子のさまよえる魂を、一途な信仰によって鎮めようとする藤原南家の郎女(いらつめ)の姿を描いている。

まず目を奪われるのは、人形たちの鮮やかに美しい衣装。
風に舞う衣の袖や裾、髪の毛の表現にうっとりする。

非業の死を遂げた大津皇子の亡霊が持つ「執心」の情が、観世銕之丞の深い声から伝わってくる。
藤原南家の郎女の備える、知性とひたむきな信仰心。こちらの声は、宮沢りえ。
表情のない人形の顔から、にじみ出てくる「執心」や「慈愛」の感情が素晴らしい。

行方不明になった郎女を神隠しにあったとして、「魂乞(たまごい)」で呼び戻そうとする風習など、古代日本人の魂や自然への畏敬を表す描写も興味深い。
そんな奈良時代に、仏教という新しい思想へどう向かい合っていったのかも、面白く観た。

そして、ナレーション(岸田今日子)が語る言葉もまた美しかった。
難しそうだけれど、折口信夫の原作も手に入れたいと思う。

「ひさかたの天二上(あめふたかみ)」という、「死者の書」の背景を説明する短編(13分)が、本編の前に上映されている。
これが、かなり静かな作品。淡々とした寺田農のナレーションが、かなり辛かった。

Respect川本喜八郎」という特集が、現在ユーロスペースで上映されているので、そちらにも行くつもり。

岩波ホールにて(公式サイト

監督/脚本:川本喜八郎
声の出演:宮沢りえ、観世銕之丞、三谷昇、新道乃里子、榎木孝明、江守徹、黒柳徹子、岸田今日子

THE BOOK OF THE DEAD  2005 日本

      

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コメント

雑誌でみてはいたんですが、たぶん、私の近所の映画館まわってこないよね、ってあきらめてたんですよ。魂乞、ここから「恋」ってのが、でききてるんですよね、日本の場合は。魂が欠ける、気欠れ(けがれ)、も、これと関係ありそうですね。

悠さん、こんばんは。
なるほど、恋と乞いですものね。
公式サイトでみられる予告編にも、魂乞の場面が使われています。
なかなか素敵な予告編ですよ。
奈良県による「平城遷都1300年記念事業」らしいので、西のほうでもやるのではないかと思います。
平城遷都1300年って、2010年ですよね。
奈良県で、大掛かりに何かを企画しているのでしょうか。

やっと、見てきました。ほんと、人形ならの映画ですね。
でも、古代の日本って、外来の仏教を導入するし、都は、唐の都そっくりにつくるってんですから、エネルギーはすごいですよね(^^ゞ。

悠さん、こんにちは。
ご覧になったのですね。美しい映画でした。
古代の日本は、外来文化をかなり積極的に取り入れていたのですよね。それって、今と変わらないことなのかも。
外国に追いつこうというエネルギーは、確かに凄いと思います。
仏教が新興宗教って、今となっては不思議です。

>いわいさま
風知草のとみです。思いっきり文化レベルの低い生活をしておりまして,気後ればかりでコメント一つ出来ませんでした。
やっとマイタウンにも死者の書が来ました。美しくも難解なものでした。日本古来のたくさんの美しい魂を紡ぎ織り上げたものには間違いないのですが,一つ一つのモチーフに納得し関連付けないと落ちない性分が邪魔をして苦しんでいます。鳴弦,魂乞,謡曲,人形浄瑠璃…。
また,勉強に寄せて頂きに参ります。

とみさま、こんばんは。コメントありがとうございます。
人形アニメーションならではの美しさに心を奪われて、うっとりしているうちに終わってしまったのでした。難解さに至る前に、それぞれのモティーフを楽しんだといったところでしょうか。単純なのです。
原作を手に取ってみたいと思いつつ、まだなのです。読んでみたら、わたしも難解さに苦しんでしまいそうです。
手前勝手な感想ばかりで、こちらのほうがお恥ずかしい。気後れなんてなさらずに、とみさまの深いコメントお待ちしております。
ただ今気持ちに余裕がないのですが、落ち着いたら、こちらからも訪問させていただきますね。

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【岩波ホール@神保町】8世紀半ば、奈良の都。平城京の大貴族、藤原南家の姫、郎女(声:宮沢りえ)は“称讃浄土経”を一心に写経し、仏の教えに帰依していた。春分の日、郎女は二上山の上に荘厳な俤びとの姿を見て、千部写経を発願する。1年後の春分の日、郎女は、千部目の最後の文字を書き終えると、... [続きを読む]

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