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『ヴェラ・ドレイク』

イメルダ・スタウントンをはじめ俳優たちの演技に圧倒されてしまう。
マイク・リー監督の生々しい演出に、ドキュメンタリィでもみるように引き込まれてしまった。

veradrake予告編をみただけでやられてしまったイメルダ・スタウントンが演じるのは、貧しいけれども幸せな主婦ヴェラ・ドレイク。
あまりにも善良な人間であるヴェラ・ドレイク。夫の弟フランクは「黄金の心の持ち主」と讃え、それを聞いた夫スタンは「いやダイヤモンドだ」と答える。そんな美しい心の持ち主が犯していた罪。

1950年のイギリスが舞台。病気で動けない近所の人を訪ねて世話を焼くヴェラ。慎ましい日々の描写が素晴らしい。お茶の時に出てくるポットには可愛らしいティーコジー、常に絶やさない笑顔と鼻歌。
そんな日常の延長に、「困っている娘さんたちを助ける」ことがある。
この時代のイギリスでは法律で禁じられていた<堕胎>を助けるという罪。

ヴェラが家政婦をやっている家庭の裕福さが示される。生活の格差は明らか。
医師が行う手術費用は高額で、困っている娘たちに払えるわけがないのだ。
だから、罪を犯していることを知りながらもヴェラには迷いがない。

しかし、娘の婚約パーティーという喜びの席に警察が訪れる。
「何で来たのかわかっている」と語るヴェラ。先日ヴェラが“助けた”娘の体調が急変し病院に運ばれたことから、事が発覚したことを知って動揺するヴェラは、その娘は命をとりとめたことを知り安心する。
危険なことはないと信じていたのだろうことが哀しい。

署に連行されるヴェラを見送る何も知らない家族。
妻の行為を知らなかったにも関わらず、理解し愛を貫くスタンが力強く暖かい。

ヴェラは善良であるけれども、それだけでは刑は軽くならない。非合法な堕胎行為は確かに重罪であるし、大きな危険を伴うものだ。
しかし、それなら貧しいものはどうすればよいというのだろう。

娘エセルの婚約者であるレジーという青年。ずんぐりしていて無口で、本当に武骨。エセルとの不器用な恋模様が微笑ましかった。

逮捕され保釈中の気まずいクリスマス。レジーのヴェラに感謝する言葉に感動。
このような頼もしい青年が新しい家族としてドレイク家に迎えられることが心強く、希望の光を感じた。

飯田橋ギンレイホールにて(公式サイト

監督/脚本:マイク・リー
出演:イメルダ・スタウントン、フィル・デイヴィス、ピーター・ワイト、エイドリアン・スカーボロー、ヘザー・クラニー、ダニエル・メイズ、アレックス・ケリー、サリー・ホーキンス、エディ・マーサン、ルース・シーン、ヘレン・コーカー、マーティン・サヴェッジ

Vera Drake  2004  フランス=イギリス=ニュージーランド

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コメント

>レジーのヴェラに感謝する言葉に感動。
このような頼もしい青年が新しい家族としてドレイク家に迎えられることが心強く、希望の光を感じた。

まさにそう!!
彼の存在は輝いていましたね。
最高にステキなシーンでした。

マダム・クニコさん、コメントとトラックバックをありがとうございます。

レジーの言葉には、今でも、胸が熱くなります。
家族ではない彼の言葉だからこそ、素晴らしいんだと思います。

こんにちは♪
TBありがとうございました。
>このような頼もしい青年が新しい家族としてドレイク家に迎えられることが心強く、希望の光を感じた
この一文に感動が再び蘇ってきました!
堕胎問題とか道徳、倫理観についても考えるきっかけをもらったように思います。

ミチさん、こんにちは。
コメントとTBをありがとうございました。
いろいろと重たいテーマを扱いながらも、押し付けがましくないところが素晴らしいと思います。
だからこそ、感動できるし、いろいろと考えさせられてしまいました。

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