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『十二月大歌舞伎』昼の部

今月の歌舞伎座はやはり大盛況らしい。三階席のいつもはカヴァーのかかっている席を開放していた。
今年の歌舞伎は、本日が見納め。

「御所桜堀川夜討 弁慶上使(べんけいじょうし)」
義経の正妻卿の君は、侍従太郎の館に匿われている。そこに、鎌倉方の使者として訪れた武蔵坊弁慶。平家出身である卿の君の首を差し出せという命を受けての上使である。で、侍従太郎は腰元しのぶを身替わりに立てようとする、という歌舞伎にはよくあるお話し。
しのぶの母おわさが、これを断るところがちょっと面白い。その理由が、十八年前に一度契っただけの、名前も顔もわからないしのぶの父親と娘を会わせてやりたいというのだから、なかなかスゴい。おわさを福助が演じていて、とても初役とは思えないこなれかた。ムリのある話しをそれなりに聞かせてしまう。
結局、弁慶にしのぶを殺されてしまうわけだが、十八年前に契った相手が弁慶だということを知った時のおわさの恥じらいと喜びには、ちょっと違和感。その後の嘆きとの対比なんだろうけど。そんな場合じゃないだろうと思ってしまう。
弁慶が、自分の娘を殺してしまった悲しみは伝わってこなかった。真ん中で黙っているにしても何か感じさせてほしい。そうでなければ、最後に泣き崩れられても胸は打たれない。
それに比べて、侍従太郎夫婦の弥十郎と竹三郎からは お主のためとはいえ年若い娘を殺してしまった嘆きとか、おわさへの同情の気持ちが感じられた。
しのぶは、弥十郎の長男・新悟。動きは固いけれど、腰元になったばかりの初々しさと感じられなくもない。

武蔵坊弁慶:橋之助
侍従太郎 :弥十郎
花の井  :竹三郎
腰元しのぶ:新悟
おわさ  :福助

「猩々」「三社祭」
勘太郎と七之助兄弟が踊る舞踊二題。若さあふれる切れの良さが気持ち良い。特に勘太郎の腰のはいりっぷりに眼が釘付け。多分、巧いんだろうな。最近、注目している。

猩々/悪玉:勘太郎
猩々/善玉:七之助
酒売り  :弥十郎

「盲目物語」
妄執の愛。織田信長の妹・お市の方をめぐる愛の話し。
盲目の弥市は、お市を慕っている。浅井長政に嫁いでいた時も、柴田勝家に嫁いだ後も、療治をしたり唄をうたったりして、お市の側に仕えている。
そして、木下藤吉郎もお市を慕っている。気位の高いお市は、足軽あがりの藤吉郎を嫌っている。
弥市と藤吉郎を二役で演じるというのが面白い。

藤吉郎に攻められ、柴田勝家とともに自害するお市。弥市はお市の娘お茶々を助けるが、お茶々がお市と同じ体を持っていることに気づいてしまう哀れでおそろしい執念。
木下藤吉郎は豊臣秀吉と名乗り、お茶々はその側室淀君となった。秀吉の執念は実ったのだ。
乞食となった弥市は、お茶々にお市の気配を感じつつ、一人三味線をひきながら唄う。いつしか琴をひくお市が現れ、一緒に演奏する。
彼の心の中でも夢はかなっているのかもしれない、と思わせる哀愁の幕切れ。

谷崎潤一郎作らしい、ねっとりとした趣きの作品。
勘三郎は、哀れな弥市の想いをコミカルな味付けで案外あっさりと演じている気がする。ホントの妄執になってしまうと濃すぎて辛いかもしれないので、このあたりが良い加減かも。
玉三郎のお市の方は、気位の高さが素晴らしい。藤吉郎が可愛そうに思えるほど。息子を殺されてしまっている恨みもたっぷり。それを命令した兄への恨みも藤吉郎へ向かっているのか、と思ったり。

お茶々の七之助。声が通るのでこういう役は、とてもよくはまる。

原作:谷崎潤一郎
脚本/演出:宇野信夫

弥市/藤吉郎後に秀吉:勘三郎
柴田勝家      :橋之助
浅井長政      :薪車
お茶々後に淀君   :七之助
お市の方      :玉三郎

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