« 2006年1月 | トップページ | 2006年3月 »

2月のまとめ

2月に観たもののまとめ。

芝居と映画のバランスはこのくらいが良いかもしれない。

映画は、12本。
今月の1本は、断然『ヤンヤン 夏の想い出』なんだけど、新作ではないのだ。
新作のなかでは、『クラッシュ』。
予告編を観て、苦手かもと思っていたメランコリックさはそれほどなくて、複雑な人間模様をまとめあげた脚本と演出が素晴らしかったと思う。
気がついたら、『タブロイド』がとんでもなく遅い時間のレイトショーになっていて、見逃しそうな予感。

エリ・エリ・レマ・サバクタニ
死者の書
ジャーヘッド
キング・コング
クラッシュ
拘束のドローイング9
単騎、千里を走る
ナイト・オブ・ザ・スカイ
秘密のかけら
ふたりの5つの分かれ路
ヤンヤン 夏の想い出
THE 有頂天ホテル

芝居は、歌舞伎も含めて6本。(労働者Mの2回目は含まず)
今月は、『京鹿子娘二人道成寺』に決まりでしょう。
何回観ても良いと思ったくらい、美しさを堪能した。
また2年後くらいに、再演希望。

ヴァンパイア・レジェンド
桜飛沫
ヨイショ!の神様
労働者M

二月大歌舞伎 昼の部
 「春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」
 「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」陣門・組打
 お染久松「浮塒鷗(うきねのともどり)」
 極付「幡随長兵衛」
二月大歌舞伎 夜の部
 「梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)」
    鶴岡八幡宮社頭の場
 「京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)」
    道行より鐘入りまで
 「人情噺小判一両(にんじょうばなしこばんいちりょう」

『労働者M』千秋楽

先日観たのに引き続き、千秋楽を観劇した。(前回の感想はここ

中2階右袖の席からなので、さすがに観にくかった。
芝居の印象自体はそれほど変わらず。
現代日本パートのラストには、人間というものへの優しさがなんとなく感じられたような気がした。

前回は、1回だけだったカーテンコール。
2回目、KERAがはじっこにいた。やはり大きい。
で、空手バカボンの「労働者M」が流れると、場内が手拍子。かなり長い間の手拍子の後に、松尾スズキに続いて全員が登場。
KERAが「ありがとうございました〜」と言って、おしまい。

『ヴァンパイア・レジェンド』

vampireジョセフ・シェリダン・レ・ファーニュの小説「カーミラ」の舞台化。
永遠の命を持つ美しいヴァンパイア“カーミラ”と少女ローラという女性の役を、青年吸血鬼“ゼーリヒ”と青年“ジョージ”と男性に置き換えている。

友人もなく、母親と孤独に暮らす青年ジョージの前に、妖しい魅力を持つ若者ゼーリヒが現れる。心を惹かれ合う2人。しかし、ゼーリヒは謎を秘めた存在だった。

ジョージ役が曽世海児でゼーリヒ役が笠原浩夫なので、ヴィジュアル的には大満足だし、貴族らしい優雅な身のこなしも堂に入っていて、それだけでも観ているのが楽しい。衣裳もとても美しくて、2人ともよく似合っていた。

孤独に暮らすジョージが昔を回想するという形で進む。なので、ジョージがしゃべりっぱなし。もう感心するぐらいのセリフ量。
曽世海児は、さすがにきっちりと聞かせてくれたけれど、それでも説明的だという印象は否めない。
シンプルな舞台美術。ジョージのセリフにあわせて、登場人物が出たり入ったりの演出は、『白夜行』を思い出させる。
それほど複雑な構成ではないせいか、少々単調に感じられてしまった。

ゼーリヒの妖しい美しさは、笠原浩夫ならでは。マントさばきも美しく、うっとり〜。でも、彼の素性を問うジョージに答えられないで発する慟哭は、ちょっと唐突で大げさに感じてしまった。ゼーリヒは、ジョージを愛していて仲間にしたいと思っているようなのだけど、伝わりにくい。
ジョージがゼーリヒに抱く愛情は、彼の孤独な感情も含めて、饒舌なセリフの合間からとてもよく伝わってきたのに、残念。ゼーリヒが吸血鬼であることがわかった時の表情と演技など圧巻で、会場中が引込まれていた。
2人のキスシーンには、度肝を抜かれたけれど、お耽美で良し、、でしょ。(やおい系?)

で、少々疑問なのは、プロローグとエピローグ。
パソコンを使う青年が出てきて、文章作成中に知らない城のイメージが割り込んでくると言っている。そこにジョージが現れて、今も彼は生きている、という結末。
プロローグの時点でオチはわかるんだけれど、城のイメージが割り込んでくるという陳腐な設定は冷めてしまうし、現代パートが中途半端。もうひと工夫あったら、余韻が残ってよかったと思うんだけど、惜しい気がする。

今回は、女性役の人たちがとても良かった。ゼーリヒの母役の舟見和利とジョージの母エリザベス役の林勇輔。髪型もヘンではなかったし。
しかし、ヴァンパイアの秘密を暴く大事な人物シュピールスドルフ将軍役の寺岡哲は、いただけなかった。こちらも、ジョージなみに説明的なセリフを話すんだけれど、本当に説明でセリフになっていない。

Studio Lifeの公演は、休憩をはさんで3時間を超えることが普通。なので、今回も覚悟していたら、休憩無しの2時間10分だった。
いつも感心する脚色だけれど、全体的に説明的セリフが多すぎると感じた。

本日は、おまけにトークショー付き。
司会は関戸博一と藤原啓児で、吸血鬼にちなんで血液型に関する話し。
劇団員を血液型毎に前に出して、血液型の特徴を読み、代表者に質問する形式。
A型とO型が多い。B型が3人。AB型が4人。
O型で質問された、曽世海児が「血液型による分類を全否定論者だ」と言ったのが面白かった。場は少し凍りついたかんじ。隣の河内喜一郎が「僕は信じています」とフォローしていたけど。
わたしも血液型分類は無意味だと思っているので、トークショーの進行を冷めた目で見守っていたので、すっきりしたかも。
でも、事前に根回ししてないの?と疑問にも思った。
それにしても、デジカメやビデオ撮影の人が凄かったので、驚いた。

アートスフィアにて(Studio Lifeの公式サイト

脚本/演出:倉田淳
出演:[Venomチーム]笠原浩夫、曽世海児、林勇輔、関戸博一、藤原啓児、寺岡哲、三上俊、青木隆敏、下井顕太郎、大沼亮吉、深山洋貴、河内喜一郎、船戸慎士、篠田仁志、舟見和利

『死者の書』

日本を代表する人形アニメーション作家、川本喜八郎監督が、折口信夫の「死者の書」を映像化した、人形でなければ表現できない世界に陶然とする。

thebookofthedead8世紀半ばの奈良・平城京を舞台に、当時の日本人の信仰や世界観をふまえて、非業の死を遂げた大津皇子のさまよえる魂を、一途な信仰によって鎮めようとする藤原南家の郎女(いらつめ)の姿を描いている。

まず目を奪われるのは、人形たちの鮮やかに美しい衣装。
風に舞う衣の袖や裾、髪の毛の表現にうっとりする。

非業の死を遂げた大津皇子の亡霊が持つ「執心」の情が、観世銕之丞の深い声から伝わってくる。
藤原南家の郎女の備える、知性とひたむきな信仰心。こちらの声は、宮沢りえ。
表情のない人形の顔から、にじみ出てくる「執心」や「慈愛」の感情が素晴らしい。

行方不明になった郎女を神隠しにあったとして、「魂乞(たまごい)」で呼び戻そうとする風習など、古代日本人の魂や自然への畏敬を表す描写も興味深い。
そんな奈良時代に、仏教という新しい思想へどう向かい合っていったのかも、面白く観た。

そして、ナレーション(岸田今日子)が語る言葉もまた美しかった。
難しそうだけれど、折口信夫の原作も手に入れたいと思う。

「ひさかたの天二上(あめふたかみ)」という、「死者の書」の背景を説明する短編(13分)が、本編の前に上映されている。
これが、かなり静かな作品。淡々とした寺田農のナレーションが、かなり辛かった。

Respect川本喜八郎」という特集が、現在ユーロスペースで上映されているので、そちらにも行くつもり。

岩波ホールにて(公式サイト

監督/脚本:川本喜八郎
声の出演:宮沢りえ、観世銕之丞、三谷昇、新道乃里子、榎木孝明、江守徹、黒柳徹子、岸田今日子

THE BOOK OF THE DEAD  2005 日本

      

漢字バトン

ミチの雑記帳」のミチさんから漢字バトンを頂きましたぁ!
どうなることやらわかりませんが、とりあえず回答してみます。

Q1.前の人が答えた漢字に対して自分が持つイメージは? 

【桜】
春、です。染井吉野発祥の地に住んでいるので、周囲は染井吉野ばかりですが、葉っぱが先にでる山桜の薄桃色が好き。
好きな歌舞伎でも、桜は華やかな舞台装置です。

【門】
どこかへ行く時、物事を知る時など、通らなければならないところ。

【道】
高村光太郎の「道程」を思い出しちゃいます。

「僕の前に道はない
 僕の後ろに道は出来る」

Q2.次の人に回す言葉を3つ

【春】【雨】【遊】

Q3.大切にしたい言葉を3つ

【艶】映画や芝居に求めていることのひとつ。
【明】性格も考え方も、こうありたい。
【極】つきつめたものが好き。

Q4.漢字のことをどう思う?

表意文字は、絵的でもあり素晴らしいと思っています。

Q5.最後にあなたの好きな四字熟語を3つ教えてください

「一期一会」
映画や芝居を観る時には、この姿勢で臨みたいと考えています。

「花鳥風月」
四字熟語?かな。これを愛でることができる感性を大切にしたいです。

「無病息災」
何をするにも、体が資本です。

Q6.バトンを回す7人とその人をイメージする漢字を。

ちょっと、考えつかないのでパスさせていただきます〜。

言葉は好きなのです。
いろいろと考えることができて、頭の刺激になりました。
面白かったです。

『ナイト・オブ・ザ・スカイ』

航空アクションものは、スピード感、臨場感、浮遊感が命。
フランス空軍を舞台にしたこの映画は、名機ミラージュ2000を使用して見事にそれらを実現している。

leschevaliersduciel国際的な陰謀を解明するべく、危険に立ち向かう主人公の冒険らしいけれど、はっきりいってストーリィは二の次。

監督は、『TAXi』で時速300キロのカーチェイスを映像化したジェラール・ピレス。
冒頭のドッグ・ファイトから、迫力満点。奪われたミラージュ2000と空軍パイロットとのミラージュ2000が3機入り乱れてのドッグ・ファイトに大興奮。
雲の上から海上まで縦横無尽の猛チェイス。
アルプス上空のロマンティックなランデヴー。
パリ上空のスペクタクル。
スカイ・アクションには大満足。

そして、もう一つ。主人公の敏腕パイロット、アントワーヌ・マルシェリ大尉を演じるブノワ・マジメルが、格好良い〜。
ヒゲは微妙だし、共演女優に比べて背も高くないけれど、コクピットにいる時のヘルメット姿も素敵だ。そして、空軍の制服がまたとってもよくお似合いなのだ。もう萌えるしかないでしょう。

フランス映画ならではのおしゃれ感もそこはかとなく漂って、そのせいなのかどうなのか、結局、陰謀って?という疑問もあり。それほど入り組んでいるわけではないけれど、動機の説明くらいはしてもよいのでは。
結局、真犯人は逃げてしまっているから、続編もありということなのかな。
ラヴシーンの省略のすごさには笑えた。

シネ フロントにて(公式サイト

監督:ジェラール・ピレス
出演:ブノワ・マジメル、クロヴィス・コルニアック、ジェラルディン・ペラス

LES CHEVALIERS DU CIEL  2005  フランス

『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

絶望を変えることができるのは轟音だけ。
圧倒的な音と美しい映像に身を委ねる映画。

elieli2015年。世界中に蔓延する正体不明の致死ウィルス。そのウィルスは視覚映像によって感染し、感染者は<自殺>という方法で死に至る。メディアはそれを“レミング病”と呼んだ。
富豪のミヤギは、感染した孫を救おうと、発病を抑制する方法を必死に探す。探し当てたその方法は、ある2人の男が演奏する“音”を聴くこと。

浅野忠信と中原昌也が演じるミュージシャンが、音を採集する場面から映画は始まる。風の音、波の音など、自然の中に存在する音を採集し、掃除機のホースなど、モノから音をつくる。彼らがつくりだす音楽は、轟音のノイズ。
希望の象徴であるその“音”をつくり、演奏する彼らの確かな存在感。実際にミュージシャンでもある彼らならではの迫力があった。
ビートがないから乗ることを許さない、ただただ圧倒的なノイズに包まれる。

未来の物語なのに、ちょっと懐かしいようなくすんだ色の美しい映像。
そして、鼓膜が痙攣し、体全体が包まれるような轟音体験。
映画館で体験するべき映画。

シネセゾン渋谷にて(公式サイト

監督・脚本:青山真治
撮影:たむらまさき
美術:清水剛
音楽:長蔦寛幸
出演:浅野忠信、宮崎あおい、中原昌也、筒井康隆、岡田茉莉子、戸田昌宏

Eli,Eli,Lema Sabachthani?  2005 日本

『THE 有頂天ホテル』

三谷幸喜監督作品。主要キャストだけでも23人(と1羽)の群像劇。

uchoten三谷作品といえば、バラバラな人々がそれぞれの個性を発揮しながら、一つにまとまっていき、大団円を迎える物語が、なんとなく現実離れして作り込まれた場所で展開するというものを想像する。この映画もそうだった。23人(と1羽)もの登場人物を混乱させることなく、きっちりと描く手腕は見事だと思う。

老舗ホテルを舞台にして、大晦日に繰り広げられる<働くホテルマン>と<訳ありの宿泊客たち>のやり取りが、ホテルの威信をかけた年越しカウントダウンパーティーへ向かって展開する、という物語。

乗れそうなところで乗り切れない思いを抱いてしまうのは、どうしてなのだろう。
強引にお話しが展開するのはいつもの三谷節だとは思うけれど、やはり描き込みが不足している感は否めない。こう展開したいんだろうな、と冷静に考えてしまう。
時々芝居が大げさになって、周囲に人がいないかのように感じられてしまうのは、舞台っぽい演出のせいなのか。全体的に、トーンが不統一でまとまりがないような気がしてしまう。
細かいところでは、結構笑えたけれども、大団円に向かう高揚感を感じることができなかったのだ。

この映画世界にハマっていて面白いと感じたのは、アシスタントマネージャー役の戸田恵子、議員秘書役の浅野和之、筆耕係役のオダギリジョー、演歌歌手の付き人役の梶原善、といった面々。
逆に、今ひとつだと思ってしまったのは、副支配人役の役所広司と客室係役の松たか子。特に、役所広司は顔が深刻すぎて、ホテルの副支配人にみえない。

ラスト近くに、汚職国会議員役の佐藤浩市と役所広司が2人になってのやり取りは、さすがに聞かせてくれたけれど。

ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズにて(公式サイト

『ジャーヘッド』

湾岸戦争といえば、リアルタイムで届けられたニュース映像を思い出す。テレビゲームのように現実味のない映像。
ハイテク兵器を駆使した“現代戦”の現実を、若き兵士の手記を原作に描いた映画。

jarhead海兵隊に入隊したアンソニー・スオフォードは、厳しい訓練に耐え、斥候狙撃兵としてサウジアラビアに派遣される。
しかし、当面の任務は油田警備。長い待機の日々に、エネルギィをもてあます彼らの鬱屈した思いは、次第に狂気をおびていく…

米軍の中でもエリート集団で、過酷な訓練が予想できる、海兵隊に志願したスオフォード。カミュの“異邦人”を読む文学青年の彼が、軍隊の現実にうんざりしながらも、過酷な訓練に耐え、戦地での活躍を考えるようになっていく様がリアルに伝わってくる。『地獄の黙示録』のヘリ編隊が殺戮を行う場面を見ながら、ワーグナーを一緒に歌い歓声をあげる兵士たち。この場面で気分が高揚するのはわかるけれど、殺すことを厭わぬ方向へ洗脳されていることに怖さを感じる。

しかし、高揚しつつ砂漠へ乗り込んだ彼らの任務は、ただひたすら指令を待つことだった。敵のいない砂丘に手榴弾を投げ、想像の地雷原を進む訓練の毎日。
兵士たちの単調な日常が、ラップなど、軽快で激しい音楽とともにテンポよく描かれる。

この映画には、全体を覆う微妙な緊張感がある。戦争映画でありながら、戦闘シーンはほとんどない。戦地にいる兵士たちの日常から伝わってくるのは、彼らが確実に蝕まれているということだ。

スオフォードとその相棒トロイにやっと下された命令。その命令を待ち望んでいた彼らの気持ちが、わかるような気がしてしまう。   
そして、その顛末には同情も覚えるが、それは彼らが確実に壊れていることを感じて哀しかったからだ。

アメリカに帰って「自分はジャーヘッドであり、まだ砂漠にいる。」というスオフォードは、何かが確実に変わってしまったのだ。

“ジャーヘッド”とは、お湯をいれるジャー(びん)のような高く刈り上げた髪型からついた、海兵隊員の呼び名のこと。

ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズにて(公式サイト

監督:サム・メンデス
出演:ジェイク・ギレンホール、ピーター・サースガード、クリス・クーパー、ジェイミー・フォックス

JARHEAD  2005  アメリカ

『二月大歌舞伎』夜の部

jigutianndonn地口行灯が楽しい。(説明は、歌舞伎座サイト内こちら
←写真手前から
「ふのり一わでくいたらねど」
「忍び寄る老いは曲者」
と書いてある。
ちょっと腑抜けた絵も可笑しい。

一、「梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)」
    鶴岡八幡宮社頭の場

それなりによくかかる演目なので、結構観ている気がする。幸四郎の梶原平三は多分初めて。
主人公梶原は、思慮深くて、すっきり爽やかな捌き役のはずだから、幸四郎はニンではない気がしてしまう。セリフ回しがねちっこい。六郎太夫と梢に情をみせる場面では、逆にデレデレしているように感じてしまった。
六郎太夫の歌六は、これからこういう老け役が回ってくるんだろうと思ってみていた。もう少し、枯れたかんじが良いかも。
配役を把握していなかったので、俣野五郎が愛之助だったのに驚いた。それほどニンではないと思われるのに、憎々しいかんじがなかなか。
この芝居、とても長く感じてしまった。
梶原平三景時:幸四郎/娘梢:芝雀/俣野五郎景久:愛之助/囚人剣菱呑助:秀調/青貝師六郎太夫:歌六/大庭三郎景親:彦三郎

二、「京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)」
    道行より鐘入りまで

女形舞踊の代表的演目「京鹿子娘道成寺」を、2人で踊る趣向。2人とも「花子」というのが、ちょっと変わっている。
二年前に、同じ玉三郎と菊之助の2人で踊った舞台の再演。
花道を菊之助が1人で歩いてきて、後から玉三郎がドロドロ〜とすっぽんから出てくる。1人よりも人間でないかんじが強く、シンクロして踊る姿がとても妖しい。
この2人は、中性的というかあまり生っぽくないところが合っていて、2人並んだ姿がとてもバランスが良いと思った。
そして、手を合わせたりして絡む時、とても妖しい雰囲気を作り出しいてうっとりとさせられる。
菊之助も綺麗だけど、やはり玉三郎が出てきた時にジワがくる。玉三郎のほうが鐘への執着を感じさせてくれて、やはり恐ろしかった。
とにかく、あっと言う間に終わってしまって、もう一度観たいと思わせられる夢のようなひととき。
白拍子花子:玉三郎/白拍子花子:菊之助

三、「人情噺小判一両(にんじょうばなしこばんいちりょう」
若い時に放蕩の限りを尽くして堅気になった笊屋が、浪人の息子を助けた。そして、浪人に同情して、父の形見の一両を渡す。その様子を見ていた侍は、その義心に感じ入り、笊屋を料亭でもてなす。侍が見て見ぬふりをしたことをなじる笊屋。
笊屋の意見を納得した侍は、2人で浪人を訪ねるが…

あらすじは、単純。でも、笊屋の気持ちと、侍の気持ちと、浪人の気持ち、全てが伝わってこないと納得しにくい芝居だから、演じる役者は難しいと思う。
笊屋は菊五郎、侍は吉右衛門、浪人は田之助。役者が揃って、悲劇ではあるが余韻を残す物語になっていた。
懐の深い侍と、酸いも甘いも噛み分けた町人。
吉右衛門と菊五郎の組み合わせが素晴らしかった。
笊屋安七:菊五郎/ 小森孫市:田之助/ 浅尾申三郎:吉右衛門

歌舞伎座にて

『拘束のドローイング9』

クレマスター』シリーズで有名な、現代美術界のスパースター、マシュー・バーニー。以前、『クレマスター』全5作品を上映した時には観に行くことができなかったので、今回の上映を聞いた時はうれしかった。
しかも、パートナーであるビョークも出演していて、音楽も担当しているんだから、余計に楽しみというもの。

drawingrestraint舞台は日本。南極に向けて航行する捕鯨船に、男女ふたりの西洋の客人がたどり着く。身を清め、毛皮の婚礼衣装をまとい、船内の茶室に導かれ、茶をもてなされるふたり。そして、ふたりは激しく求めあい、部屋は水没していく。
鯨の解体ナイフを手に、お互いの足を切りつけあううちに、やがて変貌するふたり。

アートだから物語はないものと思っていたが、“捕鯨船で出会った男女が変貌するラヴストーリィ”という大まかな筋らしきものがある。そして、期待していたのは“強烈な美”か“驚愕”だったけれど、それもちょっと違っていた。
日本が舞台で、日本の伝統文化をモチーフにしていても、それをマシュー・バーニーの作品化するから、結果として日本のものではなくなっている。
そのズレが笑えてしまったのだった。
執拗に繰り返される《フィールド・エンブレム》のイメージ。(楕円に長方形を組み合わせたシンボル。楕円の部分が身体で、中央に重なる長方形が負荷を意味する)
毛皮の婚礼衣装。着付けをするのは(捕鯨船の上なのに)旅館の仲居さんのような女の人たち。貝殻などを使った髪飾り。骨で作った草履。
茶室の装飾は、藤壷びっしりの柱と珊瑚でできた花。
茶道具も、貝殻のような茶碗、茶筅も貝殻、などなど。

多分本当の捕鯨船を使ったんだろう、捕鯨シーンが面白かった。
海女さんも登場していたり。

儀式的な表現がとても多くて、そのあたりが日本のイメージなのかと想像する。

『クレマスター3』は、 2006年初夏に渋谷アミューズCQNにて特別限定公開決定したらしい。

シネマライズにて(公式サイト

監督/脚本:マシュー・バーニー
音楽:ビョーク
出演:マシュー・バーニー、ビョーク、大島宗翠、

DRAWING RESTRAINT  2005  アメリカ

<追記>2015
マシュー・バーニーについては、このページに詳しくのってます。

Artsy’s Matthew Barney page:
https://www.artsy.net/artist/matthew-barney

『労働者M』

大きなスクリーンに台本を投影している前で、ニセ堤とニセ小泉が行う前説が微妙な雰囲気を作る。笑っていいのかどうか、とまどう観客席。
ヌルいかんじに暖まったところで、オープニングの歌「労働者M」。

【未来編】と【日本編】が交互に語られる。
【未来編】戦争で崩壊した世界。自由と引き換えに、食料と安全な寝場所が提供される収容所が舞台。そこは、管理側と収容者側が責任者の意向によって変わるシステム。革命家たちが潜入して収容所の秘密を探るが、彼らの目的は失われていく。
【日本編】現代の日本のある事務所。自殺志願者の悩みを聞く“命の電話”を隠れみのに、悪徳商法で相談者からだまし取っているらしい。職員たちもかつての相談者だった。皆が慕っている室長の不在が続き、相談電話も減少、職員たちは互いにいがみ合う。

この2つの世界が交わるのか、全く関係ないのか、と気になりながら観る。全く違う2つの世界。キャラクタが違う2役を演じる役者たち。
ところどころの“欠損”や映像ギミックが面白い。
結局、交差しないまま終わってしまったけど、カタルシスある終わり方をKERAに求めてはいけないんだろうな。

管理者側制服姿の小泉今日子と堤真一が格好良くて萌えでした。
日本編のビッチな魅力のキョンキョンもマル。
松尾スズキが何でもないセリフを発する姿は、面白すぎて目が離せない。
秋山菜津子の切れっぷりもいつもながら素敵。

とても面白く観ることができた。でも、もう1回観るとなると微妙。
楽日のチケットが取れているので、もう1回観るんだけれど。。

芝居とは全く関係ないけれど。鈴木杏と市川実和子と石井克人監督を見かけた。
鈴木杏は、小泉今日子(空中庭園)関係かな。連れが鈴木杏ファンだったので、とても感謝された。
市川美和子は、大人計画の次回公演に出演するのね。チラシもらった。
石井克人監督は、芝居好きなの?と思っていたら、『ナイスの森』のチラシももらった。貫地谷しほりが出るのね。

パンフの蜷川幸雄対談シリーズのゲストは、尾上菊之助だった。
蜷川さんは、菊之助のことをとても好きらしい。(「仲の良い年少の友人」だそう。)

シアターコクーンにて(公演情報

作/演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
美術:中越司
音楽:伊藤ヨタロウ
出演:堤真一、小泉今日子、松尾スズキ、秋山菜津子、犬山イヌコ、田中哲司、明星真由美、貫地谷しほり、池田鉄洋、今奈良孝行、飯塚祥司、山崎一

『桜飛沫』

阿佐ヶ谷スパイダースの新作時代劇。
第一幕「蟒蛇如(うわばみのごとく)」と第二幕「桜飛沫(さくらしぶき)」との二幕構成。
かつては仲間だったふたりの男が、それぞれを主人公とした一幕ずつで別々に描かれ、最後にまたひとつになるという物語。一幕目は、ある貧しい田舎の村、二幕目は寂れた宿場町、とガラリと変わる舞台美術。

一幕目。男が蛇を食べる習慣を持つ貧しい村。精がつくせいか、子沢山の夫婦が多い。村を仕切る悪徳兄弟の打ち出した“三人っ子政策”に対抗するため、避妊の知識を広めている過去に訳ありの医者がいた。
主人公は、橋本じゅん演じる医者の徳市。軽いキャラとして放つギャグから、村人から理解してもらえないことへの焦りや哀しみまで、自在に行き来する表現が素敵。
暗くて閉塞した田舎の村に吹きだまるどす黒い悪意がドロドロ〜っていう物語のハズなのに、案外あっさりとした印象。殺し殺されるということがそれほど不自然ではない時代劇という設定のせいなのか。

二幕目。強欲非道な男とその仲間に蹂躙され、すっかり寂れた宿場町。そこに流れ着いたお尋ね者。美人の妹と頭の弱い姉は、彼に興味を抱いて、自分の旅籠屋に招く。彼女たちは、姉の夫からのひどい暴力に耐えていた。
ちょっと西部劇風味な舞台装置に、桜の大木が美しい。
この幕の主人公は、山本亨演じるすっかり毒気を抜かれたお尋ね者の佐久間。
頭の弱い女に癒される流れ者の男という設定は、ちょっと典型的かと。姉役の峯村リエと妹役の真木よう子は、それぞれ存在感があって良かったけれど。
寂れた宿場町のどん詰まりの状況が、流れ者が侵入してきたことによって変化するけど、変化したところで腐っていることには変わりがない、という展開なのに、それほどイヤ〜な感じにならないのは、これも時代劇の設定だからなのか。

新感線で馴染みのある人も多かったので、すごい殺陣を期待していたら、それは無し。阿佐ヶ谷スパイダースだから、仕方ないのか。少しもったいないような。刀の音や殴る音の効果音が今ひとつ。

時代劇の設定にしたことによって、いつもよりもドロドロ感が薄まっている気がするが、それが良いのかどうかは、微妙。
豪華な出演陣をほとんど一幕ずつしか使わないというのももったいない。
役者たちの演技は面白いと思ったけれど、舞台全体として考えると、何となく個人プレイでアンサンブルとしてはチグハグだったように思ってしまう。
それが、一番不満なところ。
最後の場面で、ふたりの主人公が相対する場面は格好良かったし、幕切れもあっさりしていて結構気に入った。(歌舞伎みたいだと思った)

世田谷パブリックシアターにて(公演情報

作・演出:長塚圭史
出演:山本亨、橋本じゅん、水野美紀、峯村リエ、山内圭哉、猫背椿、市川しんペー、真木よう子、吉本菜穂子、富岡晃一郎、川原正嗣、前田悟、横山一敏、大林勝、中山佑一郎、伊達暁、長塚圭史

『クラッシュ』

crash人種のるつぼ、ロサンゼルスを舞台に、人々の人生が交錯する36時間を切り取った群像劇。
自動車事故(=クラッシュ)で始まり、人と人との衝突(=クラッシュ)が繰り返される。登場人物たちの運命が変わる瞬間を丁寧に描いて、鮮やかな印象が残る。

刑事たち、自動車強盗、地方検事とその妻、鍵屋とその娘、雑貨屋、TVディレクタとその妻。さまざまな職業、そしてさまざまな人種。
まず、強烈な人種差別意識に驚かされる。
アジア系の女性から「メキシコ女」とののしられた女性は、自分の両親はプエルトリコ人とエルサルバドル人で、メキシコ系ではないと言う。「アラブ人」とののしられた男性の娘は、アラブ人ではなくペルシア人なのにと言う。
相手の人種をはっきり認識できているわけでもないのに、ちょっとした特徴を捉えて罵倒できてしまう、その差別意識の根深さにやりきれない思いを抱いてしまう。

多様化している人種構造は、複雑に絡まりあう差別意識となって表れていて、差別する側と差別される側の関係は、一筋縄ではいかない。
そして、人種間の問題だけでなく、夫婦間や親子間の心の行き違いまで踏み込んで描いている。彼らの人生を描くリアルな断片が、少しずつ重なっていく展開がスリリングで、目が離せない。

この映画が素晴らしいのは、人間を単純に描いていないということ。
ある場面では悪人であった人間が、別の場面では感動的ともいえる献身を見せたりする。その逆もあり。善人とか悪人とかを簡単にカテゴライズできるほど人間は単純ではなく、多面的な生き物であるということを浮き上がらせる過程が見事。
そして、ちょっとしたきっかけで人生が良くも悪くも変わることがあるということも描いて、希望と悲しみと両方を感じさせてくれるラストは、胸に響いた。

俳優たちのリアルな演技が、この作品で描かれるそれぞれのドラマを素晴らしいものにしている。その代表はアカデミー賞にノミネートされたマット・ディロンだろうけれど、他の俳優たちも本当に素晴らしかった。(拍手)

シャンテシネにて(公式サイト

監督/原案/脚本:ポール・ハギス
脚本:ボビー・モレスコ
出演:ドン・チードル、マット・ディロン、
クリス“リュダクリス”ブリッジス、ブレンダン・フレイザー、サンディ・ニュートン、ライアン・フィリップ、サンドラ・ブロック、ショーン・トーブ、マイケル・ペニャ、テレンス・ハワード

Crash  2005  アメリカ

『ヨイショ!の神様』

演舞場の3階席は、団体客や年配の御婦人連れで満杯。
あまりにもにぎやかで楽しそうな客席に、本日は多少うるさくても(おしゃべりとかシャカシャカ音とか)しかたない、と覚悟を決める。

柄本明、中村勘三郎、波乃久里子、藤山直美、あの“浅草パラダイス”シリーズでお馴染みの出演者達が、新たに繰り広げる人情喜劇!

「浅草パラダイス」は未見。(昨年の「空想万年サーカス団」(坂本順治作 串田和美演出)は観た。)

面白いという保証付きの芝居だ。
最初から、笑う準備が整っている客席。テンポよく切り替わる場面に、暖まった雰囲気が壊れることがない。シンプルだけど、昭和初期だとはっきりと示す美術もあって、周囲のオネーサマたちはしっかりと心を掴まれた様子。

特に、中村勘三郎、柄本明、藤山直美が舞台上に揃った時、アドリブなんだか段取りなんだかわからないくらいにこなれているやり取りが、爆笑を誘う。場内の笑い声でセリフが聞こえないのに、それでも笑い続ける観客たち。楽しそうである。
でも、お話しというよりも、彼らのアンサンブルを楽しむといった風なので、それほど乗れない。

太鼓持ち役の中村勘三郎は、さすがのはまり役。初っ端の一人芝居から、引込まれてしまう。ヨイショの極意は「褒めるのではなく、惚れること」。

場面転換時に、小山三と源左衛門が時代背景などを紹介するのはとても良かった。

柄本明は、ほとんど飛び道具な扱いなんだけど、それで良いの?
波乃久里子が、女の悲哀を一瞬で見せていたのが印象に残る。

新橋演舞場にて(公演情報

作:金子成人
演出:ラサール石井
美術:堀尾幸男
出演:柄本明、小池栄子、中村勘三郎、波乃久里子、火野正平、藤山直美

『ヤンヤン 夏の想い出』

まさに至福の映画体験。こういう映画に出会うために、映画館へ通っているんだと思わせてくれる。

YiYiヤンヤンは、祖母、父NJ、母ミンミン、そして高校生の姉ティンティンと台北のマンションに住んでいる8歳の小学生。
母の弟アディの結婚式から、一家に起こる様々な出来事。
脳卒中で倒れる祖母。新興宗教に救いを求める母。隣の部屋に住む女の子の彼と交際してみる姉。初恋の女性と再会した父。
それぞれの生活が淡々と描かれる物語は、それほどドラマティックなわけではない。それなのに、どうして心揺さぶられるのだろう。

BMWに乗る父親、暮らすマンションは家具調度も洒落ていて、彼らの生活が恵まれていることを窺わせる。生活臭のない日々の暮らしに、感情表現を極力抑えた描写。なのに、彼らの気持ちがとてもよくわかるような気がしてしまう。

日本タイトルに名前がはいっているヤンヤンは、映画のアクセント的な存在。
彼はいつも何かを視ている。そして、意味深なセリフを話す。
彼が人の背中の写真を撮っていたのは象徴的だ。
「だって背中は自分では見えないでしょ」

NJと仕事で関わる日本人ゲームプログラマ大田を演じたイッセー尾形も素晴らしかった。ちょっといかがわしくて、だけど誠実で暖かいような、複雑な人物。
また、この映画に出てくる日本の風景もとても美しくて、うれしくなってしまう。

動きを抑えたゆったりとした映像。窓の外から部屋を覗いているような夜のシーンは特に印象に残った。

三時間近い映画なのに、終わってしまうのが寂しい、いつまでも観ていたいと思える幸せを感じた。

原題は “YiYi”(多分“一一”)と“A ONE & A TWO..”。
人生はシンプルだということを表しているのか。

“人生は小説=物語(ロマン)である 〜アルノー・デプレシャンによる特別セレクション〜”という企画での鑑賞。
この映画をスクリーンで上映してくれた東京日仏学院に感謝。
ここで映画を観るのははじめてだったけど、上映環境がとても良く、素晴らしい映像を堪能できたのはここのスクリーンのおかげかも。

東京日仏学院にて。

監督/脚本:エドワード・ヤン(楊徳昌)
出演:
ウー・ニエンジェン、エレン・ジン、ジョナサン・チャン、ケリー・リー、イッセー尾形

A ONE and A TWO / YiYi  2000  台湾=日本


『単騎、千里を走る』

高倉健が主演を演じる、チャン・イーモウ(張芸謀)監督作品。
高倉健といえば、不器用で無口。そんな健さんのイメージを活かしつつ、健さんはいろいろと挑戦させられている。チャン監督は、健さんのことをとても好きなんだろうと思う映画だった。

tanki-senri長い間疎遠だった息子が重病であることを知り、息子の研究していた仮面劇を撮るために、単身中国に向かう親父。
しかし、いろいろな困難が待ち受けるのだった。

健さんは漁師の高田剛一。ヴィデオの配線もできないくらいに不器用な男だ。
息子が重病だと聞いて、いきなり中国に向かい、言葉の通じない中国で立ち尽くす姿は、観ていていたたまれないくらいに居心地が悪い。
だいたい、いきなり中国に向かったけど、そんなこと息子は望んでいなくて、ただのひとりよがりなのでは、と思ってしまうので、更に居心地が悪い。

でも、本当にそういうお話しなのだとすぐに知れる。健さんが、疎遠になっていた息子との仲をなんとか修復しようとひとりで勝手に考えた結果、異国でいろいろと経験し、自分の気が済むように行動する姿を眺める映画なのだ。

次から次へと出現する困難にも、黙って見つめることで立ち向かう。
健さんには、寡黙な立ち姿が良く似合う。
だから、健さん本人による饒舌なナレーションには、ちょっと違和感があった。
しかし、チャン監督はツボを外さない。ラスト近く、ヤンヤンとの別れのシーンでの健さんの背中!何も言葉を交わさなくても、心が通っていることがわかる抱擁。
そして、リー・ジャーミンたちの前で静かにモニターに写し出されるヤンヤンの写真。
もしかすると、ナレーションがあるのはこの場面で言葉がないことを引き立たせるためなのでは、と思えるくらい静かな場面だった。

中国雲南省の風景が美しかった。
出てくる中国の人々はとても良い人ばかりで、我がままで頑固な高田を親身に考えてくれていた。良き国、中国。
中国の観光宣伝映画として、マルでした。

池袋HUMAXシネマにて(公式サイト

監督:チャン・イーモウ(張芸謀)
出演:高倉健、寺島しのぶ、リー・ジャーミン、チュー・リン、ジャン・ウェン、ヤン・ジェンボー

千里走単騎 RIDING ALONE FOR THOUSANDS OF MILES 2005 中国=日本

六本木から表参道まで

六本木ヒルズまで『単騎、千里を走る』を観に行ったが、着いた時には、本日の上映が終了していた。(上映予定を調べていなかったのが悪いのだ)
他の映画を観るにしても、タイムテーブルがあわない。
そういえば、草間彌生がコンセプトを立案したというオリジナルスイーツが買えるということが、ぴあに載っていたよね、と思い出したので、表参道ヒルズまでお散歩することにした。それは、軽い気持ちで。
日陰は寒いけど、風もない、穏やかな散歩日和。のんびりと表参道まで歩く。

gyouretu流行りものには全く興味がないので、甘かった。
なんと、本日オープンだったのだ。(だから、ぴあで特集していたことに後から気づく)
表参道にはいったとたんに、ものすごい人混み。この時点でも、まだノンキなわたしたち。そして、表参道ヒルズに入場するための行列を発見。えっ、どうしようと思う間もなく、人混みに押されて一緒に行列に並ぶことになってしまった。
列を離脱するタイミングを計りながらも、結局30分程度で入場。
激混みの場内に呆然としつつも、目的の“同潤館”はそれほどでもなく、品物を入手!他の場所には目もくれず、さっさと建物から撤収するわたしたちであった。

kusama-pumpkin←草間彌生の絵(8種類)が描かれたパンプキンクッキー12枚入り。
草間彌生の作品は、じっとみていると、色とパターンに幻惑されてクラクラと酔ってしまうんだけど、このパッケージは濃さが薄まっているのか、それほどクラクラを感じない。
パンプキンクッキーも、普通に美味しかった。
loveforever←こちらは、"LOVE FOREVER"(愛はとこしえ)というタイトル。水玉模様の容器に、マーブルチョコがはいっている。
商品説明はここ

初めての人混み体験。二度としたくありません。

『日本のみなさんさようなら』

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』で今話題のリリー・フランキー
彼が、「ぴあ」誌上で94年11月29日号から99年5月10日号まで連載していた「あっぱれB級シネマ」をまとめた文庫。
1本の映画について、1ページをコラム、1ページをイラストと映画データ、という構成で紹介している。全て日本映画の173点。

リアルタイムで読んでいて、毎号楽しみにしていた。
文庫化された2002年、すぐに購入。最近、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』が売れているせいか、これも本屋で平積みになっているのを見て、久々に本棚から取り出した。

前書『長一郎と良子』に激しく同意。当時は、「日本映画はつまらない」ということになっていた。そんな風潮を揶揄する「日本のみなさーん、さよならー」なのだ。

観たことがある映画だったら、納得できるし笑えるし、観たことがない映画なら、気になって観たくなるから、映画の紹介としてマルでしょう。
わたしのお気に入りは、『砂の器』。(64/65ページ)
もう笑うしかないけど、丹波哲郎と加藤嘉への愛があるということもよ〜くわかる。イラストもまた凄い。
他にも笑えるページ満載です。

リリー・フランキー作。文春文庫PLUS。

『モーツァルトは子守唄を歌わない』

各所で評判を耳にする森雅裕の第31回江戸川乱歩賞受賞作。
入手不可能だったけど、復刊ドットコムのでリクエストが集まって、めでたく復刊したもの。

楽譜に隠されたモーツァルトの死に関する謎に挑むのは、楽聖ベートーヴェンとその愛弟子チェルニー。

まず、題名に心引かれる。
そして、ベートーヴェンが探偵役という設定も面白い。
ベートヴェンは、偏屈で人嫌いというわたしが持つイメージ通りのようで、実は、かなり愛すべき人物に描かれている。愛弟子のチェルニーとの漫才のようなやり取りも楽しい。なんてたって、探偵役だから頭も切れるのだった。難聴の兆しが既にあるのが、ちょっと悲しい。

あとがきに、「この物語は創作であり、史実ではない」と書いてある。どうも、史実と違うと文句を言う人がいるらしい。この話しにとても説得力があるという証明だろう。

モーツァルトの死というと「アマデウス」を思い出すし、最近は、ミュージカル「モーツァルト」も観た。
あまり意外性がないかも、と思っていたけど、さすがにひとひねりしてあって、もしかすると、これが真実かもしれないと思ったりする。

楽譜を使った暗号にはあまりピンとこなかったけど、1809年のウィーンを楽しんだ。
魔夜峰央のイラストレーションが可愛い。以後、わたしのベートーヴェンとチェルニーのイメージはこのイラストになるかもしれない。

森雅裕作。ブッキング刊。

『キング・コング』

ピーター・ジャクソン監督のキング・コングへの愛があふれている。
“美女と野獣”のラヴストーリィ映画。

kingkong3時間を超える長さだけど、さすがに飽きさせない。けど、やっぱりちょっと辛かった。(お尻が)
映画は、3つに分かれている。“航海編”、“髑髏島死闘編”、“NY上陸編”。
“航海編”が案外長い。人物紹介だから仕方ないのか。
主要と思われる人物がたくさんいる。映画監督カール・デナム(ジャック・ブラック)、女優アン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)、脚本家ジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)、共演する二枚目男優、監督助手、撮影技師、録音技師など、映画のスタッフたち。そして、船長エングルホーン(トマス・クレッチマン)をはじめとするベンチャー号の船員たち。
債権者に追われながらも、髑髏島での撮影という危険に賭ける監督の理由が、「秘密の地図」1枚というのは、ちょっとどうなの?ではあるけれど。

“髑髏島死闘編”。上陸した島の雰囲気が異常に邪悪。そこかしこに、死体の干物がぶら下がってたり、串刺しになってたり。不気味な遺跡群に圧倒されているうちに、原住民が現れる。これがまた、もの凄く邪悪なヴィジュアル。子供たちは夢に出ちゃうかも。真っ黒に塗られた全身、ほとんど言葉にならないうめき声。

コングの見せる男気が泣ける。自分のところから逃げた女が、三匹の恐竜(「T-REX」が進化した「V-REX」なのだそう)に襲われているところを助け、黙って背中を見せるコング。アンじゃなくても「待って〜!」って言うと思う。そして、自分の孤独な住処へ連れて行き、美しい夕陽をじっと眺めるコング。横顔と背中が男の哀愁を語ってます。これは、女が男に惚れてしまうシチュエイションでは?

一方、アンを助けるために捜索しているドリスコル一行も大変。
ここで、出てくるクリーチャたちが気持ち悪い。巨大な昆虫がぞろぞろ、巨大な芋虫はエイリアンの幼虫みたいだし。そんなのと命がけで戦っているけど、アンは知らないから、ドリスコルは不利だ。

そして、ラスト“NY上陸編”だ。見せ物になっているコングは、逃げ出してアンと再会する。アンに捧げる純情〜!
そんな場合じゃないだろうってくらいに、盛り上がる2人。
美しい朝焼けを眺める2人。そして、訪れる悲しい幕切れ。

アンは、コングを愛したんだろうか?
少なくとも、コングは愛されてると思っただろうから、幸せな結末なのかも。

それにしても、長かった。
意味ありげな船員たちは、あっけなく死んでしまうし。
(ジェイミー・ベルが読んでいた本は、「闇の奥」(コンラッド著)だった。)
でも、コング役にクレジットされたアンディ・サーキスは人間の役もやってて良かったね、と思った。
絶体絶命のピンチを2度も救ってくれる船長も、それだけだったし。
もしや、これもSEE版作るのかしら。

新宿プラザにて(公式サイト

監督/脚本/製作:ピーター・ジャクソン
出演:ナオミ・ワッツ、ジャック・ブラック、エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン、コリン・ハンクス、ジェイミー・ベル、アンディ・サーキス

KING KONG  2005  アメリカ

『二月大歌舞伎』昼の部

今月は、お目当てがないので楽に鑑賞できる月。

一、「春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」
正月七日。長唄の歌詞に七草が詠み込まれている舞踊。
今月は2月だから旧正月ということか!?
曽我兄弟、兄の十郎を橋之助、弟の五郎を歌昇。年齢のバランスが微妙〜。しかも、橋之助はニンではないと思うんだけど。
静御前:芝雀/ 曽我十郎:橋之助/ 曽我五郎:歌昇

二、「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」陣門・組打
宝暦元年(1751)に、人形浄瑠璃として初演された「一谷嫩軍記」の二段目前半だそう。三段目の「熊谷陣屋」は何回も観ているが、これは初めて観る演目。

平家物語で有名な、平敦盛と熊谷直実の物語。
“敦盛は助けられていて、殺されたのは直実の息子である熊谷小次郎直家だったことがわかる”というのが、「熊谷陣屋」のあらすじ。

「陣門」では、平敦盛と小次郎直家がすり替えられ、「組打」では、熊谷直実が息子の小次郎を打つ、という話しだと思っていた。
しかし、よくわからないのだった。
「陣門」はまだよい。小次郎を演じる福助が敵陣に攻め込み、直実が小次郎を抱えて戻ってくる。花道で顔を出した小次郎は、福助ではなくて芝のぶだから、すり替えたんだと思える。その後に、平敦盛が白馬に跨がって颯爽と登場すると、これが福助。あまりにも堂々としているし、配役でも2役ということになっているから、「まだすり替わっていないの????」と、不安になる。
そして、「組打」。どうみたって、直実が戦っているのは敦盛。しかも、誰も見ていないからといって、助けようとしたりする。
確かに、敦盛を助けようとする気持ちが強すぎるのが不自然なので、父親のハラなんだと思うけれど、それを裏付けるセリフや状況説明がほとんどないので、ただ単に情が深〜い武将に見えてしまう。敦盛の恋人玉織姫に敦盛の首を見せるのをためらうところで、一応、すり替えていると知れるけれど、それでは説明が足りないのではないだろうか。
チラシに書いてある、遠見の子役も、3階からは見えなかったのか、それとも使っていないのか、よくわからなかった。
かなり、疑問の残る芝居だった。
熊谷直実:幸四郎/ 玉織姫:芝雀/ 平山武者所:錦吾/ 熊谷小次郎・無官太夫敦盛:福助

三、お染久松「浮塒鷗(うきねのともどり)」
病気療養で1月を休演した芝翫が復活。お元気そうでなによりでした。
しかし、お染と久松は心中を決意した恋人同士には見えないし、女猿曵からも2人に意見するような情を感じられない。サラサラとした清元舞踊だった。
女猿曵:芝翫/ お染:菊之助/ 久松:橋之助

四、極付「幡随長兵衛」
江戸の村山座で「公平法問諍」を上演中に、酔客が乱入。そこへ、町奴の幡随院長兵衛が、颯爽と登場して場を収める。暴れた客は、旗本奴水野十郎左衛門の家臣だった。
吉右衛門が立派な長兵衛で、客席からの登場に場内は大盛り上がり。
そして、対する旗本奴、水野十郎左衛門は菊五郎。暗〜い。
恨みを抱いた水野が、長兵衛を屋敷に呼び出してだまし討ちにする、という話しはいつ観ても後味が悪い。
劇中劇の公平役、團蔵が面白くて、「公平法問諍」の場面がとても楽しかった。
幡随院長兵衛:吉右衛門/ 女房お時:玉三郎/ 近藤登之助:歌六/ 坂田公平:團蔵/ 伊予守頼義:亀寿/ 長兵衛倅長松:宗生/ 唐犬権兵衛:段四郎/ 水野十郎左衛門:菊五郎

歌舞伎座(公演情報

投扇興を遊ぶ

tosenkyo2歌舞伎仲間と時々集まって、投扇興をやっている。

【投扇興】 江戸時代の遊戯の一。台の上に蝶と呼ぶいちょう形の的を立て、1メートルほど離れた所にすわり、開いた扇を投げてこれを落とし、扇と的の落ちた形を源氏54帖になぞらえた図式に照らして採点し、優劣を競う。

遊戯は、単純であるほどおもしろいのではないだろうか。
投扇興も、投げて落とすだけなのでかなり単純。これが、かなりハマる。
蝶が落ちる時ついている鈴が鳴る、風流な雰囲気がまた良し。
扇と落ちた蝶の形で名前と点数を決める、審判はちょっと大変。

_tosenkyo1←本日、わたしが出した大技“蓬生”(よもぎう)は、35点なり。(蝶が立って、その上に扇がのっている状態)
大技が出ると場が盛り上がるので、更に楽しい。
それを出したのが自分なら尚更というもの。

『秘密のかけら』

濃厚な人間関係に溺れて、息苦しいほど。
真実はどこにある?

himitsu1957年のハリウッド。ラニーとヴィンスのデュオは、人気と名声、富と成功を手に入れていた。ある日、彼らが宿泊する予定のスウィートルームで、美女モーリーンの全裸死体が発見された。このスキャンダルは、闇に葬られ、彼らのコンビは解散。
1972年、野心的な女性ジャーナリスト、カレンは、その事件を取材することになる。モーリーンを殺したのは誰なのか?彼らが解散したのはなぜなのか?

50年代の華やかなショウビズ界と、70年代の退廃的でサイケな雰囲気。
ふたつの時代を行き交いながら、カレンと一緒に迷宮に迷い込んでしまいそうな気分。
保育園で演じられる“不思議の国のアリス”(これもちょっとヤバい雰囲気だけど)。慰問した歌手がアリスのコスプレをして、「ホワイト・ラビット」(ジェファーソン・エアプレイン)を歌うのがとっても退廃的で、かなりヤバい。アリスには、サイケなトリップ感覚があるということを実感。

陽気でちょっと下品なアメリカ人ラニーとスマートでちょっと女々しい一方で凶暴さも秘めた英国人ヴィンスのコンビ。ヴィンスを英国人にしたのは、原作からの変更点だそう。コリン・ファースの英国人っぽさをにじませる演技が素晴らしい。
ラニーがヴィンスを拒絶した時の、ヴィンスの微妙な表情も見逃せない。

カレンは危うい。童顔のアリソン・ローマンから漂うロリータな香り。
少女時代も彼女が演じていて、なんともいえないビザール感。
彼女が求めているのは真実なのか、愛なのか。

ラニーとヴィンスの過去と現在、モーリーンとカレンの人生が複雑に交錯するなかで、浮かび上がってくる真実。

ねっとりとした映像もいつもながら素晴しく、ゴージャスな美術を堪能した。

シャンテシネにて(公式サイト

監督/脚本:アトム・エゴヤン
原作:ルパート・ホルムズ
撮影:ポール・サロッシー
出演:ケヴィン・ベーコン、コリン・ファース、アリソン・ローマン、レイチェル・ブランチャード、デヴィッド・ヘイマン、モーリー・チェイキン、ソニヤ・ベネット

Where the Truth Lies  2005  カナダ=イギリス=アメリカ

『ふたりの5つの分かれ路』

5x2

マリオンとジルが離婚調停の場面から映画は始まる。
そして、“ある特別なディナー”、“出産”、“結婚式”、“恋に落ちた瞬間”と、時間を過去へと遡りながら描かれていく愛の行方。

カップルが別れという結末をどうして迎えたのか、考えながら観ることになるので、なんとなく謎解きをさせられているような気分。
2人の間に漂う空気にわずかな違和感を探しながら、その理由を想像する。

しかし、切り取られた場面が決定的な瞬間なのか、というとそうでもない。フランソワ・オゾン監督は、それほど親切ではないのだ。

あらすじを詳しく説明したとしても、別れの理由は明らかにはならないと思われる。恋愛が終わる過程は、それほど微妙なもの。
その2人の微妙な変化を感じさせてくれる俳優たちの演技が素晴らしい。

映画のラストは“恋に落ちた瞬間”、美しい夕暮れの海。恋に落ちた2人は海に入り、肩を並べて泳いていく。別れることが分かっているからなのか、寂しくも美しい。

オリジナルタイトルは“5X2”。日本語タイトルは、なかなか考えられているけれど、「分かれ路」というほどわかりやすくはなかった。

ギンレイホールにて(公式サイト

監督/脚本:フランソワ・オゾン
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ステファン・フレイス、ジェラルディン・ペラス、フランソワーズ・ファビアン、ミシェル・ロンダール、アントワーヌ・シャピー

5X2 2004  フランス

« 2006年1月 | トップページ | 2006年3月 »

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

最近のトラックバック

つぶやき


2015年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ

天気ブログパーツ